73 ■年の差婚(そこに愛はあるんか?)その1
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【あらまし】(市役所にまつわるエピソード)
美浦市役所の住民課に提出された一通の婚姻届。夫は64歳、妻は20歳。44歳もの年齢差がある二人の「年の差婚」に、戸籍担当の戸部や若手の山門らは「偽装結婚」の疑いを抱く。金目的の契約結婚か、それとも制度を悪用した偽装か?
税務課、国民年金課、生活支援課……役所の各部署を横断して暴かれる、新郎新婦の意外な過去と接点。なぜ二人は結婚を選んだのか? 年金制度の盲点と、日本国憲法が定める「婚姻の自由」の狭間で、市役所職員たちが見た真実とは……
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【主な登場人物】
1. 住民課(主な物語の舞台・戸籍担当)
婚姻届を受理し、その正当性を調査するメンバーです。
●戸部考一
戸籍担当。40代半ば。ベテランの落ち着きがあるが、同僚の早苗との関係を周囲に疑われている。年の差婚の裏に何かあると察し、実態調査を指示する。
●君本早苗
郵送担当。戸部と同い年。冷静で鋭い視点を持つ。物語の終盤、「二人の間には愛しかない」と断言する。
●天満稔江
庶務担当。明るい性格で、戸部と早苗の仲を冷やかすムードメーカー。
●若石元気
戸籍担当。若手。純粋な疑問を口にし、愛のない結婚の可能性を疑う。
●山門陽平
住民実態調査員。27歳。公用車で現場を回る。不器用ながらも優しく、高熱を出した杏奈を介抱し、川原梨沙から真実を聞き出す重要な役割を担う。
●国広杏奈
住民実態調査員。26歳。山門と調査に回るが、車中で高熱を出し倒れてしまう。
2. 税務課・生活支援課(調査協力)
登場人物の背景(収入や過去)を明らかにする部署です。
●由利源吾
税務課・31歳。独身。軽妙なトークで場を和ませるが、本人はモテないことを自虐している。戸部の調査に協力し、加茂の過去の収入を調べる。
●北見優香
税務課・23歳。由利の同僚。
●笹倉麗子
税務課・59歳。元住民課のベテラン。法律に詳しく、歯に衣着せぬ物言いで由利を圧倒する。
●小暮守正
生活支援課。戸部と同い年。加茂博之がかつて生活保護を受けていた経緯を教える。
3. 国民年金課(知識の提供)
今回の「年の差婚」の経済的なメリットを解説する部署です。
●金塚年昭
国民年金課・42歳。加茂博之から事前に年金相談を受けていた。今回の結婚で「加給年金」が加算されるカラクリを戸部たちに説明する。
4. 婚姻届の当事者
今回の騒動の中心となる二人です。
●加茂博之
夫・64歳。元印刷屋経営。倒産し生活保護を受けていたが、現在はデータ入力のアルバイトで自立している。真面目で不器用な性格。
●川原梨沙
妻・20歳。加茂と同じ会社で働く。身寄りがなく孤独だったが、公園での交流や加茂の窮地を救ったことをきっかけに、彼との結婚を決意する。自分の夢(焼いも屋)を持っている。
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【前書き】
●この小説には多くの数字が出てきます。そこで読者の皆様が読み易いように横書きとなっております
●多人数での会話も多いことから、誰が話しているのか、すぐにわかるよう会話の頭に台本形式で、氏または名を付けて表現しました
●この物語はフィクションです。実在の個人・団体、実際のレースとは一切関係ありません。ボートレーサーと市役所職員をモデルに、フィクションとして制作されたものです
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【01】 年の差婚
午後5時30分、税務課。
業務を終え、由利源吾(31歳)、北見優香(23歳)、笹倉麗子(59歳)が話をしていた。
由利「北見さんは、結婚相手として何歳までOKなの?」
優香「う~ん、由利さんは今、何歳?」
由利「31歳」
優香「じゃぁ、30歳までOK!」
由利「なんだ、それは? う~ん、そこまで嫌われていたとは、」
優香「ふふふふふ」
何とも言えない、媚びるような笑みを浮かべた。
由利「聞くんじゃなかったよ」
麗子「ばかねぇー、そんなの聞く人がアホなのよ」
麗子「由利さんは、結婚相手として何歳までOKなの?」
由利「0歳から120歳まで」
麗子「それ、犯罪になるんじゃない?」
由利「えっ! どこが?」
麗子「男性は18歳、女性は16歳以上(2022年4月より18歳に改正)でなければ結婚できないでしょう」
由利「さすが元住民課。詳しいね。それって、戸籍法で?」
麗子「いや民法(731条)よ」
由利「男女で結婚できる年齢に差があるって、私と北見さんが差別されているみたいで、不公平じゃない? 日本国憲法に反している」
