【閑話】 真夜中とロージアと。
ロージアとユズの部屋には、並んで2つのベッドがあった。
そのベッドに、それぞれ入ってからもう何時間かたっただろうか?
寝るために電気を落とした、真っ暗な部屋の中で、ロージアの目は、見開かれていた。
いろいろな理由で、眠れないのだ。
ユズは、もう眠ったかな?
そう思い、寝返りを打つと、ロージアは柚のベッドの方に身体を向けた。
寝息が聞こえてこないから、わからなかった。
寝る前のユズはとても不安そうで、それだけならきっと眠れてない。
けど、朝はもの凄く早かったし、王都までの道のり。はっきりいって女の子の足ではそうとう疲れたはずだった。
それに、夜市場の繁盛ぶり。
きっと不安はあっても、疲れと眠気が勝っている。
でも、
「ユズ……。」
消え入るような声で、ロージアは柚を呼んでみたが、返事はなかった。
やはり、疲れて寝てしまったのだ。
ユズが、悩んでいて眠れていなかったら。
ロージアは、話を聞いてあげるつもりだった。
ユズが眠れているのならよかった。
ロージアはそう思ったが、けれど自分は眠れそうになかった。
もう、慣れたと思っていたのに……。
そう思い、ロージアは柚を背にするために、もう一度寝返りを打った。
ユズと、二人っきりの空間に、ロージアの心臓は、ドキドキと、一向にその鼓動を正常に戻してくれない。
こんなことは、ユズと出会った最初の夜以来だった。
あの夜も、自分の家に女の子がいるという現実に、舞い上がり興奮し、ロージアは寝ることができなかったのだ。
あれからロージアは、柚と一緒に暮らすために、ひとつの部屋に、柚と二人っきりで居るということに、慣れたと思っていた。
けれど、自分の家で無いということが、ロージアの気持ちを煽るようだった。
なんともそわそわとして、一向に眠れる気配がないのだ。
そこでロージアは、もう一つの心配ごとに集中した。
ロージアたちの隣の部屋は、ジルの取った一人部屋だった。
しかし、ロージアたちが、就寝してから、もうだいぶ経つと思うが、ロージアたちが部屋に入ってから、隣の部屋にはずっと、人の気配がないのだ。
ジルはまだ、部屋に帰って来ていない。
こんな遅くまで、どこに行っているのか?
どこかで飲んでいるのなら、それはただのロージアの取り越し苦労で、それでよかった。
けれど、ロージアの中を、ジルの言葉が掠めた。
「―――ちょっと金持ちのおばさんたちの相手をしているだけ。―――」
本当のことなのだろうか?
「―――汚いと思った?―――」
思うわけがない。
それが真実なら、ジルのことが心配だとは思う。
こんど、問い詰めなくっちゃな……。
ロージアは、それからしばらく、ふわふわと浅い眠りを漂い、明け方、やっと寝付いた。
意識のぞっと奥の方で、何かの物音を聞いたような気がした。
今更ですが、異世界には漢字表記が存在しません。
なので、ロージアやジルは 柚 を ユズ と呼びます。
なので、ロージアたちの思考の中でも、 柚 が ユズ になります。




