↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブドウ畑から始まる異世界スローライフ ~社畜で過労死、スキルは無いけど、しあわせに暮らしてます~  作者: lacol
第三部 秋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
79/84

第79話 旅支度

 マルコさんがようやく僕に気づいて、口説くのをやめて、戻ってくる。


「お待たせしました。帰りましょうか」


 いつもの笑顔に、何も言えない。


「師匠を散々待たせておいて、それだけですか?」


 エミルさんが怒ってくれる。でも、それより、二人に伝えなければならないことがあった。


「悪いのですが、二人、先に帰ってもらえます?」


「どうしたんです、忘れ物ですか?」


「どうやら、首都に行かなければならなくなって」


 二人に手紙を見せる。


 エミルさんが差出人の名前を見て、


「ヴィルフリート様からですか……」


 マルコさんが本文に目を通して、


「畑とワインを二人に任せてって……ヴィルフリート様が言っているのなら仕方ないか」


「今から、僕はブルーノさんところに行くので」


「わかりました。お気をつけて」


 二人に、そう言われて、僕は一人ブルーノさんの鍛冶場へ向かった。


   ◇


 鍛冶場の扉を開けて、


「こんにちは。ブルーノさん、いらっしゃいます?」


 声をかけるも、思わず立ち尽くした。


 ミゼットが部品ごとに解体されていた。


「おう、ハルさん、どうしたんだい?」


「これ、ミゼットですよね?」


「そうだよ」


「どうしたんですか?」


「フロリアンのやつと話してさ。ミゼットにいろいろ手を加えることになったんだ。それで一回解体しようということになって。このとおりさ」


「このとおりじゃないですよ! 急いで首都に行かなくてはならないんですよ」


「と、言われても、おれとフロリアンで新しい部品を作ってる最中だからな」


「いつ頃、できるのですか?」


「さあな、おれも試行錯誤だから、いつ頃になるか」


 ――ミゼットで首都へは行けない。


   ◇


 僕は慌てて街へ引き返し、職人ギルドをもう一度訪ねる。


 ちょうど、窓口にバーナードさんがいて、事情を話す。


「わかりました。一台、用意しましょう。明日の朝にでも、お屋敷に馬車を回しますね」


「ありがとうございます」


 ギルドを出ようとすると、鉱山のドルグさんとロルフさんに出くわす。


「やあ、ハルさん。そんなに急いでどうしたんだ?」


「これから、首都に行かなければならないんです」


「それは大変だな」


 そこで、急に思い出す。ワインの貯蔵庫の借り賃。


「ちょっと、いいです?」


 僕は、ドルグさんを連れて、バーナードさんのところに戻ってくる。


「ハルさん、どうしました? まだ何か?」


「あの、僕が預けているお金って、どれぐらい、あります?」


「たんまり、ありますよ。とくに石鹸の売れ行きがいいので」


「そうですか。申し訳ないですが、そこから、ドルグさんのいう金額を払ってもらえますか?」


「いいですけど……」


 そこへ、ドルグさんが、バーナードさんに声をかける。


「よう、久しぶり!」


「珍しいですね。ドルグさんが街に来るなんて」


「ちょっと、野暮用でね。それより、ハルさん、例の金、そんなに急いで払わなくてもいいんだぜ」


「いえ、こういうことは、ちゃんとしていた方が……」


「例の金って、なんです?」


 バーナードさんが、割って入る。


「いや、なんでもねえ」


「金銭が絡むなら、契約書を交わしていたほうが……」


「それが、明記できないことがありまして」


「そうですか……」


 納得いかない顔のギルド長だったが、僕が預けているお金から、ドルグさんに払うことを約束してくれた。


   ◇


 家に帰ろうと街を歩いていると、酒屋の前を通る。


 ――ガラス瓶だ。


 三たび、職人ギルドに向かう。


「今度はなんですか?」


 少し、あきれ顔のバーナードさん。


「お酒をいれるガラス瓶を探しています」


「それなら、裏の倉庫に山のようにありますよ。どれぐらい必要ですか?」


「五十本ほど……」


「わかりました。屋敷に送っておきます」


 これからのことも考えて、多めに頼んだ。


 なんでも、職人ギルドでは、使ったガラス瓶をギルドが預かり、洗浄しては、必要な分だけ、貸し出すようにしているのだそうだ。


 そうして、職人や商人が、使える瓶を無駄にしたり、必要以上に買いこまないようにしているらしい。


「そうだ。一本だけ、今、持って帰ります」


   ◇


 街を出る頃には、日が暮れかかっていた。


 肉屋の女主人に呼び止められて、すっかり忘れていたカツを受け取る。


 それを食べながら、家に向かう。


 そういえば、街に来てから、いままで何も食べていなかった。


 ――腹が減るはずだ。


 気づけば、マルコさんとエミルさんの分もたいらげてしまった。


 腹が落ち着くと、


 ――知らせておくべきだな。


 僕は、リーゼさんの家に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。