94 ◎『ボートレース福岡』の舟券師 編 ~ベテラン選手の買い方~
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【あらまし】(舟券師と鉄板レースの話)
いつものように『ボートレース戸田』で顔を合わせた由利と富田。そこで富田は、かつて『ボートレース福岡』の「ほぼレディース戦」で出会った、自称・絶滅危惧種だという「プロの舟券師」との強烈な思い出を語り始める。
「数打ちゃいいってもんじゃない」「配当金は我慢料」――。 毎レース買っては負けてを繰り返す作家の富田に対し、独自の勝負論を淡々と説く舟券師。そんな中、女性5人に男性1人という一癖ある番組の第7レースが始まろうとしていた。インコースや男子選手という「先入観」から鉄板レースだと確信する富田に対し、舟券師が導き出した予想は全く異なるものだった。
素人の直感か、それともプロの眼力か。二人の予想が真っ向から対立するなか、運命のファンファーレが鳴り響く!
【みどころ】
プロが語る「勝負の哲学」: ネット投票全盛の時代に、あえてレース場に足を運び、4日間じっと耐える舟券師のストイックな美学。
軽妙洒脱な掛け合い: 作家ならではの漢字を使ったユーモアや、どこかクスッと笑える。「おでんの食べ方」論争など、ボートレースの枠を超えた二人の小気味よいトーク。
先入観を覆すレースの行方: データの裏に隠された「ベテランの意地」を見抜くプロの眼力に、思わず唸らされる一編です。
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【主な登場人物】
===この物語の主人公===
●富田
立場・職業: 小説家(作家)。
特徴: 漢字の成り立ちにかけたユーモアのある会話を好む。レースが始まると我慢できずに毎レース舟券を買ってしまうタイプ。以前、冬の桐生で大負けして「凍死」しかけた経験がある。
●舟券師
立場・職業: プロの舟券師。
特徴: 自分たちの存在を「絶滅危惧種」と例える。ネット投票ではなくレース場に足を運んで選手を観察するスタイルを徹底している。「配当金は我慢料」という信念を持ち、4日間はレースの流れを静観して5日目以降の勝負に備える独自の理論を持つ。
=== 回想外(現在の時間軸)の登場人物===
●由利
戸田のボートレース場で、いつものように富田と会った人物。富田からボートレース福岡での出来事(回想話)を聞くことになる。
===レースの出走選手(『ほぼレディース戦』)===
【第6レース】
1号艇:保田 実紀 —— 51歳 / B1級(今節好調なモーターを誇るベテラン)
2号艇:井村 実和 —— 50歳 / B1級(東京支部所属。ここまで不調が続いているベテラン)
3号艇:高足 淳子 —— 53歳 / B1級
4号艇:小森 竹彦 —— 27歳 / A2級(このレースで唯一の男子選手)
5号艇:中口 夕香 —— 23歳 / B2級
6号艇:鳥越 智恵 —— 52歳 / B1級
【第7レース】
1号艇:細山 裕子 —— 34歳 / A1級(高い勝率を誇るが、モーターの調子に不安がある)
2号艇:大野 桜子 —— 37歳 / B1級
3号艇:岩島 芳実 —— 43歳 / A1級(4日目まで連に絡めず苦戦していた実績のあるベテラン)
4号艇:中池 綾乃 —— 26歳 / B1級(強力なモーターを味方にしている)
5号艇:工藤 享子 —— 28歳 / B2級
6号艇:益井 啓次 —— 37歳 / A1級(このレースで唯一の男子選手。今節トップクラスの実績を持つ)
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【前書き】
●この小説には多くの数字が出てきます。そこで読者の皆様が読み易いように横書きとなっております
●多人数での会話も多いことから、誰が話しているのか、すぐにわかるよう会話の頭に台本形式で、氏または名を付けて表現しました
●この物語はフィクションです。実在の個人・団体、実際のレースとは一切関係ありません。ボートレーサーと市役所職員をモデルに、フィクションとして制作されたものです
