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第125話 白蛇VS死霊使い

 凄まじい光爆、パイソー旧市街にまで届く浄化の光に、南門を粉砕し侵入した死霊使いは戦慄した。


 「なんだあの馬鹿みたいな力は?」


 死霊使いの戸惑いに、髪を掴まれぶら下げられたリッチクイーンの首は「ククク」と笑う。


 「お前はなにか知っているのか?」

 「あぁ知っているとも、アレはベヒーモスよ」


 ベヒーモス!? 滅多に目撃例もないレアな魔物ではないか。


 「だがあのような聖なる力を使うベヒーモスなんて聞いたこともないぞ」

 「当然じゃ、あのベヒーモスはただのベヒーモスに非ず、【セラフィムベヒーモス】なのじゃ」


 ベヒーモスの特殊進化態、誰かを護りたいという強い意思がキーとなる守護聖獣。

 死霊使いは小さく震える、だが愉悦に口角をあげた。


 「ククク……! 素晴らしい、アイツをアンデット化させればもう敵なんていないじゃないか!」


 こいつ恐怖が麻痺しているのか?

 死霊使いは馬鹿みたいに笑った。

 そんな死霊使いを街の守備隊は取り囲む。


 「奴だ! ここで奴を食い止めろー!」

 「邪魔だ!」


 武器を構えるオークにゴブリン、だが死霊使いは全身から闇の波動を放ち、守備隊を蹴散らす。

 圧倒的な闇の波動、それは死の神の加護の力。

 並大抵では抗えないほどの暴威に、守備隊は立ち上がれなかった。


 「ば、馬鹿な……」

 「クックック、安心しろお前らの肉体は有効利用してやるさ」


 そのまま死霊使いは僅かな手勢を連れてベヒーモスのいる新市街へと向かっていく。

 だがその時、まるでそれを拒むようにある小さな影が差した。


 「なんだアレは?」


 死霊使いは目を細める。

 白くて細長い、それでいて光の翼を持つ神々しさ。

 白い蛇竜、ジュンイチは死霊使いの前まで飛来した。


 「お前がアンデット軍団の総大将か?」

 「白い蛇? ハハッ、随分可笑しい奴もいたもんだ!」

 「質問に答えろ!」


 白蛇は怒り心頭の様子であった。

 無理もない、勝手に森を侵略してきて、多くの犠牲者が出た。

 ジュンイチからすれば、目の前の青年は正に魔王そのもの。


 「煩いぞ白蛇! 死ね!」


 死霊使いから放たれる闇の波動、白蛇は光の翼を盾にそれを防ぐ。

 グッ……ジュンイチはひりつくような殺意に慄く。

 それでも、この魔王を許す訳にはいかない。

 白蛇の視線は死霊使いの左手、あの師匠に嫌でも目が行った。


 「お返しだ! 《エーテルショット》!」


 闇の波動を耐え抜いたジュンイチは反撃に転じ、光の翼から無数に光弾を放った。

 だがそれは青年の前に立った不可視の壁に弾かれた。

 魔法? ジュンイチはそれらしい姿を探す。

 死霊使い、違う魔法を使った様子はない。

 オーガゾンビ? 可能性は低そうだが。

 蒼白の少女、まさかこの子か!?


 「綺麗なアンデットだな……魔法を使えるのか?」

 「ぼやぼや出来るのか!」


 その間にも死霊使いは《死の弾丸(デスバレット)》を放ち、白蛇を追い立てる。

 一発が被弾すると、蛇竜の鱗を弾き飛ばした。

 直撃すれば骨まで貫通しそうだな、と顔を蒼白にした。


 「クッ! これならどうよ!」


 ジュンイチは舞うように回避しながら、毒液を飛ばす。

 アンデットでも全て溶かす危険な毒だ。

 だがそれもやはり魔法の障壁が弾いてしまう。


 「クソッ! 明確に役割が決まっているのか!」


 死霊使いが攻撃し、綺麗なアンデット少女が魔法で援護する。

 皮肉だ、敵の戦術はテレビゲーム等で言うまるで勇者パーティみたいな戦い方をしてくるか。

 だとしたらどういう状況で勇者パーティは敗北しやすい?


 「なら先ずこっちから倒す!」


 知識を総動員してでた対策は時に単純明快、ジュンイチが選んだのは援護する少女アンデットである。


 「《天辰剣(あまたつつるぎ)》! 手加減する余裕はねえ!」


 魔法の障壁で援護する少女アンデットの頭上に、稲光が放たれる。

 雷の剣は無防備な少女に直撃すると、少女は吹き飛んだ。


 「よしこのまま――」


 このまま押し切れば勝てる、そう思ったのだが。


 「アリシア!? 貴様簡単に死ねると思うなーッ!!!」


 突然死霊使いが激昂する。

 今までにない気迫、ジュンイチはたじろいた。


 「な、なんだ突然……こいつは一体?」

 「おおおおおっ! くたばれぇぇぇ!」


 死霊使いは頭上に巨大な闇の球体を創り出した。

 そこからはまるで負の念が凝縮されたような悍ましさがある。

 そしてそれを天界から見守っていた蛇神は突然テレパシーを送ってきた。


 『駄目だ! その攻撃は絶対にくらうな!』

 「蛇神様!? それって」

 『兎に角! 全力で空へ退避しろ! これは警告だ!』


 ジュンイチはもはや迷うことなく飛び上がる。

 だが死霊使いはあの白蛇を見逃すことはなかった。


 「逃がさん……貴様だけは! 滅びろ全てを無に返して! 《破滅の光(デスフレア)》!」


 濃縮された闇が飛翔するジュンイチに向かって放たれた。

 光の翼を広げ、デタラメに飛行して的を絞らせないよう努めるが。


 「ぬ、いかん馬鹿弟子、それでは回避できんぞ!」

 「もう遅い! 弾けろ!」


 首だけリッチクイーンの警告も、ジュンイチには届かない。

 死霊使いはジュンイチを掴(つか)むように握り込むと、闇は爆縮、そして一瞬で空を闇黒で染め上げた。


 「アアアアアアアアアッ!?!?!?」


 闇は一瞬でジュンイチを飲み込む。

 痛みはない、だが悍ましい負の念がジュンイチの魂を蝕んだ。

 死だ、圧倒的な死が、何もかもを飲み込んでいく。

 太陽が喰らわれる、人も魔物も関係なく、全てが等しく滅びる世界。

 それを一瞬で幻視したジュンイチは発狂したように叫ぶと同時、事切れて墜落してしまう。


 「来るなくるなあああああああああああ――ぁ」


 黒い雨がパイソーの街に降り注ぐ。

 死霊使いは両手を広げ、空を仰いで嘲笑った。


 「アリシア、お前を傷つける奴はもういない、アッハッハ! このままアリシアを虐げる世界を滅ぼそう!」

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