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第一章 運命の男 Ⅳ

                    〈第一章 運命の男 Ⅳ 〉

 スコットには状況が全く理解できていなかった。

 「一年間‥‥‥何が一年間なんですか?」スコットは冷静に言った。

 「もうすぐ社内で、新車審議会がある。まぁ、いわゆる車の

新モデルの披露会だ。それにお前も出席しろ!」

 ハドソン社長はスコットの何かを気に入ったらしい。

スコットは口を少しポカンと開いたまま聞いていた。自分には信じられない

話だったからだ。

ハドソン社といえば全英を圧倒する車会社に過ぎない。

 「‥‥‥ありがとうございます。ですが、私には学歴も何も‥‥‥」

 「入るのか入らないのか、 どっちなんだぁ!」

 ハドソン社長がスコットの辛気臭い話に割り込んできた。

 ——スコットは覚悟を決めた—これは今後二度とないチャンスだと‥‥‥。


 面接を終えて、成人式以来にスーツを着るのは感慨深かった。

サービススタッフを辞めるとなった時、上司は悔しそうな顔をしていたらしい。

 その後、バイト仲間の学生によると、上司は行方をくらましたらしい。

どうでもいいことだ。


 無事ハドソン社に入社し、皆スコットを歓迎した。

そして職場は温かい空気そのものに変わった。

 三ヶ月が過ぎ、社会での生活にも慣れ、低学歴ながらも、上司や同僚には

恵まれた。

スコットはこれまで以上に仕事にやりがいを感じ、また職場の温かさを深く

痛感していた。

 しかし、一週間後、こんな信じられない事件が起こるとは誰も

予想していなかった‥‥‥。

 ——突如——ハドソン社長が失踪したのである———

 事件は三日足らずで全英に広まり、警察三百人体制で捜査が進められた。

 だが、捜査は予想以上に難航し、事件から約五ヶ月が経った。

仕事が終わって家に着き、スコットは『ハドソン・リバー失踪事件』に関するテレビ

トークを見ながらある事に気づいた。——これは失踪なんかではない——と。

ハドソン社長はいつも会社近くの最寄りのガンツ・ヒル駅の電車で

通勤をしているらしい。

奥さんによると、家にも帰っていないらしい。——何かがおかしい——

 次の日の休日、スコットは期間限定のチョコタルトを買いに、

ガンツ・ヒル駅近くのカフェに寄った。

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