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【01】 『ボートレース福岡』の舟券師
いつものように由利は戸田のボートレース場で富田に会った。
富田は『ボートレース福岡』で舟券師と話したときのことを語り始めた。
【回想の始まり】
『ボートレース福岡』、たくさんの観客でにぎわっていた。開催名は『ほぼレディース戦』。選手の多くが女性だった。
この日は最終日(6日目)、第6レースが始まろうとしていた。
富田が舟券師と話し始めた。
富田「舟券師という方は、あなた以外にも居るんですか?」
舟券師「いや、知らないなぁ。舟券師なんて、もうホッキョクグマやチンパンジーと一緒で、今や絶滅危惧種じゃないかな?」
富田「ははははは。いきなり笑わせてくれますね」
舟券師「そうかい。ただ本当のことを言っただけなんだけどな」
富田「いやぁー、ウケました」
舟券師「そりゃ良かった!」
富田「ボートレースで、何か勝つ秘訣ってありますか?」
舟券師「そうだな、しいて言えば、必ずレース場へ来て、ひたすら選手を見ることかな?」
富田「やはりそうですか。他のレース場の舟券師も同じことを言ってました」
舟券師「そりゃそうだろう」
富田「インターネットを使って舟券を買わないのですか?」
舟券師「買わないね。まず、ネットで買ったら記録が残り、アシが付くからな」
富田「儲かった時に税務署がうるさいってことですね」
舟券師「そうよ。当たっても今まで外れていた分が経費にならないなんておかしいだろう?」
富田「確かに」
舟券師「『一時所得』とかなんとか、あの税制じゃ誰も申告する者なんていないんじゃないの?」
富田「そうですよね、ひどい税制ですね。……で、レース場では、必ず選手を見るんですね?」
舟券師「ああ、ネットじゃ選手の練習風景まで映さないからな」
富田「そうそう、そうなんですよ」
舟券師「それと、4日目までは流して見ていて、5日目、6日目は得点争いが無くなるから、過去4日間で舟券の『連』に絡まなかった選手、特に腕のいいベテラン選手を狙って勝負するよ」
富田「なるほど、成績が悪ければ人気薄ですしね。それはわかっているんだけれども私の場合、黙って4日間見てられないのですよ」
舟券師「ははははは。買っちゃうんだ」
富田「昨日は、1レースから11レースまで外れっぱなしでレースが終わるたびに舟券を捨てました」
富田「その時思いついたんですが『捨てる』という漢字は、手偏を書いて右側に「人」を書いた下に『十一』と書くんですよね」
舟券師「ははははは」
舟券師「12レースは?」
富田「当たって、半分取り戻しました」
舟券師「そうかい」
富田「手偏の右に『十二』とは書かないので、だから最後は当たったのかな? と思いましたよ」
舟券師「なるほどね。面白いことを言うね。さすが作家だ。先生は毎レース買うんだ?」
富田「はい、買います。そして負けます」
舟券師「今日から我慢するんだね」
富田「我慢できないのです。ただ見ているというのが出来ないのです」
舟券師「配当金は我慢料だと思えばいい。我慢した分、お金が増えて戻って来るよ」
富田「うーん……」
富田は、素直に相槌を打つことが出来なかった。
舟券師「数打ちゃいいってもんじゃないでしょう?」
富田「うーん」
舟券師「舟券師は『何回当てたか』ではなく、『いくら儲けたか』なんだから」
富田「心に響く言葉ですね」
舟券師「成績の悪い選手を買えば配当もいいし、4日間黙って見ていると、次のレース展開が見えてくるんだよ。逆に4日間舟券購入してると、勝ったり負けたりして邪念が入るんだよなぁ~」
富田「ほぉー。4日間黙って見ていれば、5日目以降が新鮮な目で見られて、高配当が狙える訳ですね」
舟券師「そうよ! 舟券師は絶滅危惧種だろ、絶滅しないように『高配当』というエサを探して行かないと生きて行けないんだよ」
【02】 第6レース(4号艇のみ男子)
第6レースが終わった。
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●福岡『ほぼレディース戦』 最終日 一般戦 第6レース
1号艇 保田実紀 51歳 B1級 勝率4.11 モーター◎ 44416511
