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女子ボートレーサーと市役所職員  作者: 池井 けい
第10章 時間との勝負
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92/110

92 ▼ 競艇場、爆破予告(前編) ~犯人の動機~

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【あらまし】(サスペンス&ユーモア)

「爆弾は午後4時半に爆発する――」 ボートレース戸田の窓口で放たれた、理不尽な逆恨み。身勝手な男の電話一本から、場内は4千人の観客を巻き込む大混乱に陥る。緊迫する時間制限、職員たちの必死の誘導、そして警察の捜査。犯人を追う防犯カメラの映像が捉えた、意外な足取りとは?

 一瞬の怒りに任せた「爆破予告」が、やがて男の運命を皮肉な方向へと狂わせていく。スリリングな展開の先に、思わぬ「賭け」の結末が待ち受ける、一気読み必至の痛快人間ドラマ!

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【主な登場人物】

=爆破予告事件の当事者・関係者=

●客(白いジャージの男)

12レースの舟券を間違えて購入してしまい、窓口で返金を要求するも断られ、捨て台詞を残して去っていった男。

●窓口の女性職員

3階D売り場の情報窓口を担当する中年職員。規定通りに返金を断ったため、客から暴言を吐かれてしまう。

●客男(30代)

第10レースの予想中に3階のトイレを利用した際、個室から不穏な電話の声を耳にし、職員に重要な証言をもたらす観客。


=ボートレース戸田・運営陣(事務所・放送室)=

爆破予告の電話を受け、4,000人の観客と選手・職員の安全を守るために奔走するメンバーです。

●局長(開催執行委員長)

