暗雲の予感
夏の雲一つない真っ青な海。
霊学部のメンバーは海で一休みしようとする…
だが暗雲は雲がなくても近づいてくる…
男は黒いロングコートを着て、防波堤の陰に潜むように隠れている…顔は陰に隠れておりやはり見えない。
『さて、じゃあいつもどおり助けるとするか…』
男はそう呟くと自分の手に持っていたキャップ帽を頭に被る。
『毎回毎回、この場所は面倒くさいな…まぁ余興にはちょうどいい…』
男は影から出る…顔はキャップ帽で隠している…
『さて、惨劇の序章を始めよう…ククク…』
男はまるで霧のように姿を消した。
「おやおや?華原様は海は初めてで?」
俊が質問する。真琴は答える。
「オンラインゲームとか、ディスプレイの中の仮想の海なら何度かは戦場やイベントとしてくぐり抜けてきたんだが…まぁ実物は初めてだ…」
俊は首をかしげて質問する。
「成る程…では初めてということですね…おや、華原様は入らないのですか?」
真琴は答える。
「んー…ま、まぁ入るけど…ちょっと緊張しててだな…分かった、先に入るよ」
真琴が足を海につける。俊はまた質問をする。
「如何ですか?華原様。初めての海のご感想は…」
真琴が答える。
「ま、まぁ…プールよりかは波があって…少し冷たい…ぐらいだな。」
俊はそれを聞くと自分もと海に足をつける。
「そうですね…ぷくく…初めての海の感想ですね…では少し深いところまで行ってみましょう。華原様もご一緒にどうぞ」
すると真琴は俊の後を追いながら深い場所まで行こうとする。
「そろそろ腰ぐらいまで水が来てるがそろそろ泳げるんじゃないか?」
すると俊は答える。
「そうでございますね。ではそろそろ少し泳いでみましょう…あ!そういえば…華原様は俗に言う金槌…ではありませんよね?」
真琴は少し怒り口調で答える。
「流石に泳げるわ…てか誰から俺が金槌だと聞いた?」
俊は答える。
「さて?誰だったか…私、少々忘れっぽいので誰に言われたかは覚えていませんよ」
そう言うと俊は海を泳ぎ始める。すると真琴が真面目な顔をして質問する。
「お前…疲れやしないのか?あんなお嬢様の相手ばかりしていつも他人に頭を下げて…」
すると俊は少し苦笑しながら答える。
「ぷっくくく…お嬢様の相手はもちろん疲れますとも…ですがそれに見合うほどの楽しみもまた、そこにあるのです。霊学部や学校だって見つけようと思えばすぐに楽しみは見つかるものですよ。」
すると真琴が質問する。
「もしもその楽しみを見つけられなかったらどうする?苦痛しか残らない…そんな毎日なら…」
俊は答える。
「っぷくく…本当は楽しみは見つけるものではないんですよ…私は職務上見つける方が楽なんですが華原様のような方であれば作るのが一番でございます…例えばお嬢様や香崎様のような楽しいことを作り出そうとする過程…そこに楽しみは生まれるのでございます…華原様はもっと見る、ということを意識するより行動をしたほうがよろしいかと私は思います…」
真琴はそれを聞くと成る程というような顔をして答える。
「つまり俺に傍観者は向いてない…というわけだな…」
すると俊は苦笑しながら答える。
「っぷくくく…華原様は傍観者の意味を吐き違えておられませんか?傍観者というのは、何もせず、何にも干渉されず、ただ見ているだけの人のことでございます。華原様は今、私と話をされておりますしお嬢様たちに相手にされています。それのどこが傍観者なのでしょうか?」
それを聞いた真琴は少し空の方を向く。空は雲一つない青空だ。
「それもそうか…少なくとも俺は以前よりはマシってことなんだろうな…まぁ、本心としてはもっとゲームがしたいんだが…悪いな…いきなりこんなしんみりした話をして…」
すると俊が答える。
「いえいえ、幼い頃のお嬢様とよく考え方が似ておられます故、少し懐かしく思えました。私こそ感謝させていただきます。」
すると真琴は首をかしげて質問する。
「幼い頃の杏芽條のお嬢様?何かあったのか?」
すると俊は誤魔化す。
「いえいえ、つまらない話ですのでお気になさらないで結構ですよ。さて、それでは少し泳いでみましょうか。」
