23、王都まで。
ロージアの家を出発したのは、まだ陽が顔を出す前。
辺りは薄暗い中、3人もまた、それぞれに重い空気を纏いながらの出発となってしまった。
こんなときでも、いつもなら場の雰囲気を和らげられるジルだったが、今回は火種を放ったのがジルとあってそうもいかない。
会話の無い3人は、黙々と歩くしかなかったが、その足取りも当然のように重い。
ロージアの足で、王都までは半日掛る。
そろそろ昼近いが、柚がいるせいか、3人はまだまだ森の中だった。
しかも、柚のローハーの足が、悲鳴を上げ始めていた。
元の世界で半日、一日だって歩き回ってショッピングや遊びを楽しむことは多々あった。普段歩いているアスファルトより、土の道の方が足には負担が掛らない。と、柚は何かで聞いたことがあったし、大丈夫だと、高を括っていたのだ。
それが、舗装されていないでこぼこの道は、柚の足首に負担を掛けていた。
「ユズ。 大丈夫?」
先頭をジル。その後を柚。柚の後をロージアが歩いていた。
ロージアは後ろからずっと柚を見ていたのだろう。
歩くペースが遅くなり、時折、道のでこぼこに足元をぐらつかせる柚を心配していた。
「うん。」
柚は、そんなロージアに頷いた。
「もう少しだけ、頑張って。 そうしたら、休息できる場所に着くから。」
そう言ってロージアは、右手を柚に差し出した。
柚は何の躊躇もなく、その手を握ろうとしたが。直前で躊躇った。
「どうしたの?」
ロージアにそう問われて、柚は困惑した。
都合良くこの手を取ってしまっていいのだろうか?
今の自分には、何も返せるものも、気持ちに答えることもできないのに。
「ユズちゃん。 女の子は、少しぐらいわがままで、図々しい方がかわいいよ。 ねっ?」
柚が振り向くと、こちらを向いたジルがいた。
ジルは柚に、ニっと笑うと、
「オレにも、ロージにも、甘えていいんだよ、ユズちゃんは。
……オレが悪かったんだから。
知らない世界にひとりで落とされて、不安じゃないわけないのに。
今朝のこと、……ごめんね。ユズちゃん。」
「お、オレもごめんっ!」
ジルにつられて、ロージアも謝ってきた。
「不安にさせてごめんな、ユズ。 ここまで一緒にいるのに、嫌な気持ちにさせてごめん。」
「2人とも…… そんなに謝らないでよ。私、気にしてないし…… だいたい、私だって悪いのに。」
そう言う柚の目から、涙が零れた。
元の世界でこんなに柚のことを、親身に思ってくれる人なんていなかったから。
本当は、どう反応したらいいのか分からなくて、それでも2人の対応が嬉しくって、胸の中がこそばゆい。
結局、3人が王都へ着いたのは、お昼をとっくに過ぎてはいたが、それでも道中、長くは感じられなかった。




