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第79話 大いなる蛇との出遭い

 「《天辰剣》!」


 修行中のリュウイチ、今や蛇竜へと至り、蛇なんだか竜なんだかどっちなんだいと言う気分。

 以前蛇神はドラゴンは蛇と恐竜を祖に持つと言っていた、つまり竜への進化はある意味で神のルーツに正しいのだな。


 『進化おめでとう、小振りなのは相変わらずだけど、竜になれたねー』


 と、蛇神様もご満悦だ。

 竜になったのに良いのかと、疑問に思うが竜は可愛い孫のようなものだから蛇神的にはオッケーのようだ。

 そもそも神は容姿には拘らない。

 でなければ猫の加護を持つベヒーモスがドラゴン化したら、それは竜の加護になるかの問題になるだろう。

 だからルーツが問題無ければ容姿に拘らないのが神の流儀なのだろう。

 猫神からすれば、『食肉目進化はないんかーい』とご不満のようだったが。


 ともあれ、進化してからの初戦、敵は巨大な人食い花【マンイーター】だったが、あまり動けないのが災いして《天辰剣》の一撃で、燃えつきた。


 「思ったより威力あって便利だな、このスキル」

 「気になったのじゃが、その天辰剣とかいうスキル、使用回数に制限はないのか?」

 「んー、どうなんでしょ、そもそも俺のスキル、弾切れとかって経験ないですし」

 「魔法なら無限には使えん、魔力が底を突けばそこまでよ」


 定番らしくいわゆるMP切れだろう。

 一方俺の場合スキルだからか、なにかが減った感じはしない。

 多分無消費無残弾だよな、そう考えると天辰剣も充分ぶっ壊れな気がしてきた。

 雷落とせるってだけで、それなりに強力な武器だもんな。


 「む……ちと深部に進み過ぎたか」

 「え?」

 「魔力を感じんか、ケタ違いの魔力」


 リュウイチは魔力探知すると、遺跡の奥に凄まじい力を感じた。

 けれどもう一つ、その魔力には手足が無く、なんとなく懐かしさのようなものを感じた。


 「ちょっと挨拶してきます」

 「え? 挨拶だって、お、おい!」


 リュウイチは迷わずその強烈な気配の下に向かった。

 いわゆるダンジョンボス、それは暗いドームの中に雄々しく立っていた。

 体長推定三十メートル、種族を表すならば……【ヨルムンガルド】、蛇系魔物の最上位種。


 『来るのを待っていました、蛇神様の眷属様』

 「俺を知っているの?」


 ヨルムンガルドは大きな頭を縦に降る。

 リュウイチとは比較にもならない、この遺跡で最も強い力を持つ魔物が敬意を払っている。

 後ろから警戒していたリッチクイーンは最初信じられなかった。

 だが直ぐに、リュウイチがとんでも存在だということを思い出す。

 アイツは挨拶と言った、やり合う気は初めから無いのだ。


 『わたくしは、世界中に分体を持っていますので、貴方と魔物街のことも承知しております、勿論貴方が初めてこの世界に顕現した頃から』

 「うへえ……ちょっと恥ずかしい」


 ヨルムンガルドはスキル【分体創造(クローン)】によって、自己の分身を小さな蛇にして世界中に放っているらしい。

 それは世界を見守るため、そして蛇神を待っていた。


 「もしかして君……《能力鑑定》」


 【 名前 】 リサナ

 【 種族 】 ヨルムンガンド

 【 レベル 】 583/650

 【 ランク 】 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 【 攻撃力 】 1987

 【 防御力 】 2799

 【 魔法力 】 2618

 【 魔防力 】 3055

 【 敏捷力 】 1682

 【 スキル 】 蛇神の加護 魔法の才 祈りの才 超魔法の知識 分体創造(クローン) 大地を喰らうもの 超再生 超広域念話 転生術


 間違いない、リュウイチと同じ蛇神の加護を持っていた。

 そして魔物には珍しく名前がある。

 マーシーと違って、元ニンゲンという感じはしないが。


 「えとリサナって名前で呼んでもいい?」

 『まぁ名乗ってもいないのに、ええ、喜んで白蛇様』


 能力鑑定はかなり珍しいスキルだ。

 これにより事前にリサナの能力値やスキル、そして名前を知ることが出来たが、リサナは知ってもらえてむしろ喜んでいるようだ。


 「それじゃあ俺もリュウイチ、ってそっちは知っているか」


 分体を利用したおそらく《超広域念話》というスキル、世界中の情報を集めているのだろう。

 この念話自体、おそらく彼女(でいいんだろうか?)のスキルだろう。


 『クスクス、実際お目に掛かってとてもユーモラスなのですね』

 「ゆ、ユーモラスかぁー、狙ってないんだけどなー」


 ユーモラスと言われると複雑だ。

 本当は格好良い白蛇でありたいのに、周りは可愛いだのユーモラスだの、言いたい放題だ。

 どうしたら威厳って身につくんだろう?


 「まぁ今日は挨拶にきただけだから」

 『そうですか、わたくしは訳あってここから動けません……もし分体に出会えたらよろしくお願いします』


 そう言って再びペコリと頭を下げた。

 超イカつい見た目に反して、中身は凄い淑女って感じだ。

 女子力超高そう、ステータスはおばけなのにな。

 白蛇は背中を向けると、出口へと向かう。

 出口には、様子を観察していたリッチクイーンが待っていた。


 「何を話しておったんじゃ?」

 「蛇同士親睦を」


 念話はリッチクイーンには聞こえていないらしい。

 おそらく念話対象をある程度自由に選べるのだろう。

 凄い便利なスキルだが、案外制約もあるのかもな。


 「それじゃあ修行再開しましょうか」

 「……うむり」


 師匠はなにか腑に落ちていないらしい。

 そりゃまぁヨルムンガンドと弱小白蛇が仲良く親睦を深めるって意味不明だよな。

 けれど問題はない、同じ蛇神の加護を持つもの、時に協力しあえるだろう。

 敵に回すと、ズタボロに鏖殺(おうさつ)されるのが関の山か。

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