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女子ボートレーサーと市役所職員  作者: 池井 けい
第10章 時間との勝負
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93/110

93 ▼ 競艇場、爆破予告(後編) ~意外なオチ~

【05】 犯人が来た!


 翌日朝10時、開場。

 警備室では、警備員がモニターで、入場者を監視していた。そこに、係長も入り、一緒にモニターを見ていた。

係長「来ないな」

警備員「ええ」

係長「常にオープンと同時に来る客じゃないんだな」

警備員「そうなんですね」

係長「うーん」

警備員「来ないってことは、ないですか?」

係長「いや、絶対に来る!」

警備員「どうしてそんなに自信があるのですか?」

係長「そこまでして、購入した舟券を交換したかったということは、もう、相当ボートレースにどっぷり浸かっている証拠だ。言わば中毒だな、それが一日二日で辞められるわけがない」

警備員「なるほどね。でも、わざわざ本場に来なくてもスマホで出来るでしょう?」

係長「確かにそうだ。しかし、昨日も本場に来たということは、本場に来なくてはならないなにかしらの理由があるはずだ」

警備員「例えば?」

係長「必ず選手の練習風景を見るとか。練習風景は、スマホでは見られないからな」

警備員「ふむふむ」

係長「まぁ、のんびりここでモニターを見ながら、犯人が来るのを待つさ」

警備員「そうですね。今日こそ、とっ捕まえましょう」

係長「うん」

 係長が低い声でどっしりと頷いた。


 そして朝11時。

警備員「うむ!」

係長「どうした?」

警備員「ほら、遠くに上下白のジャージが!」

警備員が、モニターを指さした。

係長「本当だ!」

 座って見ていた係長が立ち上がった。

 やがて白のジャージの男の顔が大きく映りだされた。

係長「こいつだ!」

 係長は電話を取ると、事務室に電話した。

係長「犯人が、今、入場しました。昨日と同じ白のジャージです。配備をお願いします」

 事務室。

課長「わかった。警察にも伝える」


 急にあわただしくなった。

 ボートレース場職員、警察官が一斉に動き出した。そして、1分後には犯人の四方八方に、犯人に気づかれないよう警察官が張り付いた。

 犯人は、1階スタンドの競争水面近くに腰をおろし、予想紙に目を落としていた。まもなく第2レースの本番及び第3レースのスタート展示が始まろうとしていた。


♪ファンファーレとともに、6名のレーサーが水面に出てきた。

実況「進入はインから1、2、3、4、5、6、」

実況「大時計が回り、10秒前、5秒前、スタート」

実況「ほぼ横一線のスタート」


 ボートの激しいエンジン音の中、現場指揮官が無線で現場の警察官に、

指令「この後、第3レース『周回展示』終了後、声掛けし確保せよ。逃走の恐れあり」

現場「了解」


 第2レース結果。

 4号艇がまくり、5号艇がそれに続いた。レースはそのまま決まり、連勝単式は、4―5で3,220円。3連単が4―5―1で7700円の配当だった。


 場内放送「ただ今より、第3レースの『スタート展示』を行います」

 ファンファーレと共に、ピットから第3レースの出場選手が水面に出てきた。犯人はその様子を食い入るように見つめていた。


『スタート展示』が終わり、引き続き『周回展示』、6艇が間隔を空けて走り始めた。

犯人は『周回展示』を真剣に見ている。周りには10名近くの警察官。


 『周回展示』が終わり、犯人が予想紙を持って立ち上がった時だった。2人の警察官が、犯人の両脇に立ち、ひとりが警察手帳を犯人に見せた。

警察官「ちょっと事情をお聞きしたいので、警察までお越しいただけますか?」


 犯人の顔色が一瞬にして変わった。そして、二人の顔を見るやいなや走り出した。そうはさせまいと、周りに居た数人の警察官がすぐに犯人を取り押さえた。

警察官「おとなしくしろ! なにか逃げる理由があるのか?」

犯人「……」

 10名ほどの警察官が近寄り、犯人の周りを取り囲んだ。周囲に居た観客が、何事があったのかと驚いた様子で見入っていた。犯人は警察官に囲まれながら、ゆっくりと裏門へと向かって行った。


