学祭の異変
人ならば許される善がある…
人ならば受けられる罰がある…
人でなければ許されないことがあるのか…
暗い場所に落ちた二人と霊学部、彼らは何を考えるのか…
清子はコート服の真琴と暗がりの中、出口を探していた…
「くっそ、出れねえか。まんまと罠にはまったか…いや、罠などアイツらが仕掛けるわけがないし…」
真琴がそう言いながらウロウロしていると清子が言う。
「あの、華原さん?…これって…」
真琴が尋ねる。
「どうした?何か見つけたのか?…ってこりゃめんどくさそうだな…」
清子が見つけたのはマンホールのようなもの、暗がりでよく見えなかったが清子がスマホのライトを使って発見したのだ、中を覗くと梯子があり、下へ行けそうだ。
「仕方ないな、おい清子…だったか?とりあえず先に行け、後で落っこちてこられても困…」
すると清子が言う。
「華原さんってそう言って落ちても安全なようにするんですか?やっぱり悪い人なんですね…」
真琴は言う。
「…分かったよ、お前が先に行かないなら俺が先に行く、絶対に落ちてくるなよ」
そう言うと真琴は先に、そして次に清子が梯子を降りていった。
10分ほど降りただろうか…おそらく学校の地下に着いたみたいだ。
「まったく…明かりひとつないな…」
すると清子が言う。
「もしよければライトつけましょうか?」
真琴が断る。
「いや、いい。一応俺は暗い中を動くことが得意なほうだし…」
清子が笑って言う。
「くすくす、それって兄さんと一緒じゃない。やっぱり華原さんも暗い部屋の中が落ち着くんですね」
真琴は首を傾げて言う。
「俺は仕方ないから暗い部屋の中にいたんだが…まぁいい、行くぞ。」
未理恵は頼まれたメニューの料理を作っていた。
「江利奈、忙しいですわね…」
少し額に汗を見せた未理恵がそう言うと最終工程をやっている江利奈が答える。
「そりゃそうよ、お嬢様だと分からないと思うけど、料理ってする方が千倍疲れるのよ」
するとレジを涼に変わってもらった優美が戻ってくる。
「あ、二人共お疲れー…危なかったよー、危うく違算出しちゃうところでしたー」
すると江利奈が言う。
「あ、お疲れ、違算ってアンタ…まぁ何も問題なかったようで安心したわ」
未理恵が尋ねる。
「と言う事はもうお客さんは一段落したんですか?」
優美が答える。
「あ、はい。先程華原君のお母さんと永子ちゃんが体育館へ向かったのが最後で。あ、でももう一組いますね、えと…蒼井さんだったっけ…なんだか妹さんがトイレから戻るのが遅いと…」
すると未理恵は立ち上がり言う。
「江利奈?まだ時間は大丈夫ですよね?」
江利奈が答える。
「あと2時間くらいしたら体育館に行くけどまだ時間あるよ。」
未理恵が指示する。
「少し蒼井さんと話したいこともあるので行ってきます。調理の方は任せましたよ。」
未理恵はそう言うと清武の方へ向かった。
「あれ?お嬢様は?」
するとレジにいるはずの涼が来る。
「あんた何やってるのよ!…ってあー…レジか…今お客さんいないもんねー」
江利奈がそう言うと優美が言う。
「部長さんならさっき蒼井清武さんの方にお話があるとかどうとかでさっきあっち行きましたけど…あれ?華原くんは?」
涼が答える。
「あ、それなんだけどあいつ多分どっかでサボってる。やけに持ち場に帰ってくるのが遅い。それを言おうとしたんだけどまぁいいや。じゃあ俺は一応レジに入っとくわ…んじゃな」
そう言うと涼は持ち場に戻った。
「どーせあいつトイレかどっかでゲームでもしてるんだわ。まぁいいけど、」
江利奈はそう言うと材料管理を始めた。
二人は暗がりの通路を歩いていた。手入れが行き届いていないのかねずみがたまに通っていくのが見える。
「おい、お前俺が怖くないのか?」
真琴がそう言うと清子は答える。
「そりゃぁ怖いですけど…なんというかいつものめんどくさそうな華原さんは最近は少しですけど慣れました」
すると真琴が言う。
「俺はな、生きるためには人はどう生きたっていいんだと思うんだよ…変な話をすると思うがまぁ聞け、例えば今お前が俺を殺さなけりゃ先に進めないとする、ならどうする?」
清子は答える。
「突拍子すぎる話だけど…私ならどうにか二人で抜け出す方法を探しますね…」
すると真琴は少し笑って答える。
