↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蔦  作者: 火鳥 らひす
1章;柚
31/45

30、言い伝えは。

当初の予定、2日で売って行き、余ってもしょうがない。

そう考え、予定していた柚のつけまつ毛は、一夜のうちに全て売れてしまった。


それは、売ってつけまつ毛を世間に広める。ということでは、嬉しい限りだ。

しかし、それと同時に、異世界人の情報を集める。 という本来の目的の方は、さっぱりだった。

夜市場中で得られた異世界人の情報は、あの王家の言い伝えのみ。

もともと柚たちが持っていた情報だ。


ただ、それがただの言い伝えではなく、本当にあった話で、王家には、異世界人の血が流れている。

ということを話してきた、話し好きの商人の女がいたくらい。




―――王家の子を産んだ異世界人の姫。言い伝えの姫は、元の世界に戻れなかった。―――

宿に戻ってから、柚の頭の中はその事実を反復していた。

チクチクと、柚の胸の中の何かが痛む。


「疲れちゃったよな。」

そんな声と共に、宿の部屋のベッドの隅で、膝を抱えて気を滅入らせている柚の頭を、やさしい温もりがぽんぽんと与えられた。

2部屋用意された部屋は、なぜか1部屋を柚とロージア。

もう1部屋をジル。

そのジルは、もう夜中の2時だというのに、まだ用事があるから先に帰っていてくれと、中庭で別れていた。


 「すごかったなあ。オレ、正直あんなに売れると思ってなかったんだ。ごめんなユズ。」

まさか柚が落ち込んでいるなんて、思いもしていないだろう。

けれど、疲れていると思い込んでいる柚が、少しでも元気になればという気遣いが垣間見れ、そのロージアの心遣いが、柚の心をほっこりと温かくしてくれる。


「明日売る分も今日売っちゃったから、明日は売り出しはできないけど、その分ゆっくり異世界人のこと、街の人達にこっそり探りを入れてみよう。」

ロージアがそう言うと、柚はロージアの方を向き、にっこり笑うと、けれど、首を横にふった。

「えっ?」

「ここまで、いろいろなことがあっという間に過ぎて行ってしまって、少し疲れちゃったよ。 私は、そんなに急がなくても、もっとゆっくりでいいんだ。」

柚がそう言うと、ロージアの顔に、陰りが差した。

それを見て、柚もハッとし、

「ごめん。そんなの迷惑だよね。……そうだよね。早く、元の世界に戻らなきゃだよね。」

後半、消え入るように、そう言った。


すると、ロージアもハッとし、

「いや、ゆっくりしよう。オレは、ユズにずっといてもらって大丈夫だから、……正直、ユズがいた方が、毎日楽しいんだ。」

後半を、恥ずかしそうで、その声は消え入りそうだった。


「それじゃあ明日は、ちょっと街の店を楽しんで、ゆっくり帰ろうか。」

ロージアは、まだ顔を赤らめ、恥ずかしそうに、けれどそれを隠すように、そう言った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。