五十七話 防衛組織にはそれなりの構えもあるし
世界的に転生者が増え始めた折に、アメリカが先んじて「転生者対策用収容施設」を開発した。これは元海兵隊であった転生者の一人から提案されたもので、金属をある配合で混ぜると魔力を著しく分散させるという効果を最大限に利用して作られたものである。
その最大の利点は「触れているだけで魔力を分散させる」という効能にあり、どれだけ強力な物理攻撃を有する転生者であっても一度これに触れてしまえばたちまち無力化させることが出来るという恐ろしい能力を持つ。
しかし配合前の段階から入手難易度が異様に高く、現在は転生者専用独房にいくつかの手錠代わりとして置くにとどまっているのはここだけの話である。
そして宮城県警は政令指定都市である点と、転生者事案が頻発するという点から他の県より少し多めの手錠を預かっている県でもあった。
何が言いたいかというと、サタナエルは無力化されたうえで宮城県警の管轄下に置かれることになった。
「くっ、殺せ!」
「そんなテンプレ女騎士見てぇなセリフを聞くことになるとは思わなかったよオレ」
サタナエルの喚き声に肩を竦めるノレン。一応の言い分でも聞こうと思った正一郎たちは独房の前で話を聞いてみたのだが、彼の口から出るのは罵倒の言葉だけであったので、転生者対策課の面々は独房を後にする。
「うん、まぁ、分かりきった事だったね」
「得てして敵というものは相いれない存在なんですよ」
寒い倉庫の中という名の転生者対策課の中で転生者組がうんうん頷く横、正一郎は本題に戻る。
「敵の能力は粗方割れた。ミカエルってのが、要するに極際だ。催眠術の使い手で、これについては対策が現在進行形で練られている。ルシフェルってやつは空を飛べるらしいから、対処は太陽に任せるとして、問題は残る一人だな」
「それに付いては問題ねぇよ」
正一郎の懸念に物申したのはノレンだった。あったかいお茶をすすった後に、話を続ける。
「正直桐生院とオレの二人で抑え込めるような奴だ、本気出した由美にはかなわんだろうな。ということで、ラスボスともいえる極際の対処は俺と正一郎、後は外部ではあるが桐生院の三人で抑え込むことになるだろう」
「ほぁ!?私ですか!?」
流れで付いてきて、なんとなく転生者対策課と行動を共にしていた桐生院がびっくりする。
「お前、ここまで来て関係ない立場に入れると思うなよ?がっつり作戦に組み込んでやるからな」
ノレンの有無を言わさぬ態度に、ほぁ…と悲し気な顔をする桐生院。正一郎としても転生者の助力は正直助かるので、何も言わないことにした。代わりに話題を変えることにする。
「そして、奴らが四天王だとすると、大元に値する人物がいるってことになる。コイツの能力が全くの不明な上、もし極際やルシフェルと呼ばれる奴と行動を共にしているとなると厄介なことになる。こっちの前提条件が崩れるからな」
「あ!じゃあ前みたいに雲類鷲さんの力を借りるというのはどう?」
どうしたものかと頭を捻る正一郎に、由美が元気よく手を上げた。しかし正一郎は首を横に振る。
「駄目だ、確かに今回の件に首を突っ込んでくるだろうが、敵の能力が未知数な以上麗さんを戦力の当てにする訳にはいかない。協力関係とはいえ、転生者対策課ではないしな」
「じゃあ!ダレンさんたちはどうですか?転生者ですし、危険というほどでもないでしょう!」
至極真っ当な答えにぐうの音も出なかった由美が、いい考えだったのになぁと肩を落とすと、今度は太陽が代案を出す。が、正一郎はこれにも首を横に振った。
「ちょっと前まで殺し合った関係だってことを忘れるなよ?今回の件でこっちはどう対応するかまだ決めかねてるんだ。更なる貸しを作ったらどうなるか分かったもんじゃ無い」
ちぇー、とすねる太陽。これはいよいよ手詰まりかと思われた時、ノレンがにやりと笑った。
「四天王を束ねる存在って言うと、アレだよな。日本のRPGではお決まりの、今名前を言うと酒田が飛んできそうなアレだ」
正一郎は少し考えてから、ああと納得し、ノレンと同じくにやりと笑った。
「お前、ろくでもねぇ案思いつくな」
「お前ほどじゃねぇよ」
2人で不気味に笑う姿をみて、この場にいた転生者の面々は不気味そうにそれを見ているしかなかった。
そうして、次の日に移ることとなる。




