第120話 スケルトンドレイク
スケルトンドレイクが暴れると、密林の木々はまるで積み木の如く崩れてゆく。
巨体が自慢の巨狼も、膂力自慢のオーガでさえ、スケルトンドレイクの猛攻を防ぐことは出来ない。
「クソッ! このままじゃ全滅しちまう! こうなったら俺が!」
白蛇リュウイチはたまらず自身を盾にしてでも、スケルトンドレイクの猛攻を防ごうと飛び込んでいく。
その際、態勢を立て直す為に連合軍を後退させようとするが。
「オウカ、バルガス! 俺がドレイクを足止めする! だから一旦後退しろ!」
正直言って、リュウイチにはスケルトンドレイクを止める手立てはない。
痛みを持たない陸上竜種の暴威、それは容易にちっぽけな蛇竜を飲み込んでしまうだろう。
だが、それでもパイソーへの進軍は遅らせてみせる。
確固たる決意は、恐怖を勇気に変える。
リュウイチは吼えた、ちっぽけな勇者の咆哮のように。
「うおおおおおお! やらせねぇぞお!」
スケルトンドレイクはこのちっぽけな蛇竜を、なんだと思っただろう。
生きていればその蛇竜の威を知れたかもしれないが、今は思考さえ奪われ、殺戮マシンのように蛇竜に襲いかかった。
だが――リュウイチが死の覚悟を決めた刹那、白刃が舞った。
「はあああ! オーガを舐めるなよ!」
オウカだ、後退を命令したにも関わらず、スケルトンドレイクに斬りかかる。
「オウカ!? 後退したんじゃ!?」
「申し訳ありません! ですが主君を矢面に立てられる教育は受けちゃいねえんですよ!」
カン、キン、カァン! 並の鋼よりも強固な骨格を持つスケルトンドレイクを相手に、オウカは巧みに刀でいなし、華麗に打ち合う。
リュウイチは涙ぐみそうになる、オウカの心意気は受け止めねば。
「カカカ! お前一人に格好良い真似はさせんぞ!」
そしてまた、スケルトンドレイクの頭上から巨狼が飛びかかる。
バルガスもまた、闘志を剥き出しにし、スケルトンドレイクの背に跨り、頚椎を殴りぬいた!
スケルトンドレイクは身体をくの字に曲げ、バルガスの一撃にまるで悶絶するかのようだ。
しかしバルガスが舌打ちするのは、ドレイクのありえない硬さであった。
「チィ! 一撃で粉砕するつもりだったのだがな!」
「無茶はよせバルガス! 怪我しているだろうが!」
巨体が災いし、頑強だが被弾の多いバルガスは、灰色の毛並みを血で怪我し、口元は血で酷く汚れている。
巨狼としてはもう若くないのだ、無茶は止して欲しいが、バルガスは「カカカ」と歓喜する。
「怪我? むしろ興奮し滾ろう! ワシはバルガス! 最強の戦士だーっ!」
バルガスは両手を振り上げると、渾身のハンマーナックル!
凄まじい衝撃がスケルトンドレイクを襲う。
スケルトンドレイクが地に伏せると、今度はオウカが刀を水平に構え。
「はぁぁぁ、秘剣を受けよ! 《鬼平斬》!!」
秘剣と呼ばれる水平斬り、それは高度な剣技でありスケルトンドレイクを正確に切断する。
所詮弱点の剥き出しのスケルトンでは竜の本質は引き出せないというように、スケルトンドレイクは輪切りされる。
「ふぅぅ……我が剣に断てぬ物なし!」
まるで、決まったと確信したか、残心を決めるオウカ。
だがバラバラになったスケルトンドレイクを足蹴にするバルガスが猛抗議した。
「おいこらオウカ! ワシがコイツの動きを封じたから、お前が決められたのだぞ!」
「ええ、激しく動くスケルトンドレイクには、必殺剣は当てられません、まだまだ未熟なままです」
豪快で剛毅なバルガスに、冷静だが熱いものを持つオウカは、絶妙なバランスであった。
どちらかだけではこの強敵には勝てない、この二人が絶妙に力を合わせた結果勝利したのだ。
最もリュウイチからすれば命令無視してやりたい放題しただけなんだが。
「おい、オウカ、それとバルガスも!」
「はっ、はい我が王!」
「イエス、ボス」
少しだけ威圧するように召集すると、二人は素早くリュウイチの前に出た。
「俺の命令はなんだったかな、うん?」
「後退して態勢を立て直せですっ!」
幸いと言おうか部隊の大半はすでに街へと後退している。
アンデット軍団の総数も分からないまま、無駄に兵士達を損耗させる訳にはいかない。
そ・れ・な・の、に! こいつらときたら命令無視して勝てるか分からないスケルトンドレイクにぶつかりに行って! リュウイチは嬉しくて、心強くて、泣くしかないじゃないか!
「いいか命令無視はこれっきりにしてくれ! いいな!?」
「了解しましたっ!」
「カカカ、善処しようボス」
ともあれスケルトンドレイクを最後に南方方面からの敵進軍は途切れた。
リュウイチは一旦街へ戻って、状況の確認に向かおうとする、が。
カタカタカタ……!
「うん……え?」
リュウイチは振り返ると、蛇肌を青褪める。
スケルトンドレイクはまだくたばっちゃいない。
バラバラの全身骨格が動き出すと、それは本来とはありえない姿に組み直される。
スケルトンドレイクは今や二足歩行で立ち、巨大な竜牙兵とでも呼ぶべき恐るべき戦士へと変貌したのだ!
「だ、だだだ、第二形態!?!?!?」
よくある倒したと思ったら、第二形態でより強くなるRPGゲームのボス。
まさかそれが目の前に立つ、その恐怖は元々怯懦なリュウイチをさらに戦慄かせた。
「ククク、カカカ! 面白い! まだワシを愉しませるか!」
「リュウイチ様、お下がりください!」
なおも快哉を上げるバルガス、油断なくオウカは構えた。
リュウイチはどうしていいか分からず愚図つくが、それでも逃げちゃ駄目だと、自分に発破をかける。
「いいや、やるぞ! 俺達三人で街を護るんだっ!」
竜骨戦士は骨剣を構え、咆哮を上げる。
圧倒的暴威が三人を戦慄させる。




