第一章 運命の男 I
〈第一章 運命の男 I 〉
温かいと思ったのはいつぶりだろう。
一九九四年、ハドソン社長はスコットを温かく迎え入れた。
ハドソン・リバーは車メーカー『ハドソン社』の社長である。
ハドソン社長との出会いは今でも忘れられない。
六ヶ月前、スコットは、ハドソン社近くのホテルの宴会サービスで働いていた。
スコットはケーキの盛り付けやセッティングなどが器用にも得意だった。
どうやらその日は、ハドソン社長の親戚の結婚披露宴だったらしく、
勿論ハドソンも出席している。
披露宴後の食事会は、賑やか極まりなく、出席者はテレビで見た事のある
顔ばかりだ。
傲慢そうな贅肉付きもいれば、ひょろっとして、賢そうな顔をした人もいる。
だが、今回の食事会はとにかく子供連れが多く、親に甘やかされて育ったアホ面の
子供もいれば、きちんと英才教育を受けた品のある子供もいる。
「お待たせ致しました。アンティカ・オステリア・デル・ポンテでございます」
スコットがハドソン社長の席へお出しした。
ケーキの断面には卵黄をたっぷり使った鮮やかな黄色で、マカロンやストロベリー、
ブルーベリーなどのフルーツが盛り付けられている。
「へぇ〜凄いケーキだな、これ!」
ハドソン社長は感心した。
「実はこれ僕が盛り付けたんです」
ひっそり嬉しそうにスコットが答えた。
「これ君が作ったのか! パティシエなのか?」
ハドソン社長は興味津々に聞いた。
「いえ、長年ここで働いているものですから‥‥‥ケーキ作りにも
携わっているんです。」
スコットが答えた。