運営の最高責任者。限られた時間の中で、売上損失と人命の安全、暴動のリスクを天秤にかけ、最終的な苦渋の決断を下す。

●部長

運営幹部。万が一の事態を重く見て、最も安全な選択肢である「即時の開催中止」を強く主張する。

●課長

運営幹部。売上データの把握や、部下からの目撃情報の吸い上げ、警察・警備室との連携をテキパキとこなす。

●係長

実務のリーダー。過去の事例やギャンブル特有の観客心理を熟知している。局長の命を受け、場内アナウンスで「DJポリス」さながらの見事な誘導を行う。

●電話応対の職員

犯人からの爆破予告の電話を直接受けた職員。緊迫した状況の中で、機転を利かせて犯人に質問を投げかける。


=トラブル処理・捜査協力を行う職員たち=

●織田 貴裕(40歳 / 職員):売り場での払い戻しトラブルの情報を掴み、防犯カメラの確認に動く。

●山田 和久(35歳 / 職員):トイレで不審な言葉を聞いたという観客(客男)を発見し、上司へ繋ぐ。

●皆川 智弘(30歳 / 職員):フロア案内図を使い、目撃情報のあったトイレの場所を迅速に特定する。

●室田 晋也(35歳 / 警備員):警備室で防犯ビデオの解析・操作を行い、警察へデータを提供する。

●警備員たち:場内の不審物捜索や、防犯モニターでの警戒にあたる。

警察関係者

●警察官たち:爆破予告を受けてレース場に急行し、職員と連携して防犯カメラの確認や場内の警戒、その後の捜査を行う。

●取調官:事件後に取り調べを担当する警察官。最初はボートレースの素人だったが、犯人との対話を通じてレースの仕組みや奥深さを学んでいく。

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【前書き】

●この小説には多くの数字が出てきます。そこで読者の皆様が読み易いように横書きとなっております

●多人数での会話も多いことから、誰が話しているのか、すぐにわかるよう会話の頭に台本形式で、氏または名を付けて表現しました

●この物語はフィクションです。実在の個人・団体、実際のレースとは一切関係ありません。ボートレーサーと市役所職員をモデルに、フィクションとして制作されたものです

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【01】 爆破予告


 14時。『ボートレース戸田』舟券売り場。

客「12レース、5―1を500円、5―2を500円」

職員「5―1を500円、5―2を500円ですね」

 中年の女性職員が、千円を受け取り、指定された舟券を客に渡した。

職員「お間違いないですか?」

客「ああ」

 客はそれを持って立ち去った。

 しばらくしてから、その客が窓口に戻って来た。

客「この舟券、間違って買ってしまったんだ。返金してくれ」

 そう言って舟券を窓口に差し出した。

職員「お客様、国土交通省の指導により間違えて購入した舟券のご返金、お取り替えは出来ないんですよ」

客「なんだと!」

職員「場内でもアナウンスされてますし、モニターでも注意喚起をしてますが」

客「うるせえ、くそばばぁ!」

職員「お言葉が過ぎますよ」

客「覚えてろ!」

 客が去って行った。


 15時。

 客がトイレに入って携帯電話を取り出した。客は『ボートレース戸田』の事務局に電話すると、

客「いいか、よく聞けよ。今、爆弾を仕掛けた。遠隔操作で作動し午後4時半に爆発する。死にたくなかったら、開催を中止するんだな」

職員「待ってください。どこに仕掛けたんですか?」

客「バカヤロー、言う訳がないだろう、バカかお前!」

職員「何箇所仕掛けたんですか?」

 電話は切れた。


職員「爆破予告です!」

 周りの職員が集まって来た。

係長「なんだって?」

職員「『爆弾を仕掛けた。遠隔操作で作動し午後4時半に爆発する。死にたくなかったら、開催を中止するんだな』との電話でした。

係長「他には?」

職員「『どこに仕掛けたんですか?』と、聞いたのですが、」

係長「うん、それで相手は?」

職員「『バカヤロー、言う訳がないだろう、バカかお前!』と」

係長「そうか。でも、よく聞いてくれた」

職員「どうしましょう?」

係長「課長に報告してくる」


 係長が課長の所へ行った。そしてこの話はすぐに、課長、部長、局長へと伝わった。

 全員が事務所内に来て、話し合いが始まった。

局長「爆発まで、あと何分だ?」

係長「80分です」

局長「今すぐ、開催を中止するか?」

部長「う~ん、難しいですね」

局長「過去に、こういう例があるのかね?」

係長「はい。他のボートレース場と市内の学校でありました」

局長「結果は?」

係長「どこにも爆発はありませんでした。ただ、どこも避難はさせています」

局長「時間がない。空いている職員に、このことを警察に電話報告させてくれ」

係長「はい、今、指示します」

 係長が、部下に警察に電話するよう命じた。


局長「今、何レースだ?」

係長「あと、10分で第10レースが始まります」

局長「そうか」

係長「第10レースを止めるのは無理かと思います」

局長「うむ。そうだな」

部長「11レースは、いかがいたしましょうか?」

局長「う~ん」

局長が考え込んだ。

係長「この手の事件で、過去に、実際に爆発した事件は無いのですが……」

局長「う~ん」

部長「もし、もしも爆発した場合、君は責任とれるのかね? 責任の所在は局長だろ?」

係長「すみません」


局長「ここで、急に止めることが出来るのかね」

部長「出来ます。その方が、安全かと」

係長「いえ、突然の開催中止で、観客が騒ぎ出すことは往々にしてあります。返ってその方が危険ですし、私も何度か危ない経験しております」

部長「そうかな?」

局長「なんで開催中止になるんだね?」

係長「最も多いのは、気象ですね。強風、台風による水面異常、後は霧や雪による視界不良。最初から開催中止なら良いのですが、途中での開催中止は、暴動を招く恐れがあります」

