八十三話 苦難なんていくつでもあるもんだし
カイナは凄く戸惑っていた。自分のデートプランに相手から誘ってくるなんてものは存在しなかったからである。しかし据え膳食わぬは男の恥。一刻も早くこのチャンスをものにしなければと迅速に行動を開始した。
「わわわかった!じゃじゃあ、行こう!」
「申し訳ないです……」
未だ球形の意味が分かっていない太陽と共に、ラブなホテルの中へと突入するカイナ。お手洗いさえ借りれれば問題ないと思っていた太陽は、何故部屋を選んでいるのか、何故時間が決まっているのかすら分からないまま部屋に通された。
「あの、とりあえずお手洗い行ってきていいですか?」
「勿論!そういうプレイとかワタシ興味ないからね!」
いまいちかみ合っていない話を挟みつつ、太陽はお手洗いに直行した。少し長いトイレ休憩をはさんで、ようやく太陽はまともな思考を取り戻すことに成功したのである。
「……ここ、どこ?」
すっきりした太陽の脳みそは、ここに来て部屋の全体像を思い描くことが出来た。やたらデカいベッド、変な雰囲気の内装、トイレの横にあったデカい風呂。
太陽の頭の中に、嫌な記憶がリフレインする。
『あとぉ、これはないと思うんですけどぉ、男女の中でそういう雰囲気になってもしちゃあいけませんからねぇ?もしうっかり中に出された日にはぁ、元に戻ることは絶望的と考えてくださいぃ』
そんなことある訳ないと、たかをくくっていた。自分は異性愛者だし、心は男性だし、男に興味なんてこれっぽっちもない。でも現状はどうだ。あからさまにそういうところに来ているではないか。
「……マズいなぁ」
マズいどころではすまされない状況だが、太陽からすればまだ希望はあった。普通こういう時、なんかシャワーとか浴びるから、その隙に逃げてしまえばいいのだ。太陽とて童貞ではあるが、最低限そういう知識は持っていた。その手を使えば何とか行けるんじゃあないかと考えたのである。
「あ、お、おまたせしましたっ!?」
しかし現実は残酷である。カイナは既に烏の行水とも言うべき速度でシャワーを浴びたらしく(恐らくお湯になる前に全部を洗い終えたようである)、水を滴らせてバスローブに身を包んでいた。
「さ、さあ、シャワー浴びてきなよ」
ぎこちないながらもリードしたい気持ちが抑えきれず、カイナは自らのものを奮い立たせながら太陽を風呂場へといざなう。
あからさまに詰みの状態へと、太陽は追い詰められていたのであった。




