表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/57

第49話 人魚姫の来訪

 「コケーッ!」

 「コッコッコ、コケッケー!」

 「ああもう煩いったらありゃしない!」


 牧場建設作業中、二羽のセブンターキーはというと、農業地区に離され自由気ままに闊歩していた。

 それをうんざりしながらフレイアは眺める。


 「んー、フレイア、アレなに?」


 セブンターキーの鳴き声は街の方まで響き渡っていた。

 丁度今日の仕事を終えたハイドワーフのレギが凄まじい喧騒を聞いて、フレイアの下へとやってきた。


 「セブンターキーだってさ」

 「んー、強い魔力を感じる」

 「白蛇の奴が、養殖しだすとか言ってんのよ? 馬鹿みたいでしょ」

 「馬鹿は馬鹿でも白蛇様のような大馬鹿は見ていて飽きない」


 レギは白蛇の無茶な方策も好ましそうだ。

 そんなレギをこっそり覗き、フレイアは溜め息を吐く。


 「まぁー、愉快ではあるわよね。頭悪い方がもしかして幸せなのかしら?」

 「エルフは皆頭でっかち、面白おかしく生きる方が絶対楽しいに決まっている」

 「失礼ね、千年先まで考えているだけでしょう」

 「エルフは皆暇人、そんな先エルフ以外誰も生きていないのに」


 ちょっとだけチクッとフレイアは胸が傷んだ。

 エルフは寿命が長い、きっと百年後には、この時代の知り合いは一人もいないだろう。

 レギも自分よりずっと早く老いていく、それがたまらなく怖いと思えた。


 「ねぇレギ、私これでいいのかな?」

 「んー? なんのこと、フレイアはフレイア」

 「あーもう、やっぱりドワーフとじゃ話合わない」

 「だからエルフはイチイチ詩的な言葉を会話に入れないで」


 相変わらず、ちょっとしたことで二人は口喧嘩を始める。

 知っている者には「あーぁ、またか」とありふれたものだが。

 それとなく二人を止めようと駆け寄るが、それよりも入口で歓声があがった。

 フレイアとレギも声に気付くと、意識をあっさりとそちらに向けた。

 白蛇一行が帰ってきたのだ。


 「バルボー、お帰りー!」


 大量の獲物を持って帰ってきた狩人たち、子供たちは特にバルボの下へと集合していく。


 「相変わらず人気者だなー」

 「そんなオラなんて」


 軽く茶化す白蛇に、バルボは少しだけ照れた様子で頬を掻いた。


 「さーてさて、諸君俺が獲ってきた獲物はコイツだー!」


 白蛇は自信満々にセブンターキーの前に。

 ゴブリンたちは「おおっ!」とどよめいた。


 「こ、これが幻といわれたセブンターキー!?」

 「初めて見たぞ、大きいのだな」


 セブンターキーはゴブリン族が待ちに待ったもの。

 早速ゴブリンたちは皆子供のようなはしゃぎ方でセブンターキーの下に向かった。

 一方バルボは生きたセブンターキーに疑問を覚えた。


 「リュウイチ様、どうやって生きたままセブンターキーを捕えたんだ?」

 「んっふっふー、それはだなぁ、ちょっと魅了を掛けてやってだな?」


 白蛇は自信満々にその時の様子を説明する。

 だがバルボにはもう一つ疑問があった。


 「セブンターキーはかなり警戒心が強いだ、それこそ僅かな敵意さえ敏感で、目撃することさえ稀だど」


 事実セブンターキーは通常ならまず目撃すら難しい貴重な種族だ。

 勿論白蛇だけでは生きたままなど不可能。

 しかも(つがい)、二羽のセブンターキーをなど、バルボには到底理解できない。


 「それはだなー」


 その時農地に流れる用水路に大きな影が走る。

 ポチャン、それは白蛇を確認すると、大きな人の上半身を用水路から上げた。


 「リュウイチ様、ネレイド族の代表として挨拶(あいさつ)をさせていただきます」

