78 ♡レタスを買おうか迷う男(その1) ~出会いはスーパーマーケット~
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【あらまし】(日常恋愛エピソード。ep.78~ep.80まででひとつの物語)
スーパーの閉店5分前。安売りの「レタス2個150円」を前に、一人で食べきれるか悩む青年・松重大輝。そんな彼に声をかけたのは、鮮度の見分け方を教え「半分ずつ分けましょう」と提案した北見優香だった。
レジの支払いで生じた「5円」の貸し借り。名前も知らないまま別れた二人だったが、街のハンバーガーショップや、偶然のすれ違いを経て、運命の糸は再び絡まり始める。
不器用な二人が、レタスのように瑞々しく心を寄せていく、優しさ溢れる日常ラブストーリー。
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【主な登場人物】(ep.78~ep.80までの登場人物)
●北見優香(きたみ・ゆうか・23歳)
職業: 美浦市役所 税務課の職員。
性格: 合理的で決断が早く、おせっかい焼きな一面もある。食品ロスを気にかけるなどしっかり者。
エピソード: スーパーで悩む松重にレタスの保存法を教え、2個150円のレタスをシェアした。
●松重大輝(まつしげ・だいき・24歳)
職業: 印刷会社の職員。
性格: 優柔不断で悩みやすいが、根は親切で誠実。子供に対しても優しい。
エピソード:レタスを買うのに3分以上悩み、優香に助けられる。彼女に惹かれ、再会を願ってハンバーガーショップ『マクモリア』に通い詰める。
●笹倉麗子
優香の同僚。悩むくらいなら「バクバク食べればいい」と豪快な解決策を提案する、由利いわく「よくしゃべるおばさん」。
●由利源吾(ゆり・げんご・31歳)
優香の同僚。松重とは学生時代の夏に市民プールでアルバイトした仲間。優香と松重の接点に気づきそうで気づかない狂言回し的な役割。
街で出会う人々
●繁永結縁
小学6年生の少女。強風で帽子を飛ばされたところを松重に助けられる。大人びた口調で松重を「最低点で合格」と評し、彼を「こども食堂」へ連れて行く。
●若いママ
駅の階段でベビーカーを運んでもらい、松重に感謝した女性。この様子を見ていた優香が、松重の「力持ち」な一面を再確認するきっかけを作る。
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【前書き】
●この小説には多くの数字が出てきます。そこで読者の皆様が読み易いように横書きとなっております
●多人数での会話も多いことから、誰が話しているのか、すぐにわかるよう会話の頭に台本形式で、氏または名を付けて表現しました
●この物語はフィクションです。実在の個人・団体、実際のレースとは一切関係ありません。ボートレーサーと市役所職員をモデルに、フィクションとして制作されたものです
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【01】 『食品ロス削減』の貼り紙
その日、北見優香(きたみ・ゆうか・23歳)は残業した帰り道、スーパーマーケット『ムーン』に寄った。
スーパー『ムーン』の入口には『食品ロス削減』の貼り紙が貼られていた。優香はその貼り紙を以前から目にしていた。
優香がスーパーに入ると、すぐに野菜売り場がある。そこのレタス売り場の前を通るとひとりの男性(松重大輝・24歳)が、レタスを見ながらずっと悩んでいた。
松重「むーん……」
店はあと5分で閉まろうとしていた。レタス売り場には『レタス2個150円』と慌てて手書きされた札が置いてあった。
そこに通りかかった優香も同じく『レタス2個150円』の札を目にした。
優香が前回ここに来て見た時の値段は、1玉180円だった。
優香「あらっ、安い!」
その声は松重の耳にも聞こえた。それでも松重はまだレタスを見たまま悩んでいた。
松重「うーん……」
その松重の悩んでいる様子に見かねて、優香が
優香「あのぉー、ひょっとしてレタスを買おうかどうしようか迷ってます?」
松重「はい、そうなんです」
優香「安いですもんね」
松重「ええ。でも、2個は要らないと言うか、食べる前に悪くなっちゃうんじゃないかと心配なんです。どのぐらい持つのか知識が無くて」
優香「簡単に言うと、」
優香が玉レタスひとつを手に持ち、レタスの茎を松重に見せた。
優香「切った茎が茶色に変化していったら、鮮度が落ちたことになります」
松重「へぇー、そうなんですか。いいことを教えていただきました。じゃぁ、このレタスは、まだ大丈夫ですね」
そのレタスの茎は白かった。
優香「でも、保存方法が悪いと一気に茶色くなってしまいますよ」
松重「えっ! それは困る」
優香「ラップして冷蔵庫の野菜室に入れるのは必須ですね。レタスは乾燥に弱いんです」