麗子「うん。だから改正するよう各方面から要望が出されており、いずれ改正されるんじゃないの?」
由利「ふ~ん、そうなんだ」
麗子「由利さんは、女性なら誰でもいいんだ?」
由利「私はもてないから、誰でも来ていただけるんなら喜んで受け入れるだけです」
麗子「それでも来ないんだ」
由利「余計なお世話です!」
麗子「ははははは」
優香「ふふふふふ」
由利「北見さんには、声をかける前にふられちゃったな」
優香「ふふふふふ」
由利「まぁ、いいさ。恋することは自由だから、また誰かに恋するさ、迷惑かけないようにね」
優香「AKB48のメンバーなんかどうなんですか?」
由利「もちろん大好きです。推している子もいるけれど、身近で現実味のある恋もしてみたいじゃないですか?」
優香「恋……」
由利「うん。ローマ字で書くと『ケーオーワイ(KOI)』。『ケーオー(KO)』でノックアウト。『アイ(I)』は『私』。ノックアウトされた私ってことか」
優香「ふふふふふ」
麗子「自虐ギャグね」
由利「いつものことよ。映画のフーテンの寅さんと一緒だな」
麗子「この前、誰かと付き合っていなかった?」
由利「2回会って振られた」
麗子「随分と早いのね」
優香「ねぇねぇ、由利さんにとって恋とは何?」
由利「ガムだね」
由利が即答した。
優香「なんで、ガムなの?」
由利「飽きたら捨てられる」
優香「ははははは」
麗子「ははははは」
その日、住民課では、男64歳『加茂博之』と女20歳『川原梨沙』の婚姻届を受け付けた。
翌日、住民課。
昨日の窓口で職員が受付した婚姻届が、戸籍担当者に回ってきた。
稔江「こんなに歳が離れている婚姻届って初めて見たわ。ちょっと見てください」
稔江(庶務担当)が持っていた婚姻届を戸部考一(戸籍担当)に手渡した。
戸部「なるほどなぁ~。う~ん」
早苗「どうしたの? 婚姻届を見て唸るなんて」
戸部「いや、なんでもない」
早苗「『なんでもない』って顔じゃないわね」
稔江「二人って仲が良いんですね」
早苗「とんでもない」
稔江「そうですか?」
早苗「そうよ。単なる同僚ってだけよ」
稔江「なにか、焦ってます?」
早苗「とんでもない」
稔江「まぁ、どうでも良いんですけど」
戸部は深く考え込んでいた。
稔江「何を考え込んでいるんですか?」
戸部「この婚姻届の二人に愛はあるんだろうか? って考えていたのさ」
早苗「『そこに愛はあるんか?』そんなテレビCMがあったわよね」
戸部「ははははは」
稔江「あのCM、シリーズになっていて全部面白いのよね」
早苗「うん。秀逸よ」
戸部「ああ、見たことある。女優さんがどんな役でもこなしちゃうんだよな、すごいね」
戸部が大好きなCMと俳優だった。
稔江が戸部と早苗の二人を指さして、
稔江「あんた方には愛はないの?」
一瞬、間を置いて戸部が、
戸部「ないない」
続いて早苗が慌てて、
早苗「ないわよ」
と言いながら、早苗は動揺していた。
稔江はその一瞬の間と、早苗の動揺を感じながらも婚姻届の話題に戻した。
稔江「愛ねぇ。それって、例えば女性が遺産目当てで結婚したとか?」
早苗「逆に男性が自分の面倒を見てもらうために、やがては介護をしてもらうために若い女性を選んだのかも」
戸部「世界では、年の差婚のギネス記録は95歳差なんだ」
稔江「えーっ、嘘でしょう? それこそ『そこに愛はあるんか?』だわ」
戸部「ソマリアで、男性112歳、女性17歳」
稔江「それ、脅かされて結婚したとか、親の借金のカタで結婚したんじゃないの?」
早苗「それじゃ、時代劇よ」
稔江「越後屋とか?」
戸部「ははははは」
稔江は再度婚姻届を見直しながら、
稔江「男性の名前が『越後屋伝兵衛』じゃないのね」
戸部「ソマリアの112歳の男性は『お互いとても愛し合っているし、若い男にはできないような愛情を注ぐことができる』と、言っているんだ」
稔江「112歳の愛し方って、どういうんでしょうね?」
早苗「小判でお嫁さんの頭を撫でるとか?」
誰も笑わなかった。
戸部「それは、すべったな」
稔江「ははははは。やっぱり、いいコンビですね」
戸部「112歳の男性が『結婚生活は年齢や美しさより、むしろ愛と情熱の問題だ』と言ってたらしいよ」
稔江「『若い方がいい』とか『美人がいい』って、言ってるのは、30歳ぐらいまでじゃないの? 戸部さんはどうなの?」
戸部「そりゃあ、『若くて美人』が、いいさ」
それを聞いて、早苗が戸部の腕をつねった。
稔江「やっぱり二人、怪しいですね」
そこに若石元気が話に入ってきた。
若石「昨日受けた婚姻届、本当に愛があって結婚したってことはないんですか?」
戸部「もちろんあるだろうね」
戸部が婚姻届を若石に手渡した。
若石「二人とも日本人だから、ビザ取得が目的じゃないですしね」
戸部「うん、その通りだ」
若石「じゃぁ、なんなんだろう?」