真琴と俊は胸の辺りまで水が浸かるぐらいの深さまで行くと真琴は上向きの状態で浮いて俊はまるで特訓をするかのように泳ぎ始めた。
未理恵達は砂浜の日傘のついた場所で日焼け止めを塗り終え、少しくつろいでいた…
「それにしても華原さんのお母さんは美容師か何かだったのかしら?かなり塗るのがお上手でしたので」
未理恵がそう尋ねると真琴の母は答える。
「若い頃は医療の仕事をしててね、看護師やってたの。今は家事ばっかりだけど」
優美は驚いた顔をして発言する。
「看護師!?あれって結構点数いったり難しいんじゃないんですか!?」
真琴の母は答える。
「まぁ、そうね、仕事に就くのなら看護師に限らず苦痛や難しさがあるわよ。その中で自分のなりたいものになればいいの。だから今はまだ焦らなくても大丈夫よ。」
江利奈はそれを聞くと呟く。
「まぁ、私も好きだからアイドルやってるっていうのもあるけど結構辛いものもあるからね。その意見には大いに共感できるわ」
すると永子が優美の膝を軽く二回叩いて言う。
「そろそろ…海行こ…」
優美はそれを見ると発言する。
「あの~部長さん?そろそろ永子ちゃんが海に行きたいそうなので行きませんか?」
すると未理恵は永子の方を見て答える。
「そうですね、難しい話は永子ちゃんには分からないようですしそろそろ行きましょう。」
未理恵はそう言うと永子を抱きかかえ、海へ向かう。江利奈と優美もあとに続く。
「あれ?お母さんは来ないんですか?」
優美が真琴の母にそう質問する。すると真琴の母は答える。
「母さんは荷物番してるから行っててちょうだい。」
すると未理恵が無線機のようなものを取り出し指示する。
「私の選んだ場所の荷物番をよろしく。ちゃんと守るんですよ」
すると黒服を着たサングラスのガードマンが3人、荷物の周りに集まってくる。
「お母さん?荷物番はこれで大丈夫ですので行きませんか?」
未理恵がそう言うと真琴の母は答える。
「そ、そう…それじゃあ行きますか。」
真琴の母はそう言うと立ち上がり、未理恵達のあとについていった。
アルカはもはや休んでる場合ではないという顔をしていた。
「さて、どうするかだが…ここ近辺は調べさせてあるし…ん?」
すると聞き覚えのある声がする。いや、恐れている声と言った方が適切であったと思う。
「あ…あれは杏芽條未理恵!やはりここにいたか…今面倒事を起こすのはあまりいただけないな…」
するとアルカは未理恵と一瞬目が合った。
(まずい…正体がバレたか…)
「あれ?あれって赤田先生じゃないですか!」
優美がアルカの方を指差し発言する。
「赤田…先生?」
未理恵は首をかしげてそう答える。すると優美が説明する
「この前赴任してきた科学の先生ですよ!なんで来てるんだろう…」
すると江利奈が言う。
「どうせ彼女とイチャコラやりに来たんじゃないの?荷物だっていっぱいあるし」
するとアルカが質問する。
「おや、皆さん。今日は学校ではなかったんですか?」
未理恵が答える。
「いえ、今日は二時間授業でしたのでその後すぐにこちらに来たところです。」
すると真琴の母が頭を下げて言う。
「もしかして真琴達が行ってる学校の先生ですか?いつもお世話になっております。華原真琴の母です。真琴はなにか問題起こしてたりしてないでしょうか?」
するとアルカは答える。
「いえいえ、先生といっても私は科学担当ですのでそこまで真琴さんともお話はしませんよ。ただ、少しあるとすれば授業中にたまに寝ることがある…ですかね?まぁ寝ると隣の席の香崎優美さんがつついて起こしてますけど」
真琴の母は言う。
「申し訳ありません…せっかく授業させていただいているのに…あと優美ちゃん、いつもありがとね、次からは殴ってもいいから♪母親の私が許すから。」
それを聞いた優美は答える。
「分かりました!次からは殴りますね!」
「クシュン!!」
真琴がくしゃみをする。
(誰か噂してやがるな…)
「まぁ、今日はせっかく海に来たんですから楽しんでいってくださいね、真琴さんには帰ってからお説教してあげてください」
アルカがそう言うと真琴の母が答える。
「分かりました。色々とお話ありがとうございます。」
すると未理恵が言う。
「では私達はここで。赤田先生もゆっくりごくつろぎ下さいね。」
