↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
99/126

第99話 襲撃

 奇妙な一団がパイソーの街で目撃された翌日、牧場である事件が起きた。

 放牧されていたセブンターキーが無残に食い殺されていたのだ。

 第一発見者は牧場の管理人のキリコで、セブンターキーが夜分興奮しており、なにがあったのか眠い目を擦って牧場を見回ると、彼女は暗闇(くらやみ)にある気配を感じたという。

 セブンターキーを食らう巨大な狼、即ち魔狼だ。

 全長は四メートル、肩まで一メートルはある巨体、キリコは一瞬で戦慄いたという。

 幸いというか、魔狼はその場ですぐに逃走、キリコに怪我(けが)はなかった。

 夜分遅くキリコは警察に通報すると、すぐに検分が行われた。

 鑑識は食い殺されたセブンターキーは、首を折られ、腸を喰(く)われていると確認。

 間違いなく魔狼の仕業であろう。

 しかし……捜査に当たった刑事は疑問を持つ。


 いったいどこから魔狼が壁を越えて街に侵入したのか。

 そしてどこへ消えたのか?

 警察の捜査の中、街を覆う外壁に異常は見当たらなかった。

 まさに摩訶不思議と、処理されるしかなかったという。

 それを事後報告で聞かされた白蛇リュウイチは「なぬっ?」と顔を険しくした。


 「魔狼事件、ねぇ……キナ臭いな」


 朝執務室で、朝食を食べながら、街で起きた怪事件に頭を捻らせる。

 その前は謎の集団が牧場に訪れているし、なにか関連しているのだろうか?


 「穏やかじゃないな、あむ」


 今日は食パンにセブンターキーの卵とハムを重ねたサンド、ちゃんと調理すればこんなに美味しいのに。

 森で採取出来る黒胡椒に、ハムの塩味が旨味を引き出し、これが文明の味である。

 食後は南方の商人が齎したコーヒーでブレイクファスト。


 「ふー」


 なんてリラックスして息を吐いている。

 ズダン! 突然執務室が大きな音を立てて開かれた。

 入ってきたのは、スーツ姿のオークであった。


 「た、大変ですリュウ様! ま、街に魔狼が大挙して!」

 「ぶーっ! 一体何が起きてんだー!?」


 思わずコーヒーを吹いてしまう。

 白蛇は迷わず窓を開くと、外へと飛び出した。

 上空から街を見下ろすと、旧市街の玄関口に大量の魔狼が入り込んでいた。

 兵士達は必死に応戦するが、魔狼は手強い。

 白蛇は直様急行した。


 「ちょっと待てー! パイソーはやらせないぞ!」


 その声に兵士も魔狼も空を見上げる。

 白い蛇竜が降臨したのだ。

 兵士達は歓喜、一気に士気が上がる。

 一方魔狼はある一匹が立ち上がった。

 立ち上がった? しかり魔狼が突然獣人のように立ち上がったのだ。


 「貴様が魔物の国を収める白蛇か」

 「な、なんだ? 魔狼ってのは、獣人に変身出来るのか?」

 「獣人ではない、我らは巨狼族、ワーウルフの末裔だ!」


 ワーウルフ、人と狼の姿を使い分ける大森林に住む種族。

 本来魔狼族は知性をロクに持っていない種族だが、これで納得がいった。

 巨狼族、彼等の狙いは。


 「この街は我々巨狼族が占拠する!」

 「だー正気か!? これっぽっちで!」


 巨狼族の数は約五〇。

 如何(いか)に精強といえど、占拠するには数が足りない。

 まして彼等ワーウルフにまともな統治なんて出来るのか?