局長「なぜだね」

係長「やはり、負けを取り戻そうとしているお客様もいらっしゃいますし、ギャンブルともなれば、皆さんそれなりに熱くなっておりますからね」

部長「全員が全員、そうじゃないだろう? ごく、ごく一部の客だろう?」

係長「その一部が怖いんです」


局長「う~ん」

局長は考えあぐねていた。

局長「課長、11レース、12レースの売上っていくらぐらいなんだい?」

課長「ひとレース、1億6千万円ぐらいかと」

局長「すると、25%が収益だから、1レース当たり4千万円の損失か」

部長「損失の問題だけではないかと思いますが」

局長「それはそうだが、」

係長「とりあえず、『爆破予告の電話があった』という放送を場内に流してみては?」

部長「馬鹿か!」

係長「……」

部長「それこそ、お前が言う『暴動』が、起こる」

係長「そうでしょうか? いきなり『開催中止』というよりは良いでしょう?」

局長「う~ん」


【02】 爆破まで、あと75分


 15時15分。爆破まで、あと75分。

 場内放送「ただ今より第11レースのスタート展示を行います」

 競走水面に、第11レースの選手6名を載せたボートが登場した。


 事務所。

部長「いかがいたしましょう?」

局長「警察は、何か言ってたかね」

 近くでそれを聞いていた職員が、

職員「こちらに、警察官を向かわせるとのことです。それ以上のことは何も言ってません」

局長「だろうな。警察だって、そんなもんだろう。突然だからな」

係長「私たちと、警察だけではどうにもなりません」

局長「うん? 他に誰が居る?」

係長「どうでしょう、このボートレース場に居る全員に協力してもらいましょう」

局長「うん?」

部長「何を言ってるんだね?」

係長「お客様から、職員から、ここに居る全部の人に、付近に怪しい物が置かれてないか? 不審人物を見かけなかったか? 見かけた人は、大至急近くの職員に連絡をするよう放送しましょう。今すぐに!」

局長「う~ん」

部長「開催中止すべきです。今すぐに! もう時間がありません」

係長「爆破は、はったりです!」

局長「……」

部長「ご決断を!」

局長「よし決めた!!! 事務所内に居る職員全員を私の周りに集めてくれ。今すぐに」


 1分後、事務所内の職員約40名が局長の周りに集まった。

局長「みなさん、もうご存知かと思いますが、先程電話による爆破予告がありました。爆破予告時間は第12レースが始まる午後4時半です。つきましては、本日の開催は、第11レースをもって終了といたします。第12レースの投票につきましては、投票中止、すでに購入された舟券については全額返還。もう、時間が無いため、お客様及び職員につきましては、場内放送で連絡します。お客様からのあらゆる苦情に関しては、すべて聞き流し、4時半の爆破を理由に、お客様全員がボートレース場の外へ出るよう回答してください。苦情等すべては明日以降、対処いたします。あとは、各自判断をし、適切な行動をお願いいたします。以上です。何か質問は?」

職員「放送は、いつ誰がするんですか?」

局長「今すぐ、係長にお願いします」

職員「わかりました」

局長「あとは?」

全員「……」

局長「では、お願いします。解散」

 局長が全職員に頭を下げた。一般職員が部署に戻って行った。


局長「部長の開催中止の意見と、係長の放送の意見と、両方を採用して、折衷案としてこれで行きましょう」

部長「……」

係長「……」

局長「係長。今から放送室で放送してください。さっき、係長が言っていた内容、それで行きましょう!」

係長「はい!」

局長「係長はDJポリスって知っています?」

係長「テレビのニュースで見ました。渋谷とかでマイクを握る警視庁の隊員ですよね」

局長「うん、あれで行きましょう。課長、今日は、お客様、何人入っているの?」

課長「4千人です」

局長「では、4千人が無事に家に着くようにお願いします」

係長「はい、わかりました。全力を尽くします」

 係長が放送室へ入って行った。


【03】 爆破まで、あと60分


 爆破予告まで、あと60分。

場内放送「開催執行委員長より、ご来場の皆様及び当ボートレース場の全職員に申し上げます。ただ今、緊急事態が発生いたしました。落ち着いてこれから私の話をお聞きください」

 場内がざわめき始めた。

客「なんだ、なんだ?」

放送「先程、午後3時に何者かによる電話がありました。内容は、場内に爆弾を仕掛け、午後4時半に爆破させるというものでした」

 場内が一瞬静まり返った。係長はそこを逃さずもう一度話始めた。

放送「繰り返しご案内申し上げます。先程、電話で爆破予告がありました。午後4時半に爆破させるというものでした」

 今度は場内が一斉に騒ぎ始めた。


放送「皆様、どうぞ落ち着いてこれからの話をお聞きください。本日のレースは第11レースを持ちまして終了とさせていただきます。午後4時を持ちまして第11レースが終了いたしますが、今すぐに帰れる方はゆっくりで大丈夫ですから出口へ向かってお進みください。また、第11レースの舟券を購入される方は、今すぐ購入し、出口へ向かわれるようお願いいたします」