 事務室、警備室に「犯人確保」の連絡がされた。

係長「ふーっ」

 ため息をつくと係長は事務室に戻って行った。

 事務室では、すでに局長、部長、課長が集まり、胸を撫で下ろしていた。

局長「良かった、良かった」

部長「そうですね。意外と早く捕まりましたね」

局長「うん。みんなのお陰だよ。ありがとう」


【06】 取り調べ


 警察署取調室。午後1時半。

取調官「名前は?」

犯人「雪野準二」

取調官「職業は?」

雪野「無いです」

取調官「そうか。ひとりで暮らしているのか?」

雪野「はい」

取調官「家賃と生活費はどうしているんだ?」

雪野「生活保護です」

取調官「生活保護? そこから家賃と生活費と、それにボートレースの掛け金を出しているのか?」

雪野「はい。だから、貴重な金なんで、間違った舟券を買ってしまい、金を返してもらおうと思って」

取調官「それで舟券売り場の女性に頼んだのか?」

雪野「はい」

取調官「相手はなんと言ったんだ?」

雪野「『国土交通省の指導』うんぬんとか言って」

取調官「ふむふむ」

雪野「訳の分からないことを言って、とにかくダメでした」

取調官「それで?」

雪野「『覚えてろ!』と言って、立ち去りました」

取調官「それから爆破予告の電話をしたのか?」

雪野「はい」

取調官「どこで?」

雪野「トイレの中から」

取調官「何階のトイレかな?」

雪野「3階ですね」

取調官「随分、ここのボートレース場に詳しいんだな」

雪野「自分ちみたいなもんです」

取調官「ほー、そうなんだ」

雪野「ええ」

取調官「携帯電話を持っているのなら、携帯電話で舟券を買えるんじゃないの?」

雪野「インターネットには、つながってないです」

取調官「どうして?」

雪野「インターネットにつなぐと料金が高くなりますからね」

取調官「いくらぐらい高くなるんだい?」

雪野「月に4千円ぐらいかな?」

取調官「電話だけだと?」

雪野「800円ですね」

取調官「そうなんだ」

雪野「電話も役所から持つように言われて持っているんです」

取調官「そうか、それでわざわざボートレース場まで来ているのか?」

雪野「それもありますけれど、選手の練習や仕草を見たいから?」

取調官「誰かのファンなのか?」

雪野「いや、そう言う訳じゃぁなく」

取調官「じゃぁ何?」

雪野「レースを当てるためには、練習やボートの状態を見ておかないとね」

取調官「そんなの見なくても当たるだろう? 練習って関係あるのかい?」

雪野「あんた、素人だから、そう言うのさ。選手の練習を、見ると見ないのとでは大違いさ」

取調官「ふーん、そうかねぇー?」

雪野「練習状況で、今日はエンジンが伸びているとか、伸びていないとか、判断するから。当たる確率はグッと上がるね」

取調官「ほんと、ボートレースに詳しいんだな」

雪野「当たり前よ。こう見えても舟券師を目指しているんだ」

取調官「舟券師? なんだそれ?」

雪野「職業のひとつさ。舟券だけで食べていけるプロさ」

取調官「そんなの、あり得ないだろう?」

雪野「実際、この世には何百人と居るよ」

取調官「へえー、そうなんだ」

雪野「あんたが知らないだけさ」

取調官「しかし、日本中で何百人とは、狭き門だな」

雪野「日本以外にも韓国にも居るさ。それと、舟券だけで食べていくには、やはりそれだけレースを見ないとな。できればテレビやネットでなく、本場ほんじょうでね」

取調官「そう聞くと、本当にボートレースが好きなんだなぁ」

雪野「ああ。俺の生き甲斐だ。今は生活保護で、みんなの税金でお世話になっているだろう」

取調官「うん」

雪野「そんな、国民に迷惑を掛けちゃいけないから、早く舟券師として独立し、生活保護を打ち切りたいんだよ」

取調官「それは、良い心がけだな」

雪野「だろう」


【07】 犯人、雪野の予想


取調官「すると、昨日最初に買った舟券、『5―1』『5―2』は、来ないってことだな」

雪野「ああ。最初は5号艇がスタートから一気にカマシて行くと思って買ったんだが、トイレまで歩いて行く途中に、朝練(朝の練習)で1号艇のエンジンがやけに伸びていたことを思い出したんだ」

