第119話 刮目せよオーガと巨狼の戦
対アンデット軍団迎撃戦、パイソー北東部から開かれた戦端はベヒーモスの参戦もあり、一先ず勝利した。
しかし同時期南方よりアンデット軍団が出現す。
白蛇は急遽こちらへと飛翔していくと、スケルトンにゾンビと、なんでもござれの混成部隊を目撃する。
アンデット軍団が目指しているのはやはり……!
「狙いはパイソーか! やらせねえ! 喰らえ《エーテルショット》!」
攻撃力は低いが、強烈な面制圧を誇る光子弾の雨霰、アンデット軍団には回避という言葉はなく、無数のアンデットが崩れ落ちた。
だが滅びゆくアンデットをも踏み越え、終わりの見えないアンデットの行軍が続いていた。
「っ……嘘みたいだよな、これが戦争か?」
思わず恐れ戦く、無機質なアンデットの侵攻は、さながら無人の荒野を行軍する軍靴。
倒しても倒しても無限を思わせる、それはリュウイチの精神をただ無情に削った。
「駄目だ駄目だっ! やるしかない! 《天辰剣》!」
ガガーン! 強烈な雷が龍の剣となって、アンデットを爆砕する。
彼はただ只管天辰剣を振り下ろし、アンデットの侵攻を少しでも食い止めた。
だが無限に戦える訳ではない、戦えば戦うほど疲労は蓄積していく、持久戦は不利か。
「どうなってんだよ……敵の数、全然減らねぇ」
流石に苦笑する、だが心が半分諦めかけたその時、後方より鬨の声が上がった。
「うおおおおお! オーガごときに遅れを取るな巨狼よー!」
「オーガの戦いご照覧あれー!」
巨狼族とオーガ族の連合軍だ。
バルガスとオウカの姿もある。
オウカは真紅の鎧を纏い、刀を振り上げ突貫した。
「うおおおお! リュウイチ様、ここは俺にお任せを!」
オウカは最前線のスケルトンを一刀両断、その一撃は後方まで衝撃波が飛び、アンデットたちが跳ね上がる。
それを見たリュウイチは蛇の目を丸くした。
そのままなだれ込むオーガ軍団、アンデットはまるで壊れた人形のようにしっちゃかめっちゃか飛んでいく。
「うっそだろおい、これが最強の種族オーガかよ」
まるで鎧袖一触とでも言うように、凄まじい速度で前線を圧倒した。
そしてそれに負けていないのが巨狼だ、バルガスが咆哮を上げると、巨狼たちも同様に咆哮を上げる。
彼らは皆狼の姿に変化すると、アンデット軍団を包囲し、真横から蹴散らしていく。
こちらはこちらで圧倒的な体格と連携力で凄まじい戦果をあげていく。
改めて巨狼の恐ろしさは、その優れた統率力だろう。
さながら狼の狩り、ただしサイズは象並みだが。
「ハハッ、とんでもないなお前ら!」
白蛇は喝采をあげる、頼もしすぎる仲間達に感謝感激であった。
そして最高の戦場を用意してもらえたオウカもまた、リュウイチの期待へと応えた。
「うおおおお! 我が王リュウイチ様に忠誠を見せる時! くたばれ腐れゾンビ共ーっ!」
ズガァァン!! 地面が爆砕し、木々が倒れてゆく。
リュウイチは生前、なんかこういう無双系のゲーム遊んだなーと、懐かしくなる。
だがオーガの活躍が気に食わない巨狼バルガスは、爪に牙を用い、アンデットを蹴散らした。
「かかかっ! オウカよ、どっちが多く狩れるか勝負するか!?」
「むぅ! バルガス殿、我々は遊んでいるのではないのですよ!」
「堅いことを言うな! 戦場こそ血湧き肉躍るであろうが!」
老練たるバルガスも、戦場に活気づく。
このまま押せ押せでいけばいいが……。
「む! バルガス殿!」
オウカは突然バルガスを庇うように向かう、直後森の奥で何かが光った。
オウカは心眼で見切り、飛来する鉄の矢を弾き飛ばした。
「矢、だとぉ?」
バルガスは目を細める。
アンデット軍団の後方に弓矢を構えるスケルトンアーチャーが確認できた。
更にその奥、ゾンビホースに跨がるゾンビランサー。
不死の騎兵隊が、狙いを定め突貫してくる。
「やべぇ! なんとかしないと!」
「心配するな王! 巨狼の出番だ!」
巨狼軍は怯まず真正面からゾンビ騎兵に突っ込む。
ゾンビ騎兵は馬上槍で巨狼をぶつける……が。
すかさず獣人に変化し、馬上槍を受け止めると、そのまま投げ飛ばしていく。
「後方のアーチャーを仕留める! 俺に続けぇ!」
隊列が乱れた、オウカは巨狼が生み出した隙を縫い、アーチャー軍団に肉薄する。
「よしよしっ、これならこっちも勝てるぞ」
リュウイチは空から戦況を俯瞰しながら、勝利を確信する。
もう一踏ん張り、リュウイチも俄然やる気が出る……だが。
「ぐわああああっ!」
突然、前線のオーガ達が宙を舞った。
何事か、巨狼が突撃するが、その巨狼までもがふっ飛ばされる。
「ぐううう! こ、こいつはまさか……!」
バルガスが呻く、戦場に現れたのは翼の無いスケルトンドレイクであった。
騎竜とも呼ばれるドラゴンの中型種、だが中型といえど巨狼をも上回る巨体。
まさに怪物、正真正銘の怪獣に、リュウイチは身震いする。
「なななな……あんな化け物までいるのかよ!?」
リュウイチの悲鳴、オウカは刀を構え身構える。
その隣にはバルガス、バルガスは口から血を吐いた。
「後ろに後退した方がいいんじゃないですか?」
「カカカッ、馬鹿を言え、口を切っただけよ、それよりこれはまぁ大物じゃのう」
さしものバルガスも、ドレイクを狩った経験はない。
騎竜といえど、簡単には手懐けられない竜の一種、しかし手懐けられれば、万の軍団にも匹敵すると言われる強力なチャリオットになる程だ。
「たしかオーガも一人千兵と言われておったな」
「誇張表現ですよ、もっとも俺は一人万兵を目指してますけどね!」




