表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 火鳥 らひす
1章;柚
29/45

28、夜市場の隣り店の女。

夜市場がスタートする頃には、柚のつけまつ毛は、予備で持ってきていたものも含めて、ほとんどが売れてしまっていて、テーブルの上はスッカスッカだった。


「ごめん。私がはしゃいじゃったから。」

「いいんです。みなさんのキラキラした笑顔が見れたし。」

申し訳なさそうに謝ってきた隣の出店の女性に、柚は、そんなことないと、首を横に振った。

「でもこれじゃあなあ、お店になんないよね。 あっ、これお詫びね。」

そう言うと、女性は自分の出店の商品をひとつ、柚に手渡した。

女性が出店で売っているのは、シルクの美しい刺繍のローブだった。

女性も腰に巻いていて、何とも華やかなのだ。

「えっ? こんな、いただけません。」

困ってしまった柚に、女性はそのローブを柚の腰に巻きつけると、

「ほら、似合ってるよ。やっぱり女は常に美を追求して、貪欲でなきゃ。あんただって、そう思ったからその商品売ってるんでしょ? 私も同じ。けどさあ、それと商売は別だからね、本当にごめん。これは、私からのお詫びなんだから、素直に受け取る。」


「ありがとう。 こんなにきれいなの、私の国では、すごく高いんです。」

「だから、これは私からのお詫びだって。代金なんてきにしないで。それに、これは、私が作ったんだ。私の国はこの国の隣国なんだけど、そこでレースの工房開いてるの。夜市場のために、こうして月に一回ここへ来てるのよ。私はサニーっていうの。あなたは?」

「私は、柚です。 私の国は、海の向こうで、気が付いたらこの国にいたんです。 今は、さっき一緒にいたロージアにお世話になっていて。」


柚がそう言うと、へえ~。っと、サニーは後ろに下がっているロージアに目を向けた。

「海の向こうかあ。そこではこの商品が流行ってるの? なんかちょっとここら辺の国より、女が美しくなるための道具とかいっぱいありそうだね。ユズもここら辺の子より俄然かわいいし。ユズが私のローブ巻いててくれたら、私の商品も完売できそうだね。」


そう、2人が打ち解けていると、ジルが様子を見に、顔を出してきた。

「おかえり、ジル。」

「えっ!? 彼もユズの連れなの?」

サニーはそう言うと、ジルを座った目で、じーっと見た。

その視線に、ジルはビクッとすると、柚に抱きついて、

「そうだよっ! オレはユズちゃんの大事な大事な……」

「友達ですっ。」

柚はそう突っ込むと、困った顔をしてジルを引き剥がした。


「つれないなあユズちゃんも。冗談だってばあ。」

ジルはそう言って口を尖らせたが、いまだにサニーがじーっと見ているのに気付くと、小さな柚の後ろに身を隠した。

「あっ、ユズちゃん。つけまつ毛、予備も無くなっちゃったの?」

「あっ、うん。 そうなの。」

「じゃあオレ、明日の分取って来るよ。売れる時に一気に売っちゃった方がいいもんね。」

ジルはそう言い残すと、そそくさとその場を後にした。


「サニーさん。ジルがどうかしましたか?」

いまだに厳しい視線を、ジルの去った方向に向けているサニーに、柚が尋ねると、

「だってさあ、あのこさっきユズの彼に抱きついてたからね。」

そのサニーの返答に、柚はびっくりした。

「えっ? 彼?」

「うん。その前にいたイケメンくんは、ユズの彼でしょ?」


「ええっ!? ち、違います。」

柚は心底慌てて、おろおろしながらそう答えた。

「えっ? そうなの? でも好きだったりしないの? それならとりあえず彼だって言っておいた方がいいよ。変な虫が付く前に。」

なんとも信憑性があるが、ロージアのことを考えると、ずいぶんと図々しいアドバイスだと柚は思った。

当のロージアは、後ろから柚を見守っているようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