取調官「選手ってのは、朝から練習しているのかい? ただレースに出るだけじゃなくて?」

雪野「あの連中だって、賞金が欲しいから必死さ。俺と同じよ。そのためには、朝から頑張らないと、ほら、昔から『早起きは三文の徳』って言うじゃねえか、まさにこのことさ」

取調官「随分難しいことわざを知っているんだな」

雪野「まぁな。数字が入っていることわざは、すぐに頭に入るんだ。特に1から6までの数字」

取調官「学生の頃からそうだったのかい?」

雪野「ああ。学生の頃からだな」

取調官「その頃からボートレース予想の素質があったってことかい?」

雪野「うん、だろうな」

取調官「それで?」

雪野「そうよ、そうよ。朝練で、1号艇が良かったのを思い出して、やっぱり『1―5』『1―2』で決まりだと思い直したのよ」

取調官「ふむふむ」

雪野「でも『1―5』『1―2』じゃぁ、配当が付かないから、舟券売り場で『間違って買ったから返金してくれ』って、ばばぁに言ったのよ」

取調官「ばばぁじゃなくて、美人だったろう?」

雪野「そうかなぁ? あまり見てなかったよ」

取調官「そうか、頭の中はボートレースのことだけなんだな」

雪野「あたりめえよ。こっちは、生きるか死ぬか、舟券にかかっているんだからな」

取調官「確かに。すると、雪野さんの読みは、『1―5』『1―2』で絶対決まりってことだ」

雪野「ああ、間違いない!」

取調官「そうか。ところで、今朝は来るのが遅かったじゃないか、どうしてだい?」

雪野「なんか、昨日爆破予告したことで気が重くなって、出遅れたんだよ」

取調官「ははははは。フライングでなくて、出遅れか。スタート事故だな」

雪野「なんだ、ボートレースのこと、ちっとは知っているんだ」

取調官「昨日、慌てて初めて勉強したよ」

雪野「そうか、それはいいことだ。楽しいからな。これからの人生、きっと変わるよ」

取調官「そうかい?」

雪野「そうともさ。ボートレースは楽しいぞぉ」

取調官「ふふふふ。ボートレースの話になると元気がいいいな」

雪野「ああ」

取調官「さてと、ちょっと、休憩して、また後で取り調べだ」

雪野「そうかい」

取調官「また、2時間後だな」

 そう言うと、別の署員2名が留置場へと雪野を連れて行った。


 警察署取調室。午後4時過ぎ。

 取り調べが再開された。

取調官「爆破予告したけれど、爆発物は持っていたのか?」

雪野「いや」

取調官「すると、爆破予告した理由は?」

雪野「……」

取調官「単なる嫌がらせ?」

雪野「はい」

取調官「こんなことで、刑務所に入ることになるかもしれないぞ」

雪野「どのくらいの期間だい?」

取調官「そうだな、なんとも言えないが、過去の例からすると1年から3年」

雪野「真ん中を取って、2年ぐらいか?」

取調官「そう言うことになるな」

雪野「仕方ないね、自分がやったことだから」

取調官「そうか」

雪野「生活保護にしても、刑務所にしても、結局は国の税金を使って生きていくわけだから同じでしょう?」

取調官「う~ん、そうだな」

雪野「とにかく、自分は舟券を勉強して、いつかは舟券師として独り立ちしますよ」

取調官「そんなに、舟券師になりたいのか?」

雪野「はい、それが夢でもあり、皆さんの迷惑にもならなくなるからね」

取調官「そうか」

雪野「できれば、一刻も早く舟券師になって、税金を納められるくらいになって、みなさんへ借りを返したいね」

取調官「そんなことを思っているのか?」

雪野「これでも、恩義に報いなければと思っているんだよ」

取調官「殊勝な心がけだな」

雪野「まぁ」

取調官「しかし、返金してくれないぐらいで、短気を起こしちゃいかんぞ」

雪野「そうかい?」

取調官「そうだろう、舟券師になるんだったら、漫画のゴルゴ13のように冷静沈着に狙いを定めないと、当たるものも当たらなくなるんじゃないか?」

雪野「なるほど、おっさん、いいことを言うね」

取調官「まぁ、収監されている間、」

雪野「しゅうかん?」

取調官「いや、刑務所に入っている間、心を落ち着ける練習もできるか……」

雪野「まぁ、これからどんなことが起きても動揺しないで、冷静でいられるように修行を積むさ」