2号艇 井村実和 50歳 B1級 勝率4.81 モーター- 45544655
3号艇 高足淳子 53歳 B1級 勝率5.08 モーター- 12336516
4号艇 小森竹彦 27歳 A2級 勝率6.04 モーター× 12241423
5号艇 中口夕香 23歳 B2級 勝率1.50 モーター○ 45665666
6号艇 鳥越智恵 52歳 B1級 勝率4.24 モーター△ 64222453
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富田「『1-2』で1520円か。随分ついたなぁ。普段のレースなら『1-2』の目なんて、300円がいいところなのに」
舟券師「2号艇の井村実和が、今まで『45544655』の成績で人気薄だったんだよ」
富田「ホントだ、連に絡んでない」
舟券師「2号艇の井村選手は東京支部の50歳ベテランだ。この開催で賞金ゼロ。東京まで新幹線の中で食べる弁当代ぐらい稼がないとな」
富田「なるほど」
舟券師「じゃないと、帰りの新幹線で餓死してしまう」
富田「ははははは」
舟券師「この第6レース、唯一の男子選手4号艇で売れたんだろうよ」
富田「私ももし発売に間に合っていたら『1-4』『4-1』を買ってましたね」
舟券師「まぁ、普通に考えれば、1コースで成績の良い保田選手と、唯一男性で唯一A級の小森選手で買うだろうな」
富田「今のレース、取ったんですか?」
舟券師「いや、見送ったよ」
富田「そうですか。でも読みは当たっていたんでしょう?」
舟券師「まぁな。でも勝負は出来ないな」
富田「えっ! どうして???」
舟券師「配当が低いやな」
富田「えっ! そうですか? 『1-2』で1520円も付いたのに?」
舟券師「うん、低いなぁ。実を言うと、次の7レースで勝負しようかと考えてるんだ!」
富田「次の7レースですか。 えーっと?」
富田が予想紙を広げた。
【03】 第7レースの予想(6号艇のみ男子)
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●福岡『ほぼレディース戦』 最終日 一般戦 第7レース
1号艇 細山 裕子 34歳 A1級 勝率6.81 モーター× 42153125
2号艇 大野 桜子 37歳 B1級 勝率5.63 モーター- 12636146
3号艇 岩島 芳実 43歳 A1級 勝率6.50 モーター- 33636434
4号艇 中池 綾乃 26歳 B1級 勝率4.97 モーター◎ 65652121
5号艇 工藤 享子 28歳 B2級 勝率1.67 モーター○ 65645666
6号艇 益井 啓次 37歳 A1級 勝率6.56 モーター△ 111妨2431
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富田「第6レースに続いて、第7レースも男子選手がひとりか、」
舟券師「うん、男子は6号艇だけだ。面白い番組を組むもんだ!」
富田「女性5人に男性1人。こんな飲み会があったら酒池肉林。ウハウハだなぁ~」
舟券師「急に先生どうしたんだい? 頭、大丈夫かい? 負けすぎておかしくなった?」
富田「ははははは」
舟券師「しかし、小説家ってのは発想が違うんだね。ところで『酒池肉林』ってなんだ?」
富田「みだらな宴会のたとえですね。池に酒を満たし、男女が裸になって遊ぶ、みたいな、」
舟券師「そいつは、みだらだな。でも、そんなことをレーサーたちが選手合宿所でやったら、一発でレーサークビだろうな」
富田「ははははは。普通そんな所でやらないでしょう」
舟券師「いやいや、わからないよー?」
富田「ははははは。我々が高配当の舟券を取って、秘密クラブでやればいいんですよ」
舟券師「『秘密クラブ』かい?」
富田「そう、会員制の『秘密クラブ』とかで」
舟券師「良くわからないけど、いろんな世界があるんだね」
富田「まぁ。それはともかく、このレースはやっぱり男性が連に絡むんでしょうね?」
舟券師「6枠でも?」
富田「このメンバーなら悪くても2着には来るんじゃないですか?」
舟券師「そうかなぁ?」
富田「えっ?」
舟券師「男といえども無理だな!」
