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蔦  作者: 火鳥 らひす
2章;美弥子
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9、異世界のお風呂は、魔法でお湯を張るのかしら?

美耶子は、グイッと身体に巻いた毛布を締め直すと、ちらりと空間の先を覗いた。

そこは

お風呂の脱衣所?

そんなに広くはないスペースだが、美耶子の家の脱衣所よりはグっと広い。


白の大理石の、大きな洗面台。 

壁に備え付けられたような長方形のテーブルと、大きな鏡は、ベッドのポールと同じような燻銀に彫刻されたものに見えた。

その先に、竹のような仕切りがあり、その先がお風呂のように美耶子には見えた。

そのどちらのスペースにも、人の気配は感じられないようだった。

それでも、美耶子は、恐る恐ると、その脱衣所に見えるスペースへ足を踏み入り、さらにその先を仕切る、竹のような仕切りを、アコーディオンのように開いた。


「お風呂……。」

美耶子の目の前に現れたのは、すべてが白い大理石でできた豪華な浴室だった。


「……お湯、入ってないけど、私使ってもいいよね?  私には、使う権利あるでしょ?」

美耶子はそう、自分自身に言い聞かすように言うと、大きな大理石の浴槽に近づいた。

まるでどこかのホテルの大浴場のお風呂を、小さく豪華にしたような、そんなお風呂。

しかし、近づいてみて美耶子はハッとした。

このお風呂には、お湯を出す蛇口が無いのだ。

浴槽の淵に、ゴールドに輝く獅子のオブジェが座っていて、その大きく開かれた口からきっとお湯が出るはずなのだ。

けれど、それらしき蛇口もスイッチも、見当たらないのだ。

浴槽から離れたところにシャワーらしきものはあるけれど、シャワーから浴槽にお湯を入れるとは考えられないだろう。


「うそ? 魔法?」

たしか、男は美耶子のことを、異世界人。 異世界の巫女と呼んでいた。

ということは、ここは美耶子にとっても異世界なのかもしれない。

……異世界。

なにそれ?

シンデレラとか白雪姫とか、ファンタジーとか呼ばれる話の中に、魔法使いが良く出てきていた。


やっぱり、この世界にも魔法があって、みんな普通に使えるからお風呂のお湯も魔法で出すのかな?


美耶子はそう思うと、もしかしたら……

そう思って、うんっ!!?!!

念じてみた。


何も変化は無いようだった。


「うそー。 お風呂はいれないよー。」


美耶子はそう項垂れて、へなへなと大理石の床にしゃがみ込んでしまった。



『あっ、あのう……。』

そんな美耶子に声を掛ける者があった。

誰もいないと、油断していただけに、美耶子はビクッと、大きく身体を震えさせ、声のした入り口の方を急いで向くと、浴室の入り口から、淡いブルーのふんわりとした髪をした色白の青年が顔を覗かせていた。


キヤア―――っ!!



青年と目が合うと、美耶子は渾身の力で、発狂したのだった。





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