取調官「そうだな。今からでも、冷静沈着をお願いしますよ」

雪野「大丈夫。この逮捕を最後に、絶対に慌てないよう念じるよ」

取調官「それを聞いて、私はほっとしたよ。こうやって、じっくり話をすれば、雪野さんは良い人じゃないか」

雪野「へへへへへ」

 雪野が初めて照れて、笑った。


【08】 『5―1』『5―2』の舟券


 そこへ、別の警察官が取調室のドアを開けて入ってきた。

警察官「ちょっとすみません」

 警察官が取調官をドアの方に呼び寄せた。そして、2人は立ったまま、警察官が取調官の耳元で内緒話をし始めた。

 2、3分して、

取調官「そうか、わかった。ありがとう」

 警察官は、すぐに部屋から出て行き、取調官は、取調べの机に戻ってきた。

取調官「すまん、すまん。ちょっとヤボな業務連絡が入ってな」

雪野「どうぞ」

取調官「実はな、そのヤボなことなんだがな」

雪野「……」

取調官「今日の第12レース、昨日とまったく同じメンバーで同じ枠で組まれているのを知っているかい?」

雪野「今朝チラッと出走一覧表を見たけれど、そうだったね」

取調官「そうかい」

雪野「ああ」

取調官「このレース、もし私が買うのなら、やっぱり『1―5』『1―2』かね」

雪野「ああ、天気も水面も昨日と同じだし、それで間違いないね。ただし配当は付かないよ」

取調官「そうか」

雪野「だから、見送った方がいいんじゃないか?」

取調官「そう、思ってね、私は、今朝一番で雪野さんが買った同じ舟券売り場で、『5―1』『5―2』を、雪野さんが買ったのと同じ額、500円ずつ買ったんだよ」

雪野「バカだなぁ、そんなハズレ券を買って」

取調官「ハズレてもいいんだよ。この当たりもしない『5―1』『5―2』の舟券を買ったらどんな気持ちになるのか、あんたの気持ちを知りたかったんだよ」

雪野「金をどぶに捨てたような気持になるだろう?」

取調官「ついでに3分後、舟券売場に戻って、窓口で『間違って買ったから返金してくれ』と言ったんだ」

雪野「返金されなかったろう?」

取調官「ああ」

雪野「やっぱりな」

取調官「『場内でも、アナウンスされているし、モニターでも注意喚起をしてますが』と断られたよ」

雪野「ははははは」


【09】 ヤボな業務連絡


取調官「ところがな、さっきヤボな業務連絡が入ってな」

雪野「ああ、そうかい」

取調官「今日の第12レースのレース内容を、さっきの警察官が教えてくれたんだよ」

雪野「ふーん、どうだった?」

取調官「第12レース、スタートは5号艇が一気にまくりに行き、それを1号艇が弾き飛ばそうとしたらしいんだ」

雪野「そうだろう。5号艇は弾き飛ばされて、1着にはなれないんだよ」


取調官「ところが、5号艇のスタートがあまりに良すぎて、1号艇の張りは空振り。ひとりで勝手に外へ流れ6番手に」

雪野「……」

取調官「2号艇も行き場が狭く立ち遅れ3番手、遅れ差しした3号艇が、バックストレッチ2番手を走ったそうだ」

雪野「そうか『5―3』かぁ」

 ぼそっと呟いた。

取調官「ところが、3周している間に、3番手の2号艇がじわっじわっと追い上げて」

雪野「……」

取調官「最後、3周目の最後のターンで」

雪野「まさか、まさかだよな!」

取調官「そう、そのまさかなんだよ」

雪野「うそだー!!!」


取調官「最後のターンで、2号艇が3号艇を抜き、『5―2』で決まったんだそうだ」

 雪野がバーンと大きな音を立てて机を叩いた。

雪野「うそだろう……」

取調官「そして、配当が、」

雪野「……」

取調官「配当が、8,220円!」

雪野「はっ、はっせんえん?」

取調官「ああ」

雪野「うそだー……」

 雪野が机に突っ伏した。


 取調官がポケットから今朝買った舟券を取り出し、伏せた雪野の頭の前に舟券を掲げた。

 雪野がゆっくりと頭を上げると取調官が当たり舟券を持っているのが見えた。

取調官「まだまだ冷静沈着にはなれないわな」

雪野「……」

取調官「ゴルゴ13には程遠いぞ」

雪野「……」

取調官「爆破予告をしなければ、ざっと4万円の儲け」

雪野「……」

取調官「逆に爆破予告したために、懲役。まぁ刑務所でしっかり働いて、タネ銭を作ってくるんだな」

