六十七話 追ってたものが元凶なんてよくあることだし
未だ納得のいかない転生者二人+たった今一撃で勝負を決めてきた由美の転生者三人が現状を飲み込めていないので、改めて正一郎が状況を整理する。
「とりあえず、四天王と呼ばれる奴らは全員捕縛した。こいつらは届け出のない転生者だし、凶器準備集合罪で引っ張りつつ余罪を調べる感じになるな。んで、目下の問題が雲類鷲さんの依頼人の息子さんが逃げた信徒の中にいなかったってことだ。つまりこの中にいるか、別の場所に幽閉されているかのどちらかになるが……桐生院さん、どこか心当たりはあるか?」
正一郎の問いに桐生院はうんうん唸りながら考え、やがて一つの答えにたどり着く。
「……あぁ!もしかしたら教主の部屋の隠し部屋にいるかもしれません!」
桐生院の能天気な声に、正一郎の殺気から茫然自失となっていたノレンがやっとこちらに戻ってきた。
「隠し部屋?オマエなんでそんな部屋作ってんだよ。大体オレが見た時は特にそんなもんなかったぞ?」
「そりゃあ、普通に探したら見つかりませんよぉ。とりあえずついてきてください!」
桐生院に誘われるがまま、一行は教主の部屋と呼ばれる一角まで移動する。なお、機動力を買って太陽には正一郎の洗脳対抗装置を渡し、捕縛した転生者の見張りについてもらっている。
「えー、ここにあります本棚のぉ、右から二番目をまず引っ張りましてぇ、そのまま奥深くまで突き刺しますとぉ……このようにぃ、扉が現れるわけですねぇ!」
桐生院が教主の部屋にある本棚をいろいろ動かすと、確かに扉が現れた。自慢げにそれを披露する桐生院に、今度は由美が疑問を投げかける。
「あの、これって何のために作ったんですか?」
「それはぁ、今回のように急に外敵に襲われたときに私が隠れるためですねぇ」
しみじみと作った甲斐があったなぁと満足そうな顔をする桐生院。
「そのせいで依頼人の息子が見つからなかった」
「まぁまぁ、とりあえず入って依頼を達成しよう。今田さんだっけ?失踪者は警察としてもちゃんとしたいところだからな」
一方麗はそんな桐生院に不満をあらわにした。それもそうである、自身の計画をこんな変なものに狂わされたのだから。そんな麗の憤りを正一郎は制しながら、とりあえず入ることを促した。
「でも、こういう隠れ家的なところはなんつうか楽しい気持ちをくすぐられちまうなぁ!」
「ですよねぇ!私もこういうギミックが大好きでぇ!」
変なところで共鳴しているノレンと桐生院をその場に置き去りにして、正一郎と由美、それに麗は扉の奥へ入っていく。
扉の奥にはくらい階段が広がっており、麗が持参した懐中電灯の明かりを頼りに下へ下へと降りていく。その奥にはもう一枚扉があり、それをゆっくり開けようとしたところで由美が麗と正一郎を伏せさせた。
「誰かいるよ……しかもこっちに敵意を持ってる」
「面倒だな、一発拳銃を撃ってどうにかできるだろうか」
警戒する由美に正一郎が提案するが、それを由美が首を振って止めさせる。
「まだ転生者かわかんないし、万が一急所に当たったらウチの回復魔法でもどうなるか分からないよ……」
ことさら面倒だと正一郎が苦悩する中、麗が一行の前に出た。
「私なら何とでもなる。とりあえず行ってみる」
確かに戦闘慣れしていて、更に洗脳対抗装置を持っている麗なら適任であろう。そう判断した正一郎がうなずき、麗が扉を開けると、中にいたのは
『……へぇ、洗脳用の対抗装置持ってるんだ。これはうまいこと考えたね』
巨大な脳みそであった。