富田「えっ? 過去の着順を見ても初日から3連勝と今開催の実績があるし、同じA1級でも男子のA1級と女子A1級では、技量にだいぶ差がありますからね」
女子レーサーは女子だけのレースが多く、勝率が上がる傾向にあった。
舟券師「前の第6レースでも男子は来なかっただろう」
富田「あっ、そうか!」
舟券師「ここは過去4日間で、舟券の『連』に絡まなかった選手。特に腕のいいベテラン選手を狙うよ!」
富田「と、言うと?」
舟券師「3号艇、岩島芳実、43歳、A1級、勝率6.50。この選手のマクリ一発に賭けるよ」
富田「3コースのマクリ? カドの4コースマクリでなくて?」
舟券師「うん!」
富田「無理でしょう?」
舟券師「先生は何を買うの?」
富田「1号艇、細山裕子、34歳、A1級、勝率6.81。それと、6号艇、益井啓次、37歳、A1級、勝率6.56。この二人の一騎打ちでしょう!!」
舟券師「うん、うん。それで(舟券が)売れるだろうな」
富田「でも男子が大外6号艇だから、結構(配当が)付きますよ」
舟券師「うん、そうだね。お互いの意見が分かれたね。じゃぁ、別々の舟券を買って、どっちが来るのか、勝負だ!!!」
富田「まぁ、舟券師といえどもハズレることはあるでしょうからね!!」
舟券師「言うねぇー。まぁ、素人と舟券師の差を味わってもらうよ」
富田「ははははは。味わえるかなぁ~?」
舟券師「『男子だから』とか『インコースだから』と言う先入観が命取りになるんだよな」
富田「女子と言えども、1コースでA1級、勝率6.81なら、間違いないでしょう。『1-6』本線の道中抜かれの『6-1』ってとこかな?」
舟券師「ははははは。結果が楽しみだね」
富田「ええ。素人だって、当てるときは当てますからね」
二人が舟券売り場へ向かった。二人は各々自分の予想した舟券を買って水面際に戻って来た。
【04】 第7レース、スタート!
そして、第7レースが始まった。
富田「舟券のプロには申し訳ないが、当てますよ! 舟券師の面目をつぶすようで気がひけるけど」
舟券師「ははははは。なんとでも言っておくんだな」
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●福岡『ほぼレディース戦』 最終日 一般戦 第7レース
1号艇 細山 裕子 34歳 A1級 勝率6.81 モーター× 42153125
2号艇 大野 桜子 37歳 B1級 勝率5.63 モーター- 12636146
3号艇 岩島 芳実 43歳 A1級 勝率6.50 モーター- 45636434
4号艇 中池 綾乃 26歳 B1級 勝率4.97 モーター◎ 65652121
5号艇 工藤 享子 28歳 B2級 勝率1.67 モーター○ 65645666
6号艇 益井 啓次 37歳 A1級 勝率6.56 モーター△ 111妨2431
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♪ファンファーレとともに、5名の女子レーサーと1名の男子レーサーが水面に出てきた。
実況「進入はインから1、2、3、4、5、6、」
富田「よし、いいぞ! 枠番通りだ!」
舟券師「……」
実況「大時計が回り、10秒前、5秒前、3、2、1、スタート」
富田「よし、いいぞ! 横一線だ!」
舟券師「……」
富田「イン逃げろよ!」
実況「第1ターンマーク、6艇がひしめき合う! グーッと寄って行った!」
富田「イン逃げ! イン逃げ!」
実況「3号艇が速度を緩めず全速ターン!」
富田「……」
舟券師「……」
実況「全速ターンが決まった!!!」
富田「あれれっ! ……???」
舟券師「……」
富田「うそだろっ?」
舟券師「……」
富田「頭は『3』かいな?」
舟券師「……」
富田「なんで?」
舟券師「……」
富田「なんで3号艇が来たんだ?」
舟券師「新幹線の弁当代が欲しかったんだろう」
富田「う~ん、そうかぁ~」
舟券師「そんなもんさ」
富田「私が岩島選手にごちそうした気分だな」
舟券師「ははははは」
場内放送「1着3番、2着2番、3着1番」
富田「ホントだ。男子は3着にも来なかった」
場内放送「連勝複式、3番2番7,170円」
富田「うそだろっ? げっ!」
舟券師「……」
富田「黙っているけれど、取ったんですか?」
