22、告白は突然やってくる。
「おっ! ユズちゃんかわいいね。 やっぱりそういうかわいらしい服装の方がユズちゃんらしいよ。」
翌日の早朝、顔を見せるなり、ジルは早朝とは思わせないテンションでそう言った。
「ありがとう、ジル。 気にかけてくれたみたいで。」
にっこり笑って、そう答える柚に、ロージアは2人の後ろから、複雑な心境で、2人を見守っていた。
「うん。 だってオレ、ユズちゃん大好きだから。
ねえ、ユズちゃん。オレと結婚しない? 今度はオレ、結構本気だよ。
こないだは、社交辞令。 でも今回は、……あきらめようと思ったんだけど、考えれば考えるほど頭の中はユズちゃんで。
オレ、そうとうユズちゃんが好きみたい。
だから、今回は本気だ。
ユズちゃん。 オレと結婚してください。」
ジルはそう言うと、柚をギュッと抱きしめた。
「えっ?」
それがあまりにも突然で、柚の頭の中は真っ白になり、どういうことなのか、柚には理解できなくて、ジルを拒むことさえできなかった。
「ジルっ!! ユズが困ってる。」
代わりに、ロージアがそう言って、ジルから柚を引き離そうとしたが、それをジルに拒まれた。
「ロージっ、いくらおまえ相手でもオレは今回は引かないよ。
それに、ユズちゃんが拒否してないのに、ロージにオレたちを引き裂く権利はないよね?」
ジルはそう言うと、更にギュッと柚の身体を抱きしめた。
ジルに抱きしめられた柚の身体が、ジルのサラサラの長い髪に飲み込まれていく。それが、ロージアの胸に何かを突き刺した。
が、抱きしめられた柚の身体はふるふると震えていて、柚の表情は、困惑を張り付けたまま固まっていた。
ジルは、とても背が高い。ロージアと比べても、きっと10cmは高い。
スタイルも良くて、おせいじにも、ロージアが比べ物にならないくらいおしゃれだし、その腰まである長い髪は、女性が羨むほど美しい。
肌もとても白いし、顔は……、目が大きくて、ちょっと目元が中性的なところ以外は普通だけど、性格はおもしろいし、よく気が付く。
こうして、ちょっと強引なところも、奥手の柚には足りないことで、はっきり言って悪いところなんてどこにもない。
けど……、突然そんなこと言われても……。ユズはそう思った。
だから、
「ごめんなさい……。」
柚はそう言うと、緩んだジルの腕を解いた。
それを見て、ロージアはホッと胸をなでおろしたのだが、
「ユズちゃん。 ……元いた世界に、好きな人いた?」
ジルにそう言われ、柚はドキッとして、目を見開いてしまった。
―――好きな人。 ……尚くん。―――
柚はそう思い、目をぎゅっと瞑った。
「……いたんだ。 やっぱり。 好きな人、恋人? 結婚は、……してない、よね?」
ジルのその声も、わずかに震えていた。
―――尚くん……。―――
間違いなく好きだった。
けれど、その想いを伝えることができなくて……、結局彼が選んだのは、柚の親友の美耶子。美耶子はジルのように、杼の打ち所のない、しかも美人。
想いを伝えられなくて、伝えられない状態になってしまい。ユズの心には、ずっともやもやとしたわだかまりがあった。
挙句の果てが、この世界だ。
戻れなければ、どうすることもできない。戻ったって……
柚の心の奥の、小さな棘が疼いた。
よくわからないよ。
柚はそう思うと、ジルを見て、ちらりとロージアを見た。
ロージアの顔が歪んでいて、そのことが、チクリと柚の胸を刺した。
尚くんと同じ顔のロージア。
異世界人のロージア。
それはジルも一緒で、柚の中で、2人が異世界人だということが、それ以上関わりたくない大きな壁だった。
柚にやさしい2人は、今まで出会った誰よりも温かい。
戻るかもしれない、戻れないかもしれない。
そのどちらもが悲しいなら、きっと柚は元の世界に戻りたいのだ。
「恋人じゃないの。 ……ずっと片想い。」
柚はそう言った。




