五十五話話 弱点のない人間なんて存在しないし
「おい太陽解説だ。アイツの能力は反射、一つの方向に集中している間は他の所がお留守になる。んじゃ行くぞ!」
号令をかけたノレンが拳銃を構えると同時に、太陽が突っ込む。攻撃を警戒したローブの人物は迷わず能力を使うが、しかしそれは太陽の狙いでもあった。
「残念!」
太陽の体が当たるその瞬間、太陽は突如として自分の速度をゼロに戻した。そうしてすぐにローブの人物を空中に飛ばす。こうなってしまえば身動きが取れず、ローブの人物は防戦一方になる、はずであった。
「ボクが何の対策もなしにこの状況を受け入れるとでも?」
ローブの人物は、地面に急降下し始めた。どうやら太陽の能力を反射することによって、浮力をそのまま重力に置き換えたようである。
「ノレンさん、コイツ強いですよ!」
「こっちはそれも計算尽くなんだよ!」
太陽の弱気な発言すら、ノレンの手の内であった。そしてそのままノレンはローブの人物に向かって発砲、一点集中を破る形での攻撃なら通ると踏んでいたのだ。
「甘い!」
だが、ローブの人物に銃弾は届くことなくその軌道を反射させられる。間一髪で己の放った銃弾をノレンが躱すと、続いて反射能力をフルに使い一番の障害になるであろう太陽へと襲い掛かる。
「この……ぐぁっ!」
太陽が逆方向に飛ばすのを見越していたのか、能力を反射することによって更なる加速を得たローブの人物渾身の右ストレートが太陽の鳩尾に入り、そのまま山方向へと吹き飛ばされた。岸壁にぶつかった余波で、木々は倒れ地面が裂ける。太陽は一時的に気を失っているようだ。
「おいおいコイツ無敵かよ!」
現状は最悪だなとノレンは心の中で悪態を付き、改めて銃を構えなおす。一点しか狙えない拳銃であるなら、攪乱することで無理やりその一点を作り出すほかない。
ノレンは素早い身のこなしでローブの人物と距離を詰め、撃つふりをしつつその場から避けるしぐさをしたり、逆に接近したりと相手の出方を待った。
「ちょこまかとぉ!」
ローブの人物が転生者の基本的身体能力でノレンを攻撃しようとするも、その全てが紙一重で躱される。長期戦になれば一般人且つ動き回っているノレンに勝ち目はない。しかしどのタイミングで反射能力を発動しているかはノレンには解らない。
ならばどうするか。瓦礫の中で何かが動く音を聞き逃さなかったノレンは、そちらの方向へ叫ぶ。
「太陽!瓦礫浮かして一斉にコイツにぶち当てろ!」
「了……解!」
ノレンの号令と共に、地面に落ちていた木々や地面の欠片が浮き始めた。そうしてローブの人物を取り囲むように周回し始める。
「四方から飛ぶ瓦礫の山、反射できるものならやってみろ!」
太陽の声と共に、瓦礫は一斉にローブの人物へと殺到した。
「この程度で勝ったつもりか!」
しかしその全てを正確に弾いていくローブの人物。その足元にはどんどんと瓦礫の山が詰みあがっていく。
ある一点を除いて。
「やるじゃん太陽」
飛び交う瓦礫の音にかき消されそうな、しかし嫌に響く声がローブの人物の背後から聞こえた。慌てて振り向くローブの人物の額に、ノレンの銃口がめり込む。
「この距離じゃ、バリアは張れないな!なんてな」
「こ、のぉ……!」
ノレンの言葉通り、どうやらローブの人物には打つ手が無くなったようである。そのままゆっくりと手を上げて、
「「なんてな!」」
襲い掛かるローブの人物がノレンの首を掴むより早く、弾丸はローブの人物の膝を貫いた。自重を支えきれなくなった足が、地面に突き刺さる。
「ぐ、がぁ……な、なんで……」
「テメェが体の中でも反射できるだろうと読んで、あえて一点に絞らせてもらった。大当たりだぜ馬鹿野郎」
痛みには慣れていないのか、意識を朦朧とさせるローブの人物に、ノレンはもう一撃、今度は肩に銃弾を撃ち込んだ。