 まったく馬鹿げている、白蛇はすぐに説得するが。


 「その人数じゃ無理だ、さっさと森へお帰り」

 「出来る出来ないではない、やるのだ!」


 巨狼たちの雄叫び、彼等は一斉に獣人に変わる。

 立ち上がると、オークさえ上回る巨体には驚かされる。

 伊達に巨狼ではない、まさ狼の巨人だ。

 高身長のグレートデーン種のコボルトでさえ見上げるほどなのだから、兵士への威圧感は凄まじいの一言。

 しかしそれに怯まぬ者もいる、訓練教官のバルボだ。

 すっかり一線を退き、後進の育成に励む中年のオークは、些かも衰えを見せず、逞しい筋肉で巨狼を投げ飛ばす。


 「リュウ様の声が聞こえねぇのか、オメェらじゃ無理だ」

 「何を! 構うな! やれ!」

 「ウォーン!!」


 巨狼は武具を持たない、バルボは手斧を武器にするが、あえて武器は捨てた。

 彼は敢えて巨狼と同じ条件で戦うことを選んだのだ。

 巨狼は上からバルボの顔面を殴り抜ける、だがバルボは口から血を吐きながら、更に上回るパワーで殴り返す。

 巨狼といえど、バルボのアッパーカットには、顎を砕かれ宙を舞った。

 ノック・アウト、バルボは拳を振り上げ勝利する。


 「これがオラの実力だ、オークを舐めんじゃねぇ」

 「くっ! これが英雄バルボか!」


 分が悪いと思ったのか、巨狼たちはバルボを取り囲んだ。

 バルボは警戒しながら身構える。


 「いかに貴様といえど、包囲すれば」


 だが直後、巨狼たちの足元に、風の弾丸が打ち込まれた。

 巨狼たちは慌てて飛び退き、空を見上げると、イーリス族の集団が奇妙な筒を構えているではないか。


 「巨狼の皆さん、今の警告です。次は当てますよ?」

 「ユズ! 協力してくれるのか!?」


 イーリス部隊の指揮官はユズであった。

 ユズは白蛇の下へと飛来すると、すぐに頭を垂れる。


 「出撃に手間取り申し訳御座いません」

 「いいよいいよ、寧ろイーリスは兵士じゃないのにありがとう!」


 ユズは自ら白蛇に臣従を誓った身だが、領事館のイーリス全てがそうではない。

 事実領事館にいた責任者のビリスは、出撃を渋り手を拱(こまね)いていた。

 それどころか真っ先に逃げ出そうとする始末で、ユズはその場で激怒、結局ユズの命令が通じ、イーリスたちは魔法銃(マジックライフル)を携(たずさ)え、現場へと急行した訳だ。

 少し遅れた理由が、弱気なビリスの性とはユズでさえ、身内の恥に顔を赤くするほど。

 ともかく、銃撃隊が来たからには制空権を持つイーリスの銃撃は驚異である。

 事実巨狼は空を見上げるばかりで、まるで対処法がなかった。

 こんなことさえ知らず侵略してきたのか、白蛇は巨狼の杜撰(ずさん)な戦力に呆(あき)れるが。


 「魔法陣展開、戦術レベルⅣ(フィーア)」


 巨狼たちの最後方、漆黒(しっこく)のローブとマスクで身を隠した集団がいた。

 彼等は杖を持ち魔法を詠唱する。

 巨狼じゃない……なにか嫌な予感がする、白蛇は直ぐに叫んだ。


 「イーリス隊、直ぐに退避しろーっ!」


 「これを神なる一撃となれ、刮目せよ《大いなる雷(ボルトデーン)》!!」


 古代魔法ボルトデーン、空間内に高圧放電現象を引き起こし、一気に痺れさせる驚異の魔法。

 イーリスたちは退避が間に合わず、僅か数名を残してまるでカトンボのように撃ち落とされた。

 白蛇は一気に血の気が引いてしまう。

 ユズは絶句、直ぐに落下するイーリスを一人でも多くと、抱きかかえた。


 「きゅ、救護班急げー、イーリスを一人も殺すなーっ!」


 悲痛な叫び、後方で控えていた救護班は速やかに墜落したイーリス族たちの下へと向かった。

 巨狼はその痛快な姿に大笑い、まさにしてやったりだった。


 「対策が無いと思ったか、我々はダークエルフと共同作戦を行っているのだ!」

 「ダークエルフ……?」


 一番長身の男は、フードを剥がすと、浅黒い長耳が飛び出した。

 そのままマスクも取ると、そこには見惚れるような美男子がいた。

 ダークエルフ、エルフの突然変異個体、彼等は皆ダークエルフで構成され、大人も年端も行かない子供までいた。

 そしてそれを見て、納得する女性が戦場へと現れた。


 「伝説のダークエルフ、共和国を終われ、何処かに消える……て、お伽噺で聞いてたけどさ」


 フレイアだ、魔法の弓を携え、戦場へと踊りでた。

 ダークエルフたちは皆ハイエルフの出現に敵愾心(てきがいしん)を強める。


 「ハイエルフ……! 我らを魔の森にまで追いやり尚も立ち塞がるか!」


 ダークエルフのハイエルフに対する異常な憎悪。

 肝心のフレイアは深い溜息(ためいき)を吐(つ)くだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。