五十話 作り手は優秀であればあるほどいいし
ノレンが今野探しに精を出している最中、正一郎たちは暇を持て余していた。正確に言えばダレンが対催眠用の秘密兵器を作っている間、何もすることがなかったのである。現在は雲類鷲探偵事務所の中、その応接間にて各々が好き勝手している。潜入しているノレンのことなど、ここにいる面々はもう気にかけてなどいない。
「なぁ雲類鷲さん、ダンクって本当に信頼できる相手なのか?」
本部の部長にReincarnated Person Companyとの業務提携の話をメールで持ちかけ、その部長も上に報告するとのことだったので、本格的に手持ち無沙汰になった正一郎が麗へ何気なく質問を投げかける。麗も麗でやることがなかったからか、すぐに答えてくれた。
「分からない。けど頼らないよりマシ」
うーんなるほどと正一郎は唸る。確かに対抗策がない現状、人に頼るのは正しい。しかしそれがこちらの命を狙ってきた相手となると、また話は変わってくる。もはや相手すらドン引くレベルの所業である。
それを顔色一つ変えず実行する麗の胆力たるや、人としてのそれを軽く凌駕しているなと正一郎は思った。何なら上席に物応じせず対応する係に任命したい気持ちすらある。
「それにしても、ここはあったかいね。転生者対策課とは大違い」
正一郎が難しい顔をしていたからか、気を使って由美が話題を振ってきた。あんな隙間風の多いところでただただ時間を潰すのは正一郎としても嫌だったので、特に否定はしない。
「催眠系の対抗手段、どんなものを作ってくるんですかね。やっぱりこう、頭にアルミホイル巻くとかになるんですかね?」
なんでへんなスピリチュアル方向に進むんだよと正一郎が目頭を押さえつつ突っ込もうとすると、突如事務所のインターホンが押される。
「今日仕事無い日だって言ってたよな?」
思わず正一郎が麗に目をやると、コクリと首を縦に振った。
「飛び込みのお客さんかもしれない。とりあえずみんな席立って」
「……まって、この気配、人じゃない」
麗が立ち上がる前に待ったをかける由美。人じゃないとは?と正一郎の頭の中に疑問符が溜まったところで、続いて太陽が気づいたように立ち上がる。
「本当だ。懐かしい、けどここで感じたくなかったなぁ。麗さん、この建物から脱出できるのは玄関だけ?」
そういって太陽はやけに真剣な面持ちで麗に尋ねた。麗は困惑した表情を浮かべながらも首を縦に振る。
「そっかぁ……僕は後衛を担当するので、由美さんは前衛頼めます?」
「いいよ。任せて」
「お前らだけで納得するなよ。何が来てんだ」
戦いの算段を付ける転生者たちに、正一郎は少しの焦りと苛立ちを覚えた。二人からほぼ同時に帰ってきた言葉は
「「魔物(だよ)」」
というシンプルな答えであった。