未理恵がそう言うと一同は海へ向かっていった。
「ん?杏芽條未理恵が抱いている…あいつは…A-15!?…いや、あの赤い髪と青い目は…脱走したA-15と同じだ…体格も…しかしどうする…杏芽條未理恵の近くにいる以上、俺が直接ってわけにはいかないし…」
アルカは考えていた、すると後ろから声がする。
「アルカさん?大丈夫ですか?」
霧子だった。するとアルカは尋ねる。
「もう海はいいのか?俺より他の奴らはどこだ?」
霧子は答える。
「他の皆さんは今はあっちの方でビーチバレーを楽しんでます。私は少し疲れたので…それより何か思いつめていた顔をしていましたが大丈夫ですか?」
アルカはニヤッとして答える。
「A-15を見つけた。杏芽條未理恵と一緒にいる。」
霧子は一瞬驚いた顔をするが冷静に戻る。
「では、捕獲しますか?」
するとアルカが答える。
「捕獲はNGだ。この状態じゃ危険この上ない。下手すると杏芽條家に陥れられる…」
すると霧子が提案する。
「では変装してはどうでしょうか?例えば別の研究機関を装うのです。」
するとアルカは質問する。
「成程な、それなら俺はどうすればいい?怪しまれるのは困る…そうだ、少し危険かもしれないが私は教師として助けようとするふりをするのはどうだろうか?」
霧子は答える。
「それならいいと思います。では早速捕獲準備に移りたいと思います。」
アルカは言う。
「申し訳ないな…お前の休暇なのに…」
霧子は答える。
「いえいえ、大丈夫ですよ。皆さんには適当に理由をつけておきます。」
アルカはそれを聞くと無線機のようなものを取り出し指示する。
「全員他の研究機関の服装に化けろ!A-15を発見した!!捕獲作戦を決行する。私は助けようとするふりをするがお前たちはすぐに研究所まで秘密ルートで連れ帰ること!以上!!」
すると無線から声が聞こえる。
…了解しました…
…了解…
…分かりました…
…任務遂行いたします…
「では私は怪しまれないようにしておきます。」
霧子はそう言うとバックをもって更衣室へ向かう。
「さて、これで成功するはずだ。私の霊能力の証明…今こそ実現させてやる!」
その頃、未理恵達は海で泳いでいた。
永子は溺れたらいけないので浮き輪に乗って未理恵は自慢の身体力で優雅に泳ぎ優美は真琴の母と泳ぎながら話をして真琴と俊と江利奈も違うところで話をしていた。
「気になってはいたんだがお前と話してる時の杏芽條のお嬢さんってどんな感じなんだ?」
真琴が江利奈にそう質問する。すると江利奈が答える。
「いつも通りよ。まぁ、たまにあんたらと話してるみたいな敬語になるけど」
真琴は少し残念そうな顔をして呟く。
「成る程、俺はあんまり信用がないんだな…まぁ無理もないか」
それを聞いた俊が助言する。
「いえいえ、信用は大いになさっておられますよ、本当に信用がない場合は話等滅多になさらないお方ですので…俗に言うコミュ障、っていうものなのかもしれませんね…最近は少しずつマシにはなってきておりますが」
江利奈が共感したような顔をして言う。
「確かにね。会った時の未理恵は話すらしないような子でね、確か俊以外には心を開かなっかったんだっけ?まぁそのうち私の方から絡んでいって最終的には私のなりたいものを叶えてくれたりもしたわ。」
すると俊が続ける。
「確か一昨年辺りでしたね、江利奈様がアイドルになりたいとおっしゃったのは…まぁ、今も若干の援助ぐらいしかお嬢様はしてないので江利奈様の実力でなったようなものですよ。というより、アイドル業界は努力しなければいくら援助しても駄目ですしそのへんはやはり江里菜様のすごいところであると私個人としては思っております。」
すると真琴が言う。
「ふーんそんな過去が…まぁ、アイドルっつっても所詮は現実のものだし、普通に考えて誰でもなれるんじゃないか?」
すると俊が呆れた顔をして呟く。
「おやおや…華原様、それは地雷ですね…」
「…へ?」
真琴がそう言った時にはもう遅かった。海の中の筈なのに江利奈は大ジャンプをし、真琴の顔面に向かってかかと落としを放ったのだ。
「くらえ!ヱリちゃん落とし!!」
…ドゴッ!バッシャーン!!!