 「おっ、丁度いい」


 突然五人ほどのネレイド族が用水路を伝って白蛇の前に現れる。

 代表のテティスはネレイド式の謝礼をもって、敬意を示した。

 リュウイチはそんなテティスの前に向かうと。


 「ようこそネレイド族御一行! 俺が街の代表者白蛇のリュウイチだ」

 「リュ、リュウイチ様、この娘らは誰だ?」

 「あーまだ、正式には告知してなかったんだよな。彼女らがセブンターキーの生け捕り最大の功労者で、この街に新たに住むことになったんだ」


 バルボは勿論、フレイアもレギも初耳であった。

 知っているのは市議会の一部だけ、正式な発表はまた後日の予定である。


 「なるほど、だから突然おっきな池を作るの協力しろって命令きたのか」


 レギはポンと手を叩くと合点する。

 白蛇がネレイド族受け入れを報告された市議は直ぐにそのために用意をしなければならなかった。

 農地の拡張工事事業をいくらか回すことで、間に合わせであるがネレイド受け入れ体制を整える事となった。

 そして直ぐに指令書はレギに渡され、こうして出動したのだ。


 「あん? レギってばまだ仕事だったの?」

 「ん、実は働き者、えっへん偉い?」

 「偉い偉い、レギは偉い」


 レギは胸を張ると、悦に入る。

 直ぐにご機嫌なまま彼女は作業場へと向かった。


 「えとテティス、申し訳ないけどしばらく不便だと思うが」

 「構いません、外敵がいないだけでもここは天国です」


 湖の頂点捕食者のミズチといい、ネレイド族には外敵が多い。

 まして得意な海ではなく、ここは淡水域なのだ。

 外敵がいないだけでも、安寧の地としてはどれほど嬉しいことか。


 「なにか要望があれば聞くけど」

 「い、いえ……そんな畏れ多い……」

 「いや遠慮されても、こっちはネレイド族のこと全然わかんないんだから!」

 「ネレイド族って、確か南東のネーヴェ海に棲息しているのよね?」


 博識で語るエルフ耳、テティスはフレイアを見て驚く。


 「うそ、どうしてエルフがこの森に?」

 「私からしたらどうして海の異種族であるネレイドがこんな内地にいるのよ?」


 二人の少女に困惑は充分であった。

 テティスにとってエルフは超然とした異能存在という認識である。

 一方でフレイアにとってネレイドは書物に登場する海の異種族。

 事実は小説より奇なり、二人はまさにこの気分であった。


 「フレイアよ、まぁ訳ありで魔物街で農家やってるわ」

 「正確には植物研究家な」


 白蛇が横槍を入れるように補足する。

 エルフといえば人族よりも希少で、そして強大な力を秘めた種族。

 植物研究家と言われても容易に納得できる雰囲気をフレイアから感じた。

 テティスは改めて頭を下げる。


 「ネレイド族ディケオスの娘テティスと申します」

 「ネレイドのことは判らないけれど、とりあえず良いところのお嬢様なのね」


 お嬢様と言われるとテティスは照れてしまう。

 今森に避難しているネレイド族では確かにテティスは名家といえるが、すでに泥と血に塗れ、かつてはマーメイドにも劣らなかった魚鱗もすでにボロボロだ。

 彼女は優しくされることにも慣れておらず、美しいフレイアを直視出来ない。


 「あっ、そうだセブンターキーだけど、こいつら養殖するから、勝手に捌かないでくれよ?」


 二人は白蛇に視線を向ける。

 相変わらず白蛇は笑顔で、夢を見て邁進している。

 あの姿はある種滑稽ではあるが、フレイアやテティスには憧れもあった。


 「とにかくテティスさん、これからよろしくね?」

 「あっハイ! よろしくお願いします。フレイアさん!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