第53話 大切な死
帝国暦1401年
―独立都市センシティ―
お姉様から放たれたら光が晴れるとそこには炎に包まれているセンシティの姿と、霧のかかった何者かの姿があった。
「お前、どうやってあそこから抜け出した。」
霧のかかった何者かが聞いてくる。
「お前に言ってやるつもりはない。魔よ。お前はここで消える運命なんだ。」
「私に傷一つ付けれなかったお前が、我を消せるとでも思っているのか?笑わせてくれる。できるものならやってみろ。」
私はお姉様より、与えられた力を発動する。
「我の前にいる者、世界を滅ぼさんと欲する者なり。我、王家の掟に従い悪を討ち祓う義務を宿す者なり。我、女神の求めに応じて悪を討ち祓う者なり。我、我が身に振りかかろんとする悪を討ち祓う者なり。
神力、女神の怒り。」
その時だった。私と魔の周りを大きなドームが包み、その中を薄っすらと光る物がくるくると回りながら私達に徐々に近づいてくる。
そして、光が私達に触れたと同時に天から大量の神々しい光の矢が魔に向かって降り注いだ。魔はそれを必死に防ぐ、が数の力に押し切られ1本、2本と魔に矢が刺さっていく。魔に矢が刺さるとそこに向かって辺りを飛び回っていた光が中へ入る。光が中に入る度に魔はうめき声をあげる。
魔に5本程矢が刺さった頃だろうか。
魔が私に向かって何かを言い始めた。
「この技は女神の技だろう。女神の技を使う者に一つだけ忠告しておいてやる。女神は裏切り者だ。信用してはい け な ぃ…。」
そう言うと魔の体はバラバラの小さな粒となり、何処かに消えていった。
「お姉様が裏切り者で信用してはいけない、か…。」
魔が最後に言った言葉だ。もちろん私を混乱させるためのデマである可能性もあるがあの時の魔の体には私にそう言っている間にも矢が何本も刺さっていた。その状態でそんな事を言うのだろうか…。お姉様を信用するな。あの言葉に信憑性はあるのだろうか。
私はそんな事を考えながら魔の襲来によって壊れ果てたセンシティの街を魔力を使い果たし、あちこちから血が出ている傷ついた体でフラフラとシズクがいるであろうセンテリア城の方向に向かって歩いていた。頭の中を色んな事が書き巡りながら歩いていた。ふと顔をあげるとそこは中央広場だった。
センテリア城の前にある中央広場には3体の石像がある。1体はお姉様もとい女神。2体目は邪神。3体目は王冠を被り、顔を布で隠している女性。
そんな3体の石像を横目に通り過ぎたところで私は衝撃的な光景を目にする。
………アイだ…………
そこには血だらけになって倒れているアイがいた。
私は急いでアイに近づき、ヒールをかけ、アイに呼びかける。
「アイ、大丈夫か。」
アイは私の声に何も返さない。ピクリとも反応しない。
「アイ、何か返せ。ここでお前が死ぬなんて師匠として許さない。お前はまだまだ未熟な魔法使いだろ。私はお前にもっと魔法を教えなければならないんだ。師匠らしい事をしなくちゃいけないんだ。だから、返答してくれ、アイ。頼む………。」
私は泣きながらアイに懇願した。けど、いくら懇願してもアイの体はピクリとも動かない。体も徐々に冷たくなってきた。
「アイ、頼むよ。何か返しておくれ。」
そう、何度も何度も言った。分かってる。アイはもう生き返らない。死んだんだ。死んでお姉様と同じ場所に行ったんだ。皆そうだ。私を置いて天界に行ってしまう。
「私は一生孤独なの?」
思わずそんな事を呟いてしまう。
気づけば私の目線もぐるぐると揺れて、意識が曖昧となっていた。
そんな状態の中で以前のように孤独になってしまう事への恐怖が感情を支配する。
その時気づいた。
アイに出会ってから私は変わったんだ。私、孤独が怖いと思うようになったんだ。
それが意識がなくなる最後に思った事だった。