 その放送を聞きながら職員も各自、誘導等に動き始めた。

放送「すでに第12レースの舟券を購入された方につきましては、明日以降、2カ月後まで払い戻しをいたします。購入された舟券は、大事にお持ち帰りください」

 放送に従い、観客が動き始めた。


放送「選手及び職員に連絡いたします。第11レースが終了次第、建物の外、安全な所へ避難してください。ガラスのある所には絶対に近づかないでください。この放送は、爆破予告時間を過ぎるまでノンストップで続けます」

職員「えっ、係長は避難しないのか?」

放送「お客様に申し上げます。レース場を午後4時半に爆破するという予告電話が入りました。お客様の命、安全が第一です。お客様は、午後4時までにレース場を出るようお願い申し上げます。第11レースを観戦されたい方は、レース場を出て対岸よりご覧ください。払戻し金、返還金は、2カ月後まで出来ます。本日の返還金は混乱を防ぐため、何より皆様の命を守るため、中止いたします。なにとぞご理解ご協力の程、お願い申し上げます。またお願いついでに皆様にお願いしたいのですが」

 係長の放送に少し間が空いた。


客「なんだ、なんだ?」

放送「ただ今、4千名の入場者がいらっしゃいます。今すぐ帰ることが出来る方は、すぐにお帰りいただき、あと5分、10分残れるという方がいらっしゃれば、お近くのトイレ、ゴミ箱に不審物がないか、ご確認いただけないでしょうか? 皆様のご協力で事件を未然に防ぐことが出来ます。不審物を見かけましたら最寄りの職員、誰でも結構ですからご連絡ください。皆様のご協力が何より大事です。また、場内で不審な人物を見かけた方はいらっしゃらないでしょうか? 皆様の情報が事件の解決につながります。ご協力をお願いいたします」


