七十六話 ショックがデカすぎるし
太陽が女性になってから半月が経過した。その間奇跡的に月のモノなどはなかったが、しかし太陽の心はどんよりしたままであった。
スキンケアや髪の毛の手入れを怠れば「なんか今日調子悪い?」と周りに不審がられるので半ば強制的にする羽目になったし(そういった手合いのものは太陽の自室に標準装備のごとく置かれていた)、
化粧も最低限しないと面倒ごとに巻き込まれやすいし(そういった手合いのものは以下略)、
転生者としての代謝すら消えてしまったのか暴飲暴食をすると浮腫む上にニキビまで出来てまた「体を大切にしないと」とか周りから言われるし、
そういった細かな女性らしさの社会の強要により、太陽の自由時間はゴリゴリと削れていったのである。
太陽としても、現状を打破すべく色々試してはみた。呪いの解呪を由美(暫定)に頼んでみたり、Reincarnated Person Companyにどうにかできないか頼んでみたりをしてみたのだ。しかしどちらも返事は「複雑な呪いを素人が練り上げたせいでごちゃごちゃな術式で成り立っているため、下手に動かすと危険」というネガティブなものであった。
つまり、太陽は実質詰んでいたのである。どうしようもないほどに詰んでいたのだ。誰か助けてと思っても、自分にかかっているもう一つの魔法、つまり世界反転というトンでもないものの存在は人に放すことを太陽は躊躇った。現状を洗いざらい話してしまえば面倒なことになるのは明白であるからだ。
「ずっとこのままなのかな……」
太陽は転生者対策課の中で思わずつぶやいた。太陽の元気がないことは、現状転生者対策課の中でも早急に対策すべき案件として挙がっている。ムードメーカーがこの調子だと、その他の面々のメンタルにも影響を与えてくるというものである。
「おい、陽菜のやつ相当参っているみたいだけど、ワタシたちに何かできることないのか?」
「そうは言うけどよぉカイナさん。あの呪い相当ごちゃごちゃしてて、解呪に専念しても数年はかかるぜ?……皆川さんはどうすればいいと思う?俺はそれに準じようと思うんだけど」
「そうだなぁ……私個人としては何とかしてもらいたいところだけど、上司としては宝来くんに一人にかかりきりになってもらいたくないというのが本音かなぁ」
転生者対策課の面々が喧々諤々の議論を繰り広げている中、幽鬼のように元気をなくした太陽がゆらりと席から立ち上がり
「そろそろお昼行ってきますね……」
とふらふら外へ出て行った。流石にそのままはいそうですかと一人で行かせるのはまずいと感じた正一郎(暫定)は、一緒にご飯でもどう?と太陽を誘ったのであった。




