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ブドウ畑から始まる異世界スローライフ ~社畜で過労死、スキルは無いけど、しあわせに暮らしてます~  作者: lacol
第三部 秋

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第78話 呼び出し状

 その日は、マルコさんとエミルさんと三人、街に出かけた。


 二人は、食材を買うのだが、料理を競っているので、別々の行動になる。


 僕はといえば、料理をすることがなくなったので、職人ギルドに向かった。


 フロリアンさんが、ミゼットの開発に参加することを伝えにいくのと、他にも伝えたいことがあった。


 いつものように、ギルド長の部屋に案内される。


 部屋には、デスクに向かっているバーナードさんと、商人ギルド長のセシリアさんがいた。二人はむつかしい顔をしている。


 バーナードさんが、僕を見るなり、


「ハルさん、いいところにきてくれました。まあ、座ってください」


 僕が座ると、目の前にバーナードさんとセシリアさんが座った。


 バーナードさんが、一枚の書類を、僕の目の前に置き、


「カーマイン商会から、魔法石で走る荷馬車の注文がきまして」


「あ!」


 港街で、キースさんにミゼットをねだられたのを思い出す。


「知っていましたね?」


「ええ、まあ。アイラさんとリーゼさんを港街に連れていったときに、ミゼットを見られて……」


 バーナードさんが、ソファーにもたれて、ため息をつく。


「ミゼットって、なんでしょうか?」


 セシリアさんが、すこし声を荒げて、僕に詰め寄った。


 僕はどこまで言ったらいいかわからず、助けを求めてバーナードさんを見る。


「ブルーノのところでつくっている、キースさんがお望みの荷馬車のことだよ」


「初耳です」


「ああ、戦時中なので秘密にしていたんだ。そうか、キースさんに見られたのか……」


「どうします? 正式な見積もりの依頼書ですよ。そのミゼットとかをキースさんに納めることができますか?」


「相手は、この国有数の大商人だ。『金額はこれです。入金いただければ、商品を送ります』じゃあ、ダメだろうね」


「ええ。ちゃんと、キースさんのご要望をうかがって、見積もりを出さないといけません」


「誰が、その要望をききにいくか……」


 二人が、じっと、僕の顔を見る。


 ――その、御用聞きを僕にやらせるつもりだな。


「わかりました。僕が行きます」


「そうか、そうしてくれますか。それは助かります」


「よかった。ハルさん、ありがとうございます」


 うれしそうな二人を見ていて、


 ――そういえば……


「商人のテオさんもほしがっていましたよ」


「テオさんは後回しで結構です」


 セシリアさんが、冷たく言った。


 ――テオさん、ごめん。


 そのあと、ミゼットの開発にフロリアンさんが加わることと、マルコさんとエミルさんが、僕の手伝いをすることを伝えて、バーナードさんの了承を得た。


「よかったよ。ハルさんを手伝える人を探さないといけないと思っていましたから」


 ヴィルフリート様からの紹介なら安心だ、とバーナードさんは付け加えた。僕のことを心配してくれていたのだ。


 戦が終わったあとのこともきいたが、二人とも、どうなるかわからないということだった。国から情報がまったく入ってこないらしい。商人ギルドでさえ何も掴めないようだ。


 職人ギルドを出て、マルコさんとエミルさんを探しに向かった。


 途中、いつもの肉屋の前を通る。


 女主人は、コロッケを揚げていた。


 ――買って帰るか。


 と肉屋に立ち寄った。


「やあ、ハルさん。久しぶりだね。元気だったかい?」


「ええ。おかみさんも、元気でした?」


「もちろん、元気さ」


 元気そうにふるまう女主人だったが、合間合間に、ふとさびしげになる。


 ――まだ、息子さんの安否はわからないんだ。


「コロッケとハムカツを三つずつ、お願い」


「あいよ、毎度あり」


 女主人が、揚げたてのカツを包もうとしたとき、


「息子さん、生きていたよ」


 振り返ると、冒険者ギルド長の奥さんだった。


「よかったですね」


 と、女主人に言いかけると、女主人の目が赤くなり、涙がたまっていく。


「そうかい。悪運の強いやつだ」


 元気な声だったが、少し震えていた。


「さっき、別のギルドから連絡があったんだよ。遅くなって、悪かったね」


「いいんだよ。あんなやつのことなんか。人様ばかりに心配かけて……」


 口は悪いが、その口に笑みがこぼれている。


「ごめんよ。目に油が飛んだみたいだ」


 女主人は、そそくさと店の奥に消えた。


 僕は心から、よかったと思った。


 注文したカツのことなんか気にならなかったのだ。


 そういえば、二人を探している途中だった。


 エミルさんは、広場の椅子に座っていた。横には大きな食材の袋がおいてあった。


 マルコさんは、と、あたりを探すと、店の若い女性の店員を口説いていた。


「ハルさんですよね」


 後ろから、声をかけられる。


 振り返ると、いつも手紙を配達しているおじさんだった。


「ちょうど、あんたのところにいくところだったんだ。はい」


 一通の手紙を渡される。


「ありがとうございます」


 おじさんが去ったあと、手紙を見ると、


 ――ヴィリーさんからだ。


 封を切る。


『急いで首都まで来てほしい。


 来るにあたって、ひとつ頼みがある。あのフェリルも連れてきてくれ。


 畑やワインのことは、私がよこした二人に任せればいい。


        ヴィルフリート』

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