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  作者: 火鳥 らひす
1章;柚
28/45

27、ロージアとジル。

「すごいなあ、ユズちゃん。」

ロージアが振り向くと、そこには手続きを終えて帰ってきたジルが立っていた。

「ああ、おかえり。 すごいよ、女性の美への探求心。 あっという間だったんだ。」

「じゃあ、オレも付けてもらわなきゃだ。」

「はあ?」

「冗談だよっ!」

そう言って苦笑いするジルの髪をひと房掴むと、ロージアは、

「おまえ、このそこら辺の女の人より綺麗な髪だけでも反感買ってるのに、それ以上綺麗になってどうするんだよ?」

「別にオレ、奇麗じゃないし……。 髪と、……身体だけだ。」

「……何かあったのか?」

「なあ~んにも・ない。」

そう言うと、ジルはいつもの笑顔を、ニカっとロージアに見せると、長身の身体をふらふらっとぐらつかせ、がばっとロージアに抱きついた。


ふわんと揺れたジルの長い髪が、ロージアの身体に纏わりつく。

「うわっ!? 暑っいだろ。髪切るぞーっ。」

「だめっ! だめ、だめっ! 髪はだめ。」

そうはいいながらも、ジルはロージアを抱きしめたままで、にゃははと笑っていた。


「キラキラしてんなあー、ユズちゃん。」

「本当に。 たったひとりで知らない世界へ落とされて、不安なはずなのにそんなそぶり、微塵だって見せない。それであんなに頑張ってる。だからよけい守ってやりたいと思う。」

そう言って眉間に力を込めるロージアに、ジルは心が温かいような、切ないような気持ちになる。

「守ってあげなよ。彼女が目の前で消えちゃわないように。」

「えっ!?」

さらりと語ったジルの言葉に、ロージアは驚いた。


「ありえないことはないんだよ。一度異世界間を移動してるんだ。 元の世界に戻ることだってあるかもしれないし。 ……だいたい、ユズちゃんは元の世界に戻りたいんだろ?」

「うん……。 何か、情報の方も収穫あったのか?」

それには、ジルは首を横に振った。

「無い。 っというか、無さすぎる。聞くのは王宮の昔話だけだ。」

「そうかあ……。」


項垂れるロージアに、ジルは苦笑すると、

「ロージは、本当はどっちを望んでるんだよ。 ユズちゃんがずっとこの世界にいるのと、もとの世界に戻れるのと。」

その核心を突いたジルの問いに、ロージアは、返す言葉に躊躇した。


それを横目に、ジルは再び苦笑すると、ロージアの頭を軽くぽんぽんと叩き、

「だったらロージは、今を大切にしなよ。ユズちゃんといれる今を。 オレはさあ、もう少し異世界から落ちた人とかいないか、探ってみるから。」

ジルのその言葉に、ロージアは眉根を寄せた。

「……そんな顔するなよ。 ちょっと金持ちのおばさんたちの相手してるだけなんだからさ。」

しかし、ジルの顔は悲しそうで、

「なんでっ! そんなこと」

ロージアが最後まで言う前に、その身体をジルにギュッと抱きしめられた。

「ロージにあるものが、……オレにはないだけだよ。 オレにはこれしかないから。 ロージ、オレのこと汚いって思った?」

それには、ロージアは、ジルの胸にドンッと、頭をぶつけて、その身体を強く抱きしめ返すしかなかった。

「……思うかよ。」


「なら良かった。ロージには嫌われたくない。」

ジルはそう言うと、もの悲しげに笑い、ロージアの肩を強く掴んで、引き離した。

「んっ?」

「はら、今はみんなユズちゃんに集中してるけど、こっち見られたら、変な勘違いされるかもしれないだろ?」

「はあ?」

ケタケタ笑うジルは、もう元のジルだった。



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