 事務所で放送を聞いていた局長が、

局長「お客様の協力と、出口の混雑を避ける一石二鳥の放送だな。たいしたものだ」

 係長の放送は、繰り返し続けられた。


 その3分後、職員(織田貴裕40歳)、

織田「勝舟投票券売り場の職員から連絡が入りました!」

課長「どうした?」

織田「不審人物の報告です」

課長「うん」

織田「『舟券を間違って買ってしまったから金を返せ!』とごねた客がいるそうです」

課長「それで」

織田「最後に、『返金は出来ません』と答えたところ、『覚えてろ!』と、捨てセリフを吐いたらしいんです」

課長「そう言うのは、結構あるんじゃないかなぁ」

織田「それが、12レースの舟券だったそうです」

課長「うっ!」

織田「爆破予告の時間と合います」

課長「どこの舟券売り場だ?」

織田「3階のD売り場です」

課長「客の顔を覚えているのかな?」

織田「いえ。でも服装は覚えているとのことでした」

課長「『売り場3D』の職員と一緒に早速防犯カメラを当たってくれ」

織田「はい、承知しました」

織田が『売り場3D』へと、走って行った。


 そこに、別の職員(山田和久35歳)がやって来た。

山田「あそこに立っているお客様(30代・男)なんですが、トイレから『爆弾』という言葉を聞いたというんです」

課長「なに!」

 課長がすぐに、部長と局長を呼んだ。

 課長、部長、局長の3人の居る前で30代の男が

客男「3階のトイレで、小さい方の用を足していたら、トイレの個室で誰かが電話していたようで」

課長「ふむふむ」

客男「会話の内容は、まったくわからないのですが、唯一『爆弾』という言葉だけは、私の耳に残りました」

課長「『爆弾』という言葉にあなたが反応したわけだ」

客男「ええ。『爆弾』なんて物騒な単語ですし、こんな所で聞くようなワードじゃないですからね」

課長「なるほどねぇ。で、それは何時ごろ?」

客男「10レースの予想していた時でしたね。ですから、10レースの前です」

課長「できるだけ正確な時間がわかるかなぁ?」

客男「う~ん」

 上を向いて考え始めた。


 そして予想紙の発送時刻を見ながら、

客男「ほぼ、3時ちょうどだったと思います」

課長「ありがとう。トイレの場所はどこだったか覚えています?」

客男「はい」

 近くに居た職員(皆川智弘30歳)が、ボートレース場の『フロア案内図』を持って来た。3階にトイレは4か所あった。

客男「ここです。ここのトイレの一番奥の個室でした」

 客の男が『フロア案内図』の4つの『WC』の内のひとつを指さした。

課長「その男の顔を見ましたか?」

客男「いえ、僕の方が先に出ましたから」

課長が『フロア案内図』を持って来た職員に、

課長「そこのトイレ付近の早速防犯カメラ、3時を当たってくれ」

職員「はい」

 職員が、ただちに警備員室に向かった。


 3階のトイレで犯人の声を聞いた客と入れ替わるように、警察官が2名やって来た。

局長「どうも、お疲れ様です」

警官「どうですか、様子は?」

局長「はい、現在の状況は」

 局長が、これまでの状況を説明した。

警官「すると、犯人の顔と体型は防犯ビデオがとらえているんですね」

局長「そうなりますね」

警官「わかりました。私共も警備室に行って構いませんか?」

局長「はい。○○君、警備室にご案内して」

 職員と警察官が警備室に行った。


【04】 ビデオの映像


 警備員室。

 すでに、何人かの関係者が防犯ビデオに見入っていた。『売り場3D』で容疑者に舟券を渡した女性職員も目を凝らしてビデオを見つめていた。

 その時だった。

女性職員「この人! この人です!」

警備員(室田晋也35歳)がビデオを止めた。

 警備室に居た全員がそこに集まって来た。ビデオに、上下白のジャージを着た30歳ぐらいの男性が映っていた。

警官A「こいつかぁ」

警官B「見たことないですね」

警官A「うん」

室田「3時頃のトイレ付近の防犯ビデオを回しますね」

 5分後、

室田「うん、こいつか!」

 上下白のジャージを着た男が、トイレから出て来る様子がモニターに映し出された。

室田「画像が小さいですね。大きくします」

警官「手に持っているのは、ガラケーか?」

室田「そうみたいですね」

警官「ここの部分だけ、プリントもらうことできます?」

室田「はい、大丈夫です」

警官「後で捜査関係事項照会書を持ってきます。その時は、ここの部分だけの動画をUSBメモリーでもらえます?」

室田「はい、大丈夫です」


 第11レースも予定通り4時ちょうどに終わった。

 現在4時10分爆破予告まで、あと20分。


 事務室。

局長「お客様は、ほとんど帰ったみたいだね」

部長「そうですね」

局長「みんなのお陰で、大きな混乱もなかった」

部長「はい」


 放送室。

係長が場内放送を続けていた。

放送「場内に残っているお客様、選手の皆様、職員・関係者の皆様、ただちに建物の外にでてください。ガラスのそばには、絶対に近づかないでください」

放送中の係長の手元には、職員から容疑者に関する映像写真と情報のメモが置かれていた。


 場内。

 警備員と職員が、3階のトイレを始めとしてあちこち不審物がないかギリギリまで探していた。

警備員A「さて、退避するか」

警備員B「ええ、そうですね」


 場内に居た全員が、避難した。

 そして爆破予告の午後4時30分。

 職員たちは、荒川の土手に避難していた。

局長「何事もなさそうだな」

部長「ええ、大丈夫そうですね」

局長「うん、良かった」

部長「ええ」


 場内放送

係長「関係者の皆様に申し上げます。周辺に置いてある物を確認しながら建物の中にお入りください。その後、何も異常が無ければ業務等を再開してください。何か異常を感じた場合は、事務所までご連絡ください。繰り返し、関係者の皆様にご連絡申し上げます。……」

局長「係長は、逃げずに頑張っているなぁ」

部長「ええ、命知らずと申しますか、」

局長「係長に、容疑者の情報は行ってるんだよな?」

部長「ええ、そう聞いております」

局長「そうか。知っていると知らないとでは、大違いだからな」

部長「ええ」

局長「部長の言う通り、開催中止もやむを得なかったろう」

部長「ええ」

局長「売り上げも大事だが、人の命には代えられんしな」

部長「ええ」

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