27、ロージアとジル。
「すごいなあ、ユズちゃん。」
ロージアが振り向くと、そこには手続きを終えて帰ってきたジルが立っていた。
「ああ、おかえり。 すごいよ、女性の美への探求心。 あっという間だったんだ。」
「じゃあ、オレも付けてもらわなきゃだ。」
「はあ?」
「冗談だよっ!」
そう言って苦笑いするジルの髪をひと房掴むと、ロージアは、
「おまえ、このそこら辺の女の人より綺麗な髪だけでも反感買ってるのに、それ以上綺麗になってどうするんだよ?」
「別にオレ、奇麗じゃないし……。 髪と、……身体だけだ。」
「……何かあったのか?」
「なあ~んにも・ない。」
そう言うと、ジルはいつもの笑顔を、ニカっとロージアに見せると、長身の身体をふらふらっとぐらつかせ、がばっとロージアに抱きついた。
ふわんと揺れたジルの長い髪が、ロージアの身体に纏わりつく。
「うわっ!? 暑っいだろ。髪切るぞーっ。」
「だめっ! だめ、だめっ! 髪はだめ。」
そうはいいながらも、ジルはロージアを抱きしめたままで、にゃははと笑っていた。
「キラキラしてんなあー、ユズちゃん。」
「本当に。 たったひとりで知らない世界へ落とされて、不安なはずなのにそんなそぶり、微塵だって見せない。それであんなに頑張ってる。だからよけい守ってやりたいと思う。」
そう言って眉間に力を込めるロージアに、ジルは心が温かいような、切ないような気持ちになる。
「守ってあげなよ。彼女が目の前で消えちゃわないように。」
「えっ!?」
さらりと語ったジルの言葉に、ロージアは驚いた。
「ありえないことはないんだよ。一度異世界間を移動してるんだ。 元の世界に戻ることだってあるかもしれないし。 ……だいたい、ユズちゃんは元の世界に戻りたいんだろ?」
「うん……。 何か、情報の方も収穫あったのか?」
それには、ジルは首を横に振った。
「無い。 っというか、無さすぎる。聞くのは王宮の昔話だけだ。」
「そうかあ……。」
項垂れるロージアに、ジルは苦笑すると、
「ロージは、本当はどっちを望んでるんだよ。 ユズちゃんがずっとこの世界にいるのと、もとの世界に戻れるのと。」
その核心を突いたジルの問いに、ロージアは、返す言葉に躊躇した。
それを横目に、ジルは再び苦笑すると、ロージアの頭を軽くぽんぽんと叩き、
「だったらロージは、今を大切にしなよ。ユズちゃんといれる今を。 オレはさあ、もう少し異世界から落ちた人とかいないか、探ってみるから。」
ジルのその言葉に、ロージアは眉根を寄せた。
「……そんな顔するなよ。 ちょっと金持ちのおばさんたちの相手してるだけなんだからさ。」
しかし、ジルの顔は悲しそうで、
「なんでっ! そんなこと」
ロージアが最後まで言う前に、その身体をジルにギュッと抱きしめられた。
「ロージにあるものが、……オレにはないだけだよ。 オレにはこれしかないから。 ロージ、オレのこと汚いって思った?」
それには、ロージアは、ジルの胸にドンッと、頭をぶつけて、その身体を強く抱きしめ返すしかなかった。
「……思うかよ。」
「なら良かった。ロージには嫌われたくない。」
ジルはそう言うと、もの悲しげに笑い、ロージアの肩を強く掴んで、引き離した。
「んっ?」
「はら、今はみんなユズちゃんに集中してるけど、こっち見られたら、変な勘違いされるかもしれないだろ?」
「はあ?」
ケタケタ笑うジルは、もう元のジルだった。