「ッフ…そんな選択肢を与えた覚えはないぞ、というかそれだと先には進めないだろう、まったく…最近の学生は質問をちゃんと聞かないと思っていたが本当だったとはな。」
清子は言う。
「そこまで言わなくてもいいじゃないですか…というか、それじゃあその質問自体がおかしいじゃないですか。だって先に進むにはあなたを殺す以外選択肢がないんだから…」
すると真琴は上を見て言う。
「そうだな、まぁこれはあくまで俺の質問の話だ、実際どの世界でもお前はこんな場面に遭遇しないしするわけもないからな。というか、現実ならお前がさっき言った答えを試そうとするだろう、今の俺もな…」
清子は答える。
「当たり前です、とてつもない理由がない限り人ならそうします」
真琴が尋ねる。
「人じゃなければ?」
清子は少し声を小さくして言う。
「え、えと…それはどうゆう意味?」
真琴は言う。
「そうだな、例えるなら、お前が人ではない特別な存在だったとしたらだ、そうだな…この場合は時間を巻き戻せる異能があったらどうだ?」
清子は答える。
「そんなの決まってるじゃないですか、そうならないように何度でもくり返すますよ。」
真琴は尋ねる。
「変わらなければ?」
清子が少し苛立ちを見せて言う。
「さっきから質問ばっかりして、少しは自分で考えた答えを言ってくれませんか?」
真琴はそれを聞くと腕を組んで言う。
「俺の場合か、俺なら変わらなければまた繰り返すな、人間ってのはな…案外起動源ってのがあってつまりは目的がある限り生きられるんだよ、よっぽどでない限りな」
清子は目を細くして言う。
「さっき自分で人じゃ無ければって言ったじゃん」
真琴は少し怒って言う。
「う、うるせえ!俺の例えが悪かっただけだ!気にするな!」
精霊喫茶のメニューを作っている未理恵は時計を見る。
「あら、江利奈?そろそろ時間ですよ。」
江利奈は答える。
「え?マジ?あ、ホントだ…じゃ行ってくる。そうだ、一応途中で華原見たら電話するからねー香崎さん!未理恵のこと任せたよー」
そう言うと江利奈は精霊喫茶を後にした。
「さて、俊?今の状態は?」
未理恵がそう尋ねると俊が説明する。
「もうすぐ江利奈様のステージがあるのでお客様は少なくなっています、おそらくあと二分で全席が空くかと、それと華原様はトイレ中、いえ、ゲーム中かもしれませんね」
「ヘックシュン!!!」
真琴が大きなくしゃみをする。
「大丈夫ですか?華原さん?」
清子が尋ねると真琴が答える。
「誰かが噂してやがる…のか?」
未理恵が言う。
「続けてください」
すると俊が続ける。
「久留様は今レジの違算チェックをしておられます、香崎様はメニューの整理中、でございます。あ、そういえば一つ…」
すると清武が遮るように言う。
「妹がやけにトイレから遅いんですが様子を見に行ってやってくれませんか?」
未理恵は言う。
「分かりました、あなたの妹さんは霊紙がないとは言え重要な存在です、それに店も空いてきたのでちょうどいいですし探しに行きましょう、丁度こちらにも探し人がいるんです」
清武は言う。
「ありがとうございます!ではよろしくお願いします。」
すると俊が言う。
「万が一黒い華原様と接触するかもしれません、私も同行させてもらいます。」
未理恵、俊、清武の三人はトイレを捜索し始めた。
そして10分ぐらい探し回ったあと、精霊喫茶前に戻ってきた。
「どこにも清子さんはいませんね…」
未理恵がそう言うと清武が膝を落として言う。
「じゃあやっぱり清子は…」
すると腕を組んで考え込んでいた俊が言う。
「あの、推測ですがこの階の下のトイレの近くにあった暗い部屋、誰かが入った形跡がありました、そして地面が崩落していました。かなり昔の倉庫だったみたいですが人が入ったなら下に落ちているかもしれません。」
未理恵は腕を組んで言う。
「確かあの倉庫の下はかなり前の時代の煙突でしたね、落ちたのならそこから下に向かうと思われます。」
俊は言う。
「確か1番下の階は今は使われていない防空壕、出るにはそこを進み体育館裏の倉庫下につながっています。もし清子様が出ようとするならばそこを通る以外出口はありません」
すると清武は言う。
「じゃあそこから探しに行けば見つかるかも…」
未理恵が少し残念そうな顔で言う。
「いえ、あくまで推測です、いない可能性の方が高いと思われます、ですが何もしないよりはいいかと思いますが…」