舟券師「ああ、取ったよ」
富田「げっ! 取った割には、全然喜ばないんですね?」
舟券師「まぁな。そういう感情は無くなった」
富田「なんか、悔しいな」
舟券師「だから言ったろ『素人と舟券師の差を味わってもらうよ』って」
富田「う~ん、悔しい!」
舟券師「『男子だから』とか『インコースだから』と言う先入観が命取りになる』って」
富田「う~ん、」
舟券師「舟券師にとって『先入観』とは『感情』要らないんだよ」
富田「う~ん、参りました」
富田がついに降参した。
【05】 おでんの食べ方
しばらくして、
富田「残りのレースは、当てたいなぁ」
舟券師「それなら『当たりますように』って手を合わせるんだね。漢字でも『手偏に合わせる』と書いて『拾う』になるだろう。きっと当たりを拾えるよ!」
富田「ははははは。早速返されましたな。やっぱり舟券師さんは頭がいいんですね」
舟券師「いやいや」
富田「しかし、高配当を取りましたね。そうですよね、大金をつぎ込んで、低配当じゃ投資効率が悪いですからね。」
舟券師「舟券購入は『投資』かい?」
富田「そうですよ。立派な投資です。新人に賭けて、もしハズレたとしても、それは、将来へ向けての立派な投資です」
舟券師「ははははは。新人への『投資』ねぇー」
富田「でも以前、冬に桐生で新人に全財産を賭けてハズレてしまい、帰りに何も食べられず、寒さで私が『凍死』しそうになりました」
舟券師「ははははは。そういうオチか」
富田「大失敗です。あのときほど、湯気の立つおでんが食べたいことはなかったなぁ~」
舟券師「ははははは」
富田「ホントですよ」
舟券師「おでんぐらい、今度、ご馳走するよ」
富田「いえ、今ご馳走になっても嬉しくないのです。あの時は、凍死寸前だったから、あったかい大根が食べたかったんです」
舟券師「大根かぁー? あたしゃ玉子だな」
富田「玉子ですか?」
舟券師「玉子を半分に割って、まずそのまま食べる。残りの半分は、黄身をおでんのだし汁に溶かして飲むんだ。そりゃぁ、うまいぞ~」
富田「ゴクッ!」
富田が唾を飲み込んだ。
富田「そんな食べ方があったんですか?」
舟券師「私は昔からそうやって食べてるね。玉子の裏表2点勝負だ」
富田「今度、レース場のおでんで必ずやります!!」
舟券師「うん、おススメだね」
富田「舟券師の方からおでんの食べ方まで教えてもらえるとは思わなかったな」
舟券師「ははははは」
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【後書き】
ご覧いただきありがとうございました!
今回は『ボートレース福岡』を舞台に、富田先生と絶滅危惧種(?)のプロ舟券師との、息詰まる心理戦とユーモア溢れる掛け合いをお届けしました。
「捨てる」と「拾う」の漢字の伏線回収から始まり、「投資」が危うく「凍死」になりかけた桐生の思い出話など、富田先生の軽妙なトークは相変わらず絶好調。ですが、やはりプロの壁は厚かったですね……!
感情や先入観を一切捨て、4日間じっと我慢して「ここぞ」という高配当のレース(今回の第7レース、岩島選手の全速マクリお見事でした!)を仕留める舟券師の姿には、ギャンブルの枠を超えた一種の美学すら感じてしまいます。
それにしても、最後に舟券師さんが語った「おでんの玉子の食べ方」、めちゃくちゃ美味しそうだと思いませんでしたか?
黄身をだし汁に溶かして飲む……次にレース場あるいはコンビニでおでんを買うときは、絶対に真似してみようと作者自身も心に誓っております。
今後も由利と富田、そして一癖も二癖もある登場人物たちの面白いエピソードをお届けします。どうぞお楽しみに!
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【作者よりお願い】
最後までお読みいただきありがとうございます。
「今回の舟券師の格言、心に響いた!」「おでんが食べたくなった!」という方は、ぜひページ下部の**【☆☆☆☆☆】**からポイント評価や、ブックマーク登録をよろしくお願いします! 執筆の大きな励みになります!
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