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第67話 白蛇の足掻き、聳え立つ闇の摩天楼

 白蛇が啖呵を切った。

 リッチクイーンのマーシーはそれを面白いと思う。

 健気だ。まるで小動物、幼い頃のベヒーモスととても似ていると思う。


 「ククク、言いよる、なら力を示してみせろ、妾を下してみせろ!」


 マーシーは魔法を唱える。

 《闇の矢(ダークアロー)》が無数に精製されると、一斉に白蛇へと飛来する。


 「くっ!? なに!」


 光の翼は物理法則を一切無視して、闇の矢の群れを回避する。

 しかし闇の矢は白蛇を追尾し始めた。


 「クハハハ! すばしっこいな! 益々愛らしいわ! だがどこまで抗える!?」

 「クソッタレ! 《エーテルショット》!」


 逃げながら反転すると、光の翼から無数の光弾を弾幕のように張る。

 闇の矢と光の光弾がぶつかり合うと、小爆発が巻き起こる。

 闇の矢が撃ち落とされるか、マーシーは冷静に観察する、しかし白蛇、健気だが詰めが甘い。


 「やったか……が!?」


 撃ち落としきれない、闇の矢は二発白蛇に突き刺さった。


 「あああああっ!?」


 痛みにうめき錐揉み回転で墜落する。


 「白蛇っ! うぐっ!」


 フレイアは落下する白蛇を抱きかかえる、が纏めて地面に転がった。

 痛い、が白蛇に比べたらそれがなんだ。

 白蛇の患部を見てフレイアは古代魔法を唱える。


 「痛み取り除け、《キュア》」


 白蛇はプルプル首を振ると、フレイアを見た。

 身を挺して白蛇を救う健気な姿に白蛇は感動し、だからこそマーシーに立ち向かえる。


 「サンキュ、フレイア」

 「白蛇、アイツ普通じゃない……このままじゃ勝ち目ないわ」


 理解っている。

 だけどここで退いたら皆犠牲になる。

 それならもう一か八かに賭けるしかない。


 「こうなりゃトコトンやってやる、《猫の爪》!」


 白蛇から魔法の猫の手足が生えると、一気に駆け出す。

 ご丁寧に尻尾まであり、益々愛らしくなったと、マーシーを歓喜させた。

 白蛇はリッチクイーンの脇に回ると、猫の爪で切り裂く、が!


 「なんだその魔法、初めて見たな……だが!」


 リッチクイーンは爪を伸ばす、さながら爪剣だ。

 素早さを大幅に上げた白蛇に対して、リッチクイーンは爪を振り払う。

 それだけで猫の爪を打ち払い、白蛇は後ろに飛んだ。


 「魔法だけではないぞ妾は!」


 マーシーも跳ぶ、一瞬で白蛇の真上まで跳ぶと、白蛇に蹴りを叩きつけた。


 「ぐあああああ!?」


 ズガァァン! 大地を破砕する一撃に白蛇は絶叫を上げる。

 マーシーは艶やかに髪を掻くと、白蛇を足蹴にした。


 「魔法も駄目、速度も駄目、力も駄目、貧弱よなリュウイチよ」

 「く、クソ……ど、どうすれば、こいつに……」


 白蛇は傷つき、何をやっても敵わないのに、まだ闘志を衰えさせていなかった。

 少しだけ訝しむ、なぜそこまで無謀にも立ち向かえる?


 「リュウイチ、逃げたいとは思わんのか? なぜ力の差を理解できん?」

 「クハッ、ハァ、ハァ……逃げたい? 思ったさ、でも逃げたら誰も守れない……!」


 マーシーはネクロな瞳を見開いた。

 こいつはそんな理由で逃げずに格上に立ち向かったのだ。


 「ならばこうしよう、百人の生贄を差し出せ、そうすれば妾はここを退く」

 「ふざ、けんな! 命を数えんじゃねぇ! 俺は生贄なんて許さないぞ!」

 「弱い奴ほどよく吠える」


 マーシーはグリグリと白蛇を踏みつける。

 激痛に意識が飛びそうだ、それでもリュウイチは例え死んでもそれだけは許せなかった。

 必死に、がむしゃらにマーシーの足に噛み付くと、そこから猛毒を流すが。


 「ククク、生憎だが妾はもう死を超越している、故に毒は効かぬ」


 アンデットに毒は通じない。

 それはダンジョンアタックの時に身に沁みた。

 しかしそれでも、この()ならば?

 マーシーは噛まれても構わない、痛覚すら機能しないのだから余裕の笑みだったが、やがてある異変に気付いた。

 マーシーのネクロな足がドス黒く変色し、ボロボロに崩れ出した。


 「なん、だと?」

 「ハァ、ハァ! これが蛇神の腐食毒だぁ!」


 【蛇神の毒】あらゆる毒耐性を無視し、全ての毒を扱うスキル。

 普段は危険すぎて封印していた、金属すら一瞬で溶かす腐食毒なら、アンデットの身体さえも崩壊させる筈だ。


 「クハハ! なるほどなるほど! 牙はあったということか!」

 「さっさと降参しろ、間に合わなくなるぞ!」


 この期に及んで白蛇はマーシーの消滅は望んでいないようだ。

 益々面白い、だがやはり詰めが甘い。

 マーシーは全身を粉々すると、筋肉、骨格、神経、全てを精密に分解、それはまるで腐食毒で溶けたかのようだ。

 白蛇はもう動けない、ただ闇が晴れないことに訝しんだ。

 直後、街が闇に覆われる。

 マーシーの古代魔法【闇の魔法都市ダークスカイスクレイパー】によって、現実世界を上書きしていく。

 魔物街の上から無数の摩天楼が聳え、マーシーは再び肉体を蘇生し、降臨した。


 「どうじゃ、これが妾の力、何故妾が不死の女王か、理解したか?」 


 マーシーのスキル【不死女王(ネクロスファラ)】によって、彼女は闇の中にある限り、不滅なのだ。

 腐食毒はたしかに対処法としては正解だった、だが何度でも新品のように自己蘇生出来るマーシー相手には悪手でしかない。


 「妾にはまだ無数の手がある、だがリュウイチよ、お前にはまだ手があるか?」


 白蛇はフラフラと、身体を持ち上げる。

 マーシーはもう万全、この不死身の怪物に勝算は……もうない。


 「ないか? ククク……まぁよくやったよお主は」

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