松重「なるほど、だからレタスはラップして売られているんだ」
優香「ええ。もっと長持ちさせたいのなら、茎に小麦粉を塗るか、茎に楊枝を3、4本刺してみてください。全然持ちが違いますよ」
松重「そうなんですか? 全然知らなかったなぁ」
優香「私にだまされたと思って、やってみてください。ふふふふふ」
松重「小麦粉を塗るのは、乾燥を防ぐと言うことでわかりますが、茎に楊枝を刺すのは理解にく……、なんかレタスが可哀そうで」
優香「茎には成長を促す細胞があり、それを壊すのです」
松重「えーっ。痛そう……」
松重が眉間にしわを寄せた。
優香「レタスに『もう成長しなくていいから、そのまま元気でいてください』と伝えるんです」
松重「逆に傷ついて、弱らないんですか?」
優香「成長のために使う力を健康維持に回すのです。成長しようとして力を使ったらそのあとぐったりしちゃうでしょう、まるでフルマラソンを走った後のように」
松重「ふむふむ、なるほどねぇ~」
優香「閉店まであと5分しかないですよ。ねぇ、それなら私が2個買いますから、あとで1個ずつ分けましょう。レジを出た所で、待っていてください」
松重「いいですね。本当にいいんですか?」
優香「もちろん! 悩んでいる時間がもったいないわ。私も買い物をしますから、レジを出た所で待ち合わせしましょう!」
松重「はい、わかりました」
優香はレタス2個を買い物かごに入れた。松重はそれを確認して他の売り場へと回り始めた。優香も同じように足早に他の売り場へと向かった。二人が回り始めると同時に『別れのワルツ(蛍の光)』が店内に流れ始めた。
松重は冷凍食品、優香は牛乳売り場へと急いだ。
5分後、レジを出た所にあるサッカー台。
松重が先に待っていた。そこにレジを済ませた優香がやって来た。優香は買い物かごからレタス1個を松重に差し出した。
優香「はい、これね」
松重「すみません。今、半額払いますからね」
松重が財布を取り出し、そこからレタス2個150円の半額、75円を取り出そうとした。
松重「あれっ? 5円玉が無い!」
優香「……」
松重「じゃぁ100円で」
松重が100円玉を優香に渡した。
優香「あらっ! 私も5円玉が無いわ。じゃぁ30円のお釣りで」
優香が10円玉3個を松重に手渡した。
松重「じゃぁ、レタス1個80円ということにしてください」
松重が10円1個を優香に返した。
優香「えーっ?」
松重「5円は、レタスについての講師料と、私の悩みを解決してくれたお礼と言うことで」
優香「そうね、わかったわ」
優香がニコッと笑って10円玉を受け取った。
結局、2個150円のレタスを優香が70円、松重が80円払ったことで解決した。
松重「じゃぁ、これで」
優香「はい」
二人はその場で別れたのだった。
【02】ハンバーガーショップ『マクモリア』で再会
それから1か月後の平日。
市役所税務課。優香は昼休み時間に仕事をして、午後1時から食事休憩を取った。
優香(久しぶりにベーコンレタスバーガーを食べたくなったわ)
優香は急いでハンバーガーショップの『マクモリア』へと足を向けた。
ハンバーガーショップの『マクモリア』。
午後1時にも関わらず、店内は客で混雑していた。しばらく並んだあとで、
優香「ベーコンレタスバーガーをセットで」
店員「お飲み物は?」
優香「コーラで」
注文した品が出て来ると、優香はそれを持って空いてる席へと向かった。空き席は、カウンターしかなかった。
カウンターに座りスマホを見ながらハンバーガーを頬張った。
少し遅れて松重が同じ『マクモリア』にやって来た。二人が居合わせるのは、まったく偶然だった。松重はそこに優香が居ることを知らなかった。
松重「ベーコンレタスバーガーをセットで」
店員「お飲み物は?」
松重「コーラで」
数分後、松重は注文した品を受け取り、席を見渡した。空いてる席はひとつしかなかったので、その空いている席に向かった。偶然にもそれは優香の隣の席だった。
まさか隣に優香が座っているとは思いもせず松重が席に座った。
優香が腕時計を見て、
優香「あらっ、時間だわ」
優香が小声でひとり言を言った。その声で松重がチラッと隣の女性を見た。
松重「あっ!!!」
松重が相当びっくりした。それに反し、優香はキョトンとしていた。
松重「あっ、レタスの、」
優香「あっ。あ~あ」
松重「あの時はどーも」
優香「いいえ、」
松重「あのぉー、」
優香「ごめんなさい! 時間が無くて」
優香は逃げるように店を出て行ってしまった。
松重「あーぁー」
松重が深―いため息をついた。
松重(ずうっと会いたかったのに、やっと会えたらこれか。嫌われているんだな。こんな優柔不断な男だもんな。やっと会えたのに逃げられるなんて、会えなかった方が良かったくらいだ?)
松重(あのスーパーでの出来事を思い出させただけ、神様は酷だよ!)
松重はそう思った。




