八十四話 流れに逆らおうとするほど沼にハマるし
「どうしてこうなった……」
カイナに誘われるままシャワーを浴びている太陽。すでに見慣れた自分の体とはいえ、そういうことになるとは微塵も思っていなかったので動揺のあまり体の至る所が紅潮している。それは太陽の目から見ても、なんだか艶めかしく見えた。
「うう、なんとか、なんとかしないと」
せめて自分は興奮しないように冷たい水を浴びているが、それでも赤みがかってしまった体は戻らない。
「せめて、そうだ。せめてこう、うまい具合にアレすればいいんだ!……アレってなんだー!」
どう考えても、どうシミュレートして見ても、自分が処女を失う可能性の方が断然高い。何か手はないかと模索し、そうして出した結論は
「……ワンチャン、ノレンさんをトレースすれば行けるんじゃないか?」
無謀ともいえるものであった。ノレン本人であればこの状況は回避できたかもしれない。確かにそれはそうだろう。彼女の口八丁に勝るものはないし、先走った童貞をいなすことなどそれこそ訳ない事だ。
しかしトレースをするのが太陽となると話は別である。考えるより行動、自分の感情に任せた言動。どれもノレンとは正反対と言っても過言ではない。
「よし!そうと決まれば後はやるだけだ!」
そうして大した対策もなく、どう動こうとかそういう考えも持たず、太陽は現状を打破すべく動き出した。
「お、お待たせしました」
「ま、待ってないから。全然。ワタシも今きたとこだし」
バスローブ一枚を羽織り、明らかに緊張している太陽がカイナの前に現れた。余りにも女性に慣れていないのか、はたまたノレンとは違い房中術をどこかへ置いてきてしまったのか、カイナの素っ頓狂且つ頓珍漢な言動が太陽に向けられる。
正直に言ってしまえば、童貞はここから先のリードの仕方など知らない。同人誌や動画など現実では何の役にも立たないのである。はっきりと明言しよう。この場で太陽が何もアクションを起こさなければ、何も進むことなく時間だけが過ぎ去るはずであった。
「その、なんか、テレビとか見ます?」
しかし太陽も同じ穴の狢であるので、意識を逸らすことに夢中になり過ぎていた。大局を見ることが出来ていない上に相手の心情を慮れないのである。
太陽がテレビをつけ、ソファーに座る。緊張した面持ちで、カイナもソファーに座った。肩と肩が触れ合う距離である。布一枚越しに太陽の体温がカイナへと伝わった。期待というか興奮というか、そういうものがカイナの血流をどんどんと加速させていく。そんなことは分からない太陽がテレビのリモコンをいじくりまわしているうちに、うっかりといつもなら設定されていない数字を押してしまう。
「おひゅっ」
そこに映し出されたのは生々しいそういった映像であった。そう、ラブなホテルにはそういった映像が24時間垂れ流されているチャンネルがあるのだ。
カイナは、思った。コレ、もう少し近づけば脱童貞の道が進展するのではないかと。例えば肩を抱くとか。
そうしてカイナの腕は太陽の肩越しに伸び、ゆっくりと腕を回した。そうすると、丁度いい位置に太陽の胸があり、結果として、鷲摑みする形となった。




