↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブドウ畑から始まる異世界スローライフ ~社畜で過労死、スキルは無いけど、しあわせに暮らしてます~  作者: lacol
第三部 秋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
70/85

第70話 帰途

 カーマイン商会の倉庫に着くと、キースさんは、アイラさんとリーゼさんを使用人に屋敷へ案内させ、待ちきれない様子で、ミゼットの幌をはずさせると、あちこちを見て回った。


「これが、あたらしい荷馬車ですか。いや、馬で牽かないんでは、荷馬車じゃないですね」


「ええ、ミゼットといいます」


「ミゼットですか……かわいい名前ですね」


「馬もいないのに、どうして動くのですか?」


「魔法石を使って……あ! それ以上は秘密です」


「そうですか……荷馬車を動かすような魔法石はないはず……東の国には魔法石で水を沸かして走る車はあるけど、それとは違うみたいだ」


 僕は、この世界に蒸気機関があることに驚いた。


 ミゼットに興味津々なキースさんに訊きたいことがあった。


「ヴィルフリート様はどうなったのですか?」


「ヴィルフリート様ですか。ご無事なはずですよ」


 ――よかった。


 キースさんの言葉に胸をなでおろす。


「国はどうなったんです?」


 僕がたずねると、キースさんの動きが止まり、僕に振り向いた。


 少しためらったあと、


「国王は亡くなられて、第一王子があたらしい国王になられました」


 ――あの国王が亡くなられた……


 国王とは面識がある。僕にスキルがないことを知って、追い出した。でも、そのおかげで、村でしあわせな生活を過ごせた。複雑な気持ちだった。


「もしかすると、ハルさんには、いろいろと手伝ってもらわないといけなくなるかもしれません」


 キースさんは、含みを持たせた笑みを浮かべた。


 その夜は、キースさんの屋敷に泊めてもらった。


 疲れていたのか、目を覚ましたときには、すでに昼頃で、昼食の用意ができていた。


 席に座ると、リーゼさんが、ためらいながら、


「あの……大叔父様は?」


「ヴィルフリート様は、ご無事だそうです」


 と、僕がかわりに答えた。


 キースさんもうなずいた。


「よかった」


 リーゼさんが安心した顔を見せる。


「これから、どうします?」


 キースさんがたずねた。


「村に帰ります」


 アイラさんが答えると、


「では、荷馬車を用意しましょう」


「早く帰りたいから、ミゼットで帰りたいわ」


 リーゼさんが口にする。


「ほお」


 キースさんが再び、ミゼットに興味を示しだした。


「そんなに速いのですか?」


「ええ、村から、ここまで、二晩でついたの。それも、途中の町を避けて走ったのによ」


「それは速い。じゃあ、今すぐ発てば、明日には着きますね。馬車なら一週間はかかります」


 リーゼさんに気に入ってもらえたのは、うれしいし、地下室に眠るワインも気になるのだが、


「でも、昼間は他の通行人もいて危ないので、走るのは夜になってしまいますが……」


「大丈夫よ。ねえ、お母さん?」


「ええ、私も夫が気になるので、早く帰りたいです」


「では、夜までゆっくりしていってください」


 僕は今晩、ミゼットを運転しなければいけないので、ゆっくり休むように言われ、屋敷の客間に戻る。


 アイラさんとリーゼさんは港街を散策して、日が暮れるまで時間を過ごすらしい。


 日が沈み、キースさんの使用人が、僕らと幌を被ったミゼットを街から離れた丘の上まで運んでくれた。


 キースさんまでもが、送りに来てくれた。


「どうしたら、このミゼットを手にいれることができます?」


 別れ際、最後まで、ミゼットにご執心なキースさんが訊いてきた。


「ミゼットは、まだ秘密なんです。戦が終わるまでは……」


「戦は終わりましたよ」


「それに、これは、まだ、試作品ですので……」


「どうしても、ほしいですね」


 あきらめきれないキースさんに、


「僕にはどうしたらいいか、わかりません。職人ギルドのバーナードさんとブルーノさんに任せているので、そちらに聞いていただければ……」


 僕に言われても困る。こういうことは、二人に丸投げにすることにした。


「それでは、大変お世話になりました。この御恩は忘れません」


 僕が、別れの挨拶を伝えると、アイラさんとリーゼさんもそれに続いた。


 アイラさんとリーゼさんをミゼットに乗せて、村へと続く道を走らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。