雪野「ちきしょう」

取調官「しかし、ボートレースってのは、面白いな。初めて買ってこんなに儲かるとは。ははははは」

雪野「そうだろう。ボートレースは最高だぜ!」

 雪野は取調官が嬉しそうに笑っている顔を見ながら言った。


 それから半年後。

 雪野は、刑事訴訟で1年6ヶ月の懲役。民事訴訟で4千万円の支払いが命じられた。


【10】 刑務所への差し入れ


 刑務所。

刑務官「雪野、手紙と本が届いているぞ」

雪野「うん、誰からだ?」

 雪野には、手紙が来るような親戚も友達もいなかった。それだからこそ生活保護も受給できたのだ。

 雪野が定形外封筒の裏に書いてある差出人の名前を見た。

雪野「小川公介? 誰だ?」

 雪野が定形外封筒から本を取り出した。

雪野「うん?」

 本は、『ボートレースファン手帳』の最新版だった。そこには直近の選手成績がすべて載っている。「出身地」「生年月日」「級別」「順位」「連対率」「事故率」「1着回数~3着回数」など。


 手紙には、

『舟券師になるんだったら、ボートレースファン手帳一冊ぐらい丸暗記しておくんだな。どうせ暇だろう。ははははは』という、一文があった。

雪野「ちきしょう、あいつか!」

 雪野が唇を嚙み締めた。

雪野「くそっ! でも」

 雪野が嚙み締めた口元を微笑みに変えた。

雪野「あいつ、いいとこあるぜ。俺の夢、しっかり覚えておいてくれたんだ」

 雪野が手紙の先を読んだ。

『4万円儲かるところを4千万円の借金を抱えるなんて超高い電話代だったな。ははははは』

雪野「くそおーっ」

 そう言いながら、更に雪野の口元がゆるんでいた。

 先を読むと、

『でも、雪野さんなら4千万円なんて、すぐ返せそうな気がする。頑張れよ!』

 雪野の脳裏に、あの取調官の笑っている顔が浮かんだ。

雪野「ちきしょー、泣かせやがって」

 雪野の目から涙がボタボタこぼれ落ちた。

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【後書き】

『爆破予告』のエピソード、お読みいただきありがとうございました。

今回の舞台は、埼玉県戸田市にある『ボートレース戸田』でした。 間違えて買った舟券の払い戻しをめぐるトラブルから、まさかの爆破予告、そして前代未聞(?)の取調室での答え合わせへと繋がる展開を描かせていただきました。

「もしあのまま払い戻しを要求せず、冷静にレースを待っていれば……」という、ギャンブルにおける究極の「タラレバ」と皮肉を雪野というキャラクターに詰め込んでいます。

4万円のプラスになるはずが、4千万円の損害賠償と1年6ヶ月の懲役という、人生最大の「出遅れ」を喫してしまった彼の結末。それでも最後に取調官(小川)からの差し入れに涙するシーンで、どこか憎めない彼の人間らしさを感じていただければ幸いです。

ボートレース場の緊迫した舞台裏(局長や係長、職員たちのリアルな葛藤や、DJポリスさながらの場内誘導など)と、取調室での少し奇妙なテンポの掛け合いを楽しんでいただけていれば嬉しく思います。

次話もどうぞよろしくお願いいたします!

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【作者よりお願い】

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

最初の予想がまさかの的中……! 爆破予告の代償が「4万円のプラス」から「4千万円の借金と懲役」になってしまった雪野ですが、取調官・小川の粋な差し入れに、どこか救われるラストでしたね。

「雪野、自業自得だけどちょっと哀れだな……」「ボートレースのオチが効いていて面白かった!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いいたします!

下部にある**【いいね】や【☆☆☆☆☆(ポイント評価)】、【ブックマークに追加】**をいただけますと、執筆の大きな励みになります。

次回のエピソードもどうぞお楽しみに!

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