清武は答える。
「それでもいい、俺はあいつにあんな術を発動させた…責任は重大だ…だから可能性が薄くとも、俺は残酷な真実に向き合っていかなければいけない」
すると俊は別人のような顔をして言う。
「その心意気はいいですが本当にそう思っていますか?あなたは本当に残酷な仕打ちを受けてでも向き合わなければいけないと本気で思っていますか?私は以前、あなたのような心意気の人間が本当の残酷な真実に直面したとき、壊れてしまったのを覚えています、あなたはもし妹さんがあなたのせいで死んだとしても受け入れられますか?壊れずにその真実と向き合えますか?…申し訳ございません、この霧崎俊、過去にあったことを思い出すとつい熱くなってしまいますので…」
すると清武はまっすぐ俊の目を見て答える。
「…はい!俺は覚悟は出来ています!何の取り柄もないんだけど…俺はこのぐらいしかしてやれないから」
すると俊は言う。
「おや、そのような覚悟があってニートですか…ぷっくくく、おかしい方もいるようですね。そうそう、それと先程…」
「蒼井清子、お前は霊紙を使いたいか?それとも使いたくないか?」
真琴が突然そう尋ねる。
「突然なんなんですか?私はその件で傷ついてるんです。あまり…」
清子がそう言うと真琴が遮るように言う。
「大事なことだ、今回に限ってはイレギュラーが多過ぎる、もしかするとあいつが救われるかもしれないが可能性が高いとは思えない、それに俺は今は落ち着いているが直にまた…」
すると清子が怒って遮る。
「私はまだ混乱してるんです!あんたと同じ顔のあいつにそそのかされて!もういいですか?この話は!」
真琴は少し間を開けると言う。
「…まぁ、今すぐにとは言わない、ほら、恐らくあそこが出口だ」
すると江利奈の歌声が聞こえる。そういえば今は江利奈の特別ステージの時間だ…おそらく体育館に近いのだろう。
「ふーやっと帰れるのかー…」
そう清子が言うと真琴が言う。
「長かったがやっと帰れるのか…全く、面倒ばっかだったな…」
二人は少し短い梯子を登って一番上の天井、いや、天井ではなく体育館倉庫の床だ。とにかくそこから這い出てきた。
「そういえばここは華原さんと最初に会った場所ですね…あの時は驚かせてすみませんでした」
すると真琴は首を傾げる。
「…?俺がお前に最初に会ったのは…」
清子はそんな真琴を無視して扉を開ける。
…ギギギゴゴ…
するとそこには…
「あ、蒼井清子さん!?」
未理恵がつい驚いた顔をして清子を見る。
清子の前には未理恵、俊、兄の清武、そして…
「ったく…なんで体育館トイレまで見に来るんだよ…お前らは…」
清子は慌てて隣を振り向く、しかし、そこには誰もいなかった。そして尋ねる。
「あの、さっきまで華原さんと私は…」
清子の目の前にいた4人目は紛れもなく黒い真琴と同じような白いコートを着てダルそうにしている華原真琴だった。
「?俺はさっきまでソシャゲやってたんだがな…」
真琴は体育館の男子トイレでスマホをいじっていた。
「くっそーまたかよ!この扉の男ラスボスすぎんだろ…ステもスキルもありえねーし…これじゃあ何コンするか…」
すると…
…コツ…コツ…
足音が聞こえたため真琴は息を潜める。
「…やはり、男子トイレに清子さんがいる訳ありませんね。おや?」
俊だ、探し相手は違うようだが今の彼は見つかると相当やばい。その一瞬、あることに気がつく。
(そうだ、ここはトイレだ。今のうちに携帯をしまって用足してるふりをすれば…)
…パン!
「おっと!痛!」
真琴のスマホがゲーム画面のまま落ちる。勿論真琴が落としたわけではない、意図的に誰かに落とされたのだ、よくみると真琴の手に軽い刺激を与えた執事のボタンが落ちていた。
「おや?こんなところに携帯が?これは華原様の携帯ではありませんか!それにこの画面は…ソシャゲのカオスゲート?華原様、そこにおられますか?」
俊がわざとそうにそう言う。真琴の顔には『もうダメだ』の一文字が浮かんでいた。
「えと…その…」
真琴が戸惑っていると俊が言う。
「早くしてくださらないとこのスマホを再起不能にして、あなたを今から新世界へ導きますよ?そうですね…今流行りの『やらないか?』と」
真琴は瞬間理解する。今すぐ出ないと死ぬと。
…バン!
