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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第九章

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74 謎の動物の正体①

「リゼさん、それはいけませんわ」


 久しぶりに会ったイコル様は可愛らしい顔を歪めて、きっぱりと言った。

 何が駄目かと言うと、ルカ様と先日、キスをしようとしたことについてだった。


 今日はノルテッド辺境伯領にイコル様とパルサ様が遊びに来ていて、明日から国境を越えて、レンジロ公爵領に向かう。


 家族旅行がメインのため、パルサ様たちに会うのは、今日とレンジロ公爵領での2日間の予定だ。


 私とイコル様はカフェのテラス席でお茶を飲みながら話をしていた。

 とても繁盛しているお店で、周りにはたくさんの人が談笑していて活気があり、店内もテラス席も満席だった。


 男性二人がいると落ち着いて話ができないと言って、イコル様が追い出そうとしたため、ルカ様とパルサ様は二人で武器屋に行ってしまった。


 でも、そのほうが女子トークは盛り上がるので有り難いのは確かでもある。


「駄目でしょうか」

「駄目ですわね。両思いなのかもしれませんが、ルカ様から好きだとか告白はされましたの? もしくは恋人になってほしいなどのお言葉はありましたか?」

「はっきりとした言葉はないです」

「ルカ様のことですから、言ったつもりでいる可能性もありますわね。それに婚約者なんですから、キスくらいは良いのかもしれませんが、都合の良い女にはならないでくださいませね」

「……都合の良い女、ですか?」

「ええ。ルカ様はそういう方ではないと信じていますけれど、女性を弄ぶ方もいらっしゃいますからね」


 口に出してみると、ルカ様に失礼だと思ったのか、イコル様が謝ってくる。


「ごめんなさい。失礼な発言でしたわ」

「謝らないでください。イコル様は私のことを思って言ってくださったのだとわかっていますから。もし、どうしても気になるようでしたら、ルカ様に謝ってください」

「ありがとうございます、リゼさん。ルカ様にはあとで謝りますわ」


 イコル様はホッとしたような顔になったあと、話を戻す。


「リゼさんはルカ様に告白する、もしくはされなくて良いんですの?」

「もう、思いは伝わっていますし、私は何度か勢いで言ってしまったこともあります」

「まあ、そうなんですね!」


 イコル様はお茶を一口飲んで、花柄のソーサーに同じ柄のカップを戻して眉根を寄せる。


「それなら余計にルカ様もリゼさんに告白すべきですわ。もしくは、リゼさんに返事をすべきです」

「私が答えを求めていませんから」


 ルカ様には隠し事をしているから、正直に全てを話してほしいとは言えない。

 ルフラン様にも待ってあげてと言われているもの。


「私たちは私たちのペースでいくつもりです」


 微笑むと、イコル様はしゅんと肩を落とした。

 

 そういえば、イコル様、もしくはパルサ様はミノール様が動物に変身できることは知っているのかしら。


 ……聞きたいけど聞けない。

 秘密を共有することは駄目じゃないみたいだし、イコル様たちが知っているのなら話をしたいけれど、どうやって話を持っていったら良いのかしら。


 本人を目の前にしないと話題に出しにくいわ。


「リゼさん、余計なことを言ってしまったのなら、ごめんなさい。リゼさんとルカ様のことなんだもの。私がどうこう言うのもおかしいですわよね」

「いいえ。何度も言いますが、イコル様が私のために言ってくださっているということはわかりますから」


 慌てて首を横に振った時、イコル様が動きを止めた。


「……イコル様、どうかされましたか?」

「面倒なのが来ましたわ」


 イコル様が目を向けている方向を見ると、テラス席から見える庭園に動物がいるのが見えた。


 見たこともない動物で、褐色の毛を持ち、大きな黒い目と鼻を持っている。

 ラビ様がウサギ化したくらいの大きさで、後ろ足二本で立ち上がっているのだけれど、足が短いのか足の先しか見えない。


 近くの席の人たちが「何かしら、あの動物」と騒ぎ始めると、謎の動物は私たちのところに近寄ってきた。


「リゼさん。この動物はマーモットという動物の姿をしていますが、本物のマーモットではありません」


 イコル様は立ち上がって私の横に立ち耳打ちすると、マーモットに目を向ける。


「何の用事かは知りませんが、とりあえず外に出ましょう」


 すると、マーモットは顔を縦に振った。

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