七十八話 送った本人にしか解呪方法は分からないし
太陽は走った。空は飛べなくなってしまったし、転生者としての身体能力もなくなってしまったのでとにかく全速力で走った。
そうして五分ほどかけて、太陽は桐生院の元へたどり着くことが出来たのだ。
「はぁ、はぁ、見つけた、桐生院さん!」
「ほぁ?何でしょう可愛らしいお嬢さん」
桐生院のこの言葉に違和感を覚えた太陽は、質問を投げかけてみることにした。
「あなた、僕のことを覚えていないんですか?」
「ええまったくぅ。それより入信希望者でしょうかぁ!?それであれば」
桐生院の答えが来て、太陽の違和感は確信に変わった。そのまま次の言葉が来るよりも前に桐生院の襟首へ掴みかかる。
「あなた!世界が作り替わる前の記憶がありますね!?」
「ほ、ほぁっ!?なな何のことだか分からないですぅ!!」
急に図星を突かれた桐生院は言い逃れの為に知らぬふりをする。しかし確信を持った太陽は止まらない。
「この世界を正常に戻す術を知っていますよね!早急に戻してください!」
「いやぁ、そうは言われましても元の世界には時間経過で戻るものですからぁ」
その時間経過が無くなってしまったんだと太陽が懇切丁寧に話すよりも早く、正一郎(暫定)が太陽を引き離しにかかった。
「おいどうしたんだ急に!あ、桐生院さん?何が、あの、なんかやったんですか?」
普通の女性程度の力しか発揮できない太陽をいとも簡単に引きはがすあたり、正一郎(暫定)もいっぱしの警察官なのであるが、それよりも正一郎(暫定)は桐生院を相も変わらず認識できているようである。であるならばなぜ桐生院はこの世界でもしっかりと生きていけるのかと太陽が注目もといにらみをきかせていると
「あ、あぁー。お久しぶりですぅ。お元気でしたかぁ?」
何のことはない、ただただ明言を避けつつ生きているだけであった。身寄りなく動いている桐生院だからこそできる技だなぁと太陽が有る意味感心しつつも、正一郎(暫定)に抑えられながら叫んだ。
「今日!勾当台公園で21時に待ってますから!来てくださいね!!」




