七十五話 それにしても強すぎだし
転生者組は、それはもう迅速にドラゴンを片付けることに成功していた。元よりドラゴン程度、転生者の膂力には勝てる道理などないのだ。
そしてノレンもといカイナもまた、戦いを有利に進めていた。まるで映画の主人公のように攻撃の全てを紙一重で避け、致命的な一撃をドラゴンに与えていた。こうなると転生者組さえカイナの動きに見入ることになる。いったいどんな手ほどきを受ければ一般人のみでこんなに華麗に戦うことが出来るのか、そもそも誰かに師事したことがあるかなど疑問は尽きない。
「ははっ、jackpot!」
まるで某デビルハンターのような決め台詞の元、カイナはドラゴンの脳天に銃弾をぶち込み勝利を収めた。悠々と伸びをするカイナの元へ、太陽と由美(暫定)が駆け寄る。
「か、カイナさん凄いです!一体どこでそんな動きを学んだんですか??」
太陽の健気な質問に、鼻高々といった様子でカイナは答える。
「これはなぁ、ワタシがまだ子供のころある仙人にガン・カタを教えて貰ったことから始まるんだけどな……」
ここから始まる話の九割五分が嘘なので当文章では割愛させていただくが、しかしそれでも太陽や由美(暫定)の意識を向けさせるのには十分であった。
そのせいで他のことに注意がおろそかになってしまったことが、太陽にとって一番の悲劇となることは誰も分かっていなかった。
「でな?その時ワタシは……おい陽菜、なんか変な黒い湯気に覆われてるのはなんだ?」
「は?……ええっ!?なにこれ!?」
カイナの与太話に耳を傾けていた太陽は、カイナに指摘されて初めて自身の体に異変が起こっていることに気が付いた。何が原因かと辺りを見回すと、術士と思しき女性がこちらに向けて手をかざしていることに気が付いた。
「は、ははっ!やった!初めてだけど呪いを掛けれたっ!?」
話が終わるよりも先に、カイナの拳銃が脇腹を貫き、続いて由美(暫定)が身柄を拘束する。
「お前、陽菜ちゃんになにをした」
由美(暫定)の冷ややかな声が女性に掛けられる。女性は急な男性の接近に小さく悲鳴を上げながらも、その質問に答えた。
「こ、この呪いは今を固定するもの!今動作しているまじないはそのままだけど、コレからそいつは無力な女性として生きていくのだ!」
そんな、と由美(暫定)が太陽を見る。当の太陽は身体強化を行おうとしたが、確かに使えない。それどころか空を飛ぶことすら出来なかった。そして一番太陽を絶望させたのが
「いま、かかっている、まじないは、そのまま……?」
これである。そう、今太陽は世界を変えるまじないが掛かっている。これがそのままということは、つまりこれから一生無力な女性として生きていかなければいけないということであり、キャパシティを完全に超えてしまった太陽はそのまま倒れこんでしまった。