勢いよく扉を開けると…
「冗談ですよ華原様、では行きましょうか。」
真琴は悲しそうな顔をして言う。
「お…俺はただゲームを…」
すると俊は冷酷に言う。
「今の件はお嬢様もご存知ですので、いえ、今私から情報を送ったというべきでしょうか?ぷっくくくく」
真琴は膝をついて悲痛な叫びをあげる。
「うおおおおおおおおおおおおおあああああああああああ!!!!!」
すると俊が言う。
「それと今、人を探していますので楽しいお仕置きはそのあとまでお待ちください。ぷっくくく」
真琴は俊の笑顔を見ると再び…
「うわあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「ということがありました、あ、そうそう。ちなみにお嬢様には今すべて報告しました。ぷっくくく」
俊がそう笑いながら言うと真琴はもう生気のない顔をしていた…
「でもそうなると…あの場所で何かしていたのは…まさかさっきまでのって!?」
清子は慌てて何かされてないか、あいつがいないかを確認する。すると未理恵が尋ねる。
「まさか…先程まで黒い華原さんと…?大丈夫でしたか!?」
すると清子は落ち着いて答える。
「あの…その…黒華原さんの事なんですが…あの人は悪い人ではないと思うんです…」
すると清武が清子に近づいてしずかに抱き寄せる。
「よく頑張ったな、お前は凄いぞ!…でも何故黒いマテリアルは清子に何もしなかったんだ?そこで術を発動すれば早かっただろうに…」
すると未理恵は静かに言う。
「人は生きていますよね?生きる意志、防空壕とは何のためにありましたか?」
すると俊が続ける。
「生きるために作られ、生きる意志が集まった場所では霊力や霊はおろか魔術式や霊能力まで使えなくなります。そして学校は活気に満ちています。ですから周りから霊を寄せつけにくくかつ昔の思いが溜まっていたからではないでしょうか。そういえば黒い華原様は一瞬にして空間を捻じ曲げどこかに消えることが出来ます、それが行えなかったからとりあえず脱出することが目的だったのでしょう…恐らくは脱出後はあなたも連れ去り術を発動させたでしょうが…」
すると未理恵が言う。
「さて、積もる話もあるでしょうが今日は学園祭です。それに江利奈のステージもおそらく次で終わりです。体育館に近いのでせっかくですし見に行きましょう。久留さんと香崎さんと華原さんのお母様と永子ちゃんは既に向かってるみたいですし」
未理恵がそう言うと皆体育館へ向かった。清子も行こうとした時、隣に光る何かを見つける。
「これは…青いダイヤ?」
それは青く光っていて中に何か白い欠片が封じられているような不思議な石。
「おい清子?行くぞ」
清武が呼ぶと清子は焦ったようにして行く。
「待って兄さん!」
「さ^~最後の曲はヱリのデビュー作の『青く光った世界』だよー!今日はゲスト参加で曲も少ないけど我慢してねー♪」
生徒や学園祭に集まった人達が一斉に言う。
『がんばってー\(*⌒0⌒)♪』
曲が始まるとき真琴達もたどり着いていた。
「まぁ、ゲームの中の女子には負けるな、」
すると優美が言う。
「そんなことないよ、ヱリちゃん凄いんだよー」
真琴は悪く行ったがステージに立つ江利奈は輝いて見えていた。
体育館の片隅には黒い真琴が腕を組んでステージを見ていた。
「フン…今日の俺は俺らしくなかったな、もともと俺の目的は繰り返すことだ…何度でも繰り返して記憶を固定しこの世界をすべて理解した神になることだ…すべて理解すれば何にだってなれる、悪魔にでも救世主にでも。俺はあいつを救えなかったがそれでいい、そうでなくてはならない…なぜなら俺は…」
真琴の顔が歪む、片目を閉じ片目を大きく開き江利奈のステージを睨みつける。
『俺は人ではなく悪意そのものなんだから』
江利奈は何かを感じ取って体育館の片隅に一瞬だけ目をやるが何もいなかったのを確認するとすぐに観客の方へ向いてフィニッシュした。
真琴:お久しぶりです皆様ー(棒)
江利奈:ちゃんと言いなさいよクズ!
真琴:ぐっふぁ!いきなり蹴るなBBA!
江利奈:誰がBBAですってぇ?
清武:修羅場だな…
優美:いや、ただの言い争いでしょ…
真琴の母:あら、仲のいい事で安心したわ
俊:そうですね、彼らが楽しそうで何よりです。ぷっくくく
未理恵:誰も止めようとしないところが私たちらしいですわね、くすくす
清子:こいつらダメだ…早く何とかしないと…
黒真琴:では次回は
永子:お前が落とした欠片と12月の期末テストの結果とは…
真琴:次回へ!!!
江利奈:続く!!!!
(バキィ!!)
真琴:ギヤアアアアアアアアアア!!!!