「お前…それただの…かかと落とし…」
真琴は海に沈んだ。
「まったく…私を愚弄するとかこいつどんな神経してるのよ!…そうだ、俊は可愛いと思うわよね?私のこと?」
俊は少し恐怖するがそれを顔には出さず答える。
「はい、アイドルにしてはなかなかの顔立ちであると思いますよ…」
「あの…華原くんって家ではどんな感じなんですか?やっぱりゲームばっかり…ですかね?」
優美が真琴の母にそう質問する。真琴の母は答える。
「そうなの…ずっとゲームばかりやっててたまに手を動かしてないなーっと思ったら深夜に放送したアニメを見てるの…最近は永子ちゃんを自分のゲームに利用し始めてるから怖いものよ…」
優美はそれを聞くと少し驚いた顔をして言う。
「永子ちゃんまで…やっぱり寝るのも遅い…ですよね…」
真琴の母は答える。
「そうなの…最近は3時寝だから体調大丈夫なのか?と思っちゃうのよね…その割永子ちゃんはよく寝るし手伝いもしてくれるし助かってるのにね。」
優美はそれを聞くと永子のことも気になり質問する。
「あの、永子ちゃんはどんな感じですか?」
すると真琴の母は答える。
「とてもいい子よ、毎日午後3時のおやつのいちご大福は絶対用意しないと拗ねるけど…まぁ普段はテレビ見たり家事の手伝いしてくれたりいろんなものに興味深々よ。まぁ、最近は真琴が帰ってくるとすぐに一緒に真琴の部屋に行ってゲームしてるわ。でも真琴がいないときはしないから真琴のようにはならないと安心してるんだけど」
すると優美が質問する。
「へぇ~…永子ちゃんの好みっていちご大福なんだ…意外ですね~」
すると未理恵が声をかけてくる。
「香崎さーん?一緒に泳ぎませんかー?」
すると優美は答える。
「あ、はーい!今行きまーす!あ!お母さんも行きましょう」
優美は真琴の母を連れて未理恵のもとへ向かった。
今は午後5時30分くらい…未理恵達は海で遊んだり砂浜で遊んだりとしたあとなのでかなり疲れた様子で歩いていた…着替えはもう終えてあり、皆最初に着ていた私服だ。
「さて、それでは近くの私の別荘でお泊り会をしましょう!あ、華原さんのお母さんもご一緒にどうぞ」
未理恵がそう言うと真琴の母が答える。
「それじゃあ遠慮なくお世話にならさせていただきますね。」
「こちら所員番号45!目標を確認!」
草の茂みに隠れていたどこかの研究所の格好をした女が無線を使って応答する。
「こちらアルカ・アステント。それではこれより作戦を決行する!」
アルカが無線越しにそう指示すると未理恵達の前にどこかの研究所の服装の人間が9人ほど出てくる。
「何ですか?あなたたち?」
未理恵がそう言うと一番先頭の霧子が言う。
「そちらの赤い髪の女の子に用があるのだけどいいかしら?」
未理恵は答える。
「ダメです…と答えたら?」
霧子は答える。
「力ずくよ…全員突撃!」
霧子がそう指示すると研究所の服装の人間が永子に向かって走っていく。
「俊!永子を守ってください!!」
未理恵が俊に指示する。
「分かりましたお嬢…しまった!」
俊は三方向から攻撃され身動きが取れない状態だった。
すると霧子が永子の腕を掴む。
「さあ!来なさい!」
すると真琴の母が霧子に殴りを入れる。
「あんまり舐めるんじゃないわよ!永子はうちの娘よ!命をかけても守るわ!!」
すると霧子はポケットから黒いものを出し、それを突きつける。
「大人しく少女をこちらに、はやく!!」
するとアルカが来る。
「あなたたち!何をやってるんですか!今すぐ離れなさい!!…ぐわぁ!」
研究所の服装の男にアルカは捕まる。すると聞こえないようにアルカに小声で言う。
「すべて手はず通りです。」
アルカは男の顔を見て少し顔をニヤつかせて小声で呟く。
「よくやった…あとは捕まえるだ…」
未理恵「なんてこと…」
真琴「確かになんてことだ」
未理恵「まさか今回のあとがきが私と華原さんだけだとは思いませんでした」
真琴「作者も疲れたか…しかも今回なんだかんだ言って」
未理恵「たったの6000文字でダウンですからね」
真琴「まぁこんなこと言ってるが本編じゃ今大ピンチなんだけどな」
未理恵「そうですね…あ、そろそろ時間ですよ?」
真琴「分かってる。いきなり現れた謎の研究員たち」
未理恵「彼らが永子ちゃんを狙う訳とは?理由とは?」
真琴「次回へ続く~」




