33、異世界から落ちてきた巫女。
*美弥子の容姿の表現に食い違いがありました。
そのため、プロローグと1章、32話 の美弥子についての内容を
訂正しました。
ユリアを送り出し、ロージアが家の中に戻ると、そこには、不安そうな眼差しをロージアに向ける柚がいた。
一度中に戻ってきたロージアは、結納の品の入った木箱を持つと、またすぐに外へ行き、そうしてまた戻って来た時には手ぶら出し、その顔つきは神妙だ。
ロージアを訪ねて来た、城の使いのような青年の表情も神妙な面持ちだったのだ。
不安にならない方が不思議だった。
ロージアは、柚と目が合うと、やさしい笑みを作り、
「ユズ、伝えないといけないことがあるんだ。 少し長くなるかもしれないから、向うで話そう。」
そう言うと、仕事部屋から自室へと移った。
自室へと移ると、ロージアは、柚をソファーに座らせ、自分は、テーブルを挟んだ向かいに、板張りの床にそのまま座った。
「ロージア、さっきの人……。」
「城の使いだ。王室と、オレたち職人の間の使い。」
「やっぱり……。」
柚の顔は、更に不安が濃くなった。
それを見て、ロージアはにっこり笑った。
「ごめんユズ。 オレたちが険しい顔つきだったから不安にさせちゃったんだろ? けど、ユズが不安がることなんて、ちっともないんだ。」
そう言うと、ロージアはまた、柚を安心させるために、にっこり笑った。
「でも……。」
「あいつはいつもあんな顔してるんだよ。まあ、職業がら? それに、……あいつにとっては、まあ、オレにとってもちょっと大変な話だったけど、ユズにとっては朗報もあったよ。 うん。きっとそうだと思う。」
朗報と聞いて、柚の顔も明るくなった。
けど、
「ありがとう。 でも、先にロージアの大変な話を聞いとく。」
柚の気遣いに、ロージアは、苦笑いをすると、
「まあ、一緒なんだけどね。」
そう言うと、先程のユリアからの話を話し出した。
「……異世界人。」
「そうなんだ。ユリアから聞いた感じだと、服装も、オレが初めてユズに会った時の格好と同じのような気がするから、ユズの友達の可能性が高いんじゃないかと思って。」
ロージアの考えに、柚も頷いた。
きっと、柚たち学校指定の制服の可能性が高かった。
黒くて長い髪。大人びたスレンダー美人。 ……胸の話しはいいとして……。
もし、その落ちてきた異世界人が柚の友達だとしたら、きっとそれは 美耶子 だ。
柚は、そう思った。
「たぶん、美耶子だと思う。 ねえ、ロージア。 私、その巫女に会うことって、できないかなあ?」
それには、ロージアは、残念そうに首を横に振った。
「まず無理だろうな。 それに……、巫女は王子との結婚が決まってる。いずれ、お妃様になるんだ。どう考えても会えるわけがないよ。」
「結婚!?」
「うん……。」
驚く柚に、さすがにロージアも言葉に詰まった。
「それって、その巫女が同意したっていうこと、……なんだよねえ?」
それにもロージアは、答えずらそうに、
「どうかなあ? あの王子、強引なところもあるし……、ごめん。そこまで詳しく聞いたわけじゃないから、分からないんだ。」
「……そう、だよね。」
柚は、気落ちしながらそう答えた。
それでもにっこりロージアに笑顔を向けると、
「教えてくれてありがとう。 ロージアは、結納品の作り直しで忙しいのに、……私に手伝えることなら、何でも言って。」
それには、ロージアもにっこり笑うと、
「ありがとう。 テーマは巫女と伝説の泉にしようと思うんだ。」
早くも、2人は新しい結納品の製作に取り掛かり始めた。
ただ、柚は心の中で、やっぱり落ちてきた巫女が美耶子でなければいい。
とか、やっぱり美耶子であって欲しい。
とか、複雑な心境だった。