稔江「なんか変よね」
早苗「うん」
若石「本当に愛し合って結婚したとしても、裏を取っておきたいですよね」
戸部「そうだな」
稔江「若石さんの口から『本当に愛し合って』という言葉が聞けると思わなかったわ」
若石「へへへへへ。女性って愛してなくても結婚できるんですかねぇ?」
早苗「それは出来るわよ。お金のためにどうしても結婚しなくてはならない時だってあるんじゃない?」
若石「えっ! そうなんですか?」
早苗「そうよ。離婚して子供抱えて飛び出したら、愛より先に、まず生活だからね。生きていくためには、そういうこともあるんじゃない」
戸部「そんな夢の無い話を若石さんに話さなくても」
早苗「でも、なんでも知っておかないと」
稔江「やっぱり、二人は良い仲なんですね」
早苗「誰が! もし無人島で戸部さんと二人だけになったとしても顔も合わさないし、口も利かないわよ」
稔江「へーっ、そうなんだ」
戸部「それよりも、この婚姻届の件、一応誰か手の空いている者に実態調査に行ってもらえないかな?」
稔江の追求からのがれ、一瞬だったが早苗はホッとした表情を見せた。
【02】 住民実態調査
戸籍担当戸部の依頼を受けて、山門陽平(やまかど・ようへい・27歳)と国広杏奈(くにひろ・あんな・26歳)が実態調査に出かけた。
山門が公用車を運転し、杏奈が住宅地図を抱えて助手席に座った。住宅地図は一冊の本になっており、杏奈のお腹全体をおおい隠すぐらい大きかった。二人での実態調査は、すでに10回を超えていた。
山門「随分急な実態調査だよね」
杏奈「ええ。でも、全然大丈夫ですよ。ただ、付いて行くだけですから。それに、ずうっと窓口に座っているのも飽きるし、寝不足だからちょうど良かったです」
山門「そうか、それは良かった。急だったんで、あまり地図を見てこなかったんだ。近くまで行ったら、道案内を頼むね」
杏奈「はい、大丈夫です」
その公用車にナビは着いていなかった。なので、杏奈が住宅地図を見ながら道案内をすることになった。
15分ほど走って、車は調査する住居の近くになった。
山門「そろそろ曲がるのかな?」
しかし、杏奈の返事がなかった。山門は運転しながらチラッと杏奈を見た。
山門(寝てる!)
杏奈は、住宅地図を抱えてぐっすりと眠っていた。
山門(まっいいか。相当疲れているか、寝不足なんだろうな)
山門は、運転しながら次の信号が赤になるのを見た。
山門(よしっ、あの信号で止まって曲がる所を住宅地図で確認しよう)
山門は住宅地図を見る準備として、徐行し前方を見ながら、左手で杏奈の抱えている住宅地図を取ろうとした。そのとき、眠りに落ちた杏奈の手から偶然にも住宅地図が杏奈の足に当たって車内の床に落ちた。
カタン!
杏奈は、地図が足に当たったのと、落ちた音で目を覚ました。
山門の左手が、地図が落ちたために杏奈の右胸をつまんだ。
同時にふたつの現象が起きた。
パシッ!
杏奈の右手が強烈に山門の左ほおを叩いていた。
山門「うっ!」
車が赤信号で止まった。
山門(仕事中、寝ている奴に、なんで叩かれなきゃいけないんだ)
二人が黙ったまま車は次の路地を曲がって停車した。
山門「ゴメン。寝ていたから地図を取ろうと手を伸ばしたら、ちょうど地図が落ちたんだ。タイミングが悪くて、そのう、胸に触れてしまった訳で」
杏奈「……」
山門が杏奈から地図を取り、調査先の住居への道順を確認した。住居は共同住宅の一室である。地図を杏奈に渡し、車を動かした。
すぐに、調査先の共同住宅に着いた。目的の家から少し離れた道路脇に駐車した。
山門「ちょっと見て来るから、ここで車を見ていて」
山門は、杏奈の返事を聞かずに車から出て行った。
『コーポサンクス』、ここの一室が20歳の女性、『川原梨沙』の住所地だった。
山門は最初に入口にある集合ポストを見た。名前が書いてあるかどうか、郵便物やチラシが入ってないかどうかの確認である。
山門(名前なし。チラシは溜まっていない)
3室ずつの3階建て、合計9室。調査対象は、102号室、1階の真ん中だった。
山門が細部に目をやる。洗濯物、電気メーター、通路の汚れ、窓のカーテン、ベランダ、内部からの音。その状況を調査票に記入していく。
山門(電気メーターは、回っているな。でも洗濯物は無し、郵便物無し、物音も無し。本当に二人で住んでいるのか?)
一通り外回りを見終わったところで、山門は、用意した『訪問票』を取り出した。そこに『川原梨沙様、ちょっとお教えいただきたいことがございますので、美浦市役所・山門までお電話ください』と書き、郵便受けにいれ、車に引き返した。山門が車のドアを開けると杏奈は再度寝ていた。
山門(なんだ、コイツは? ドアを開けても起きないのか?)
地図がサイドブレーキの横に落ちていた。
山門が国広の顔から足元へと目をずらしていった。
山門(ぐっすりと寝ているな。うっすら口を開け、足を広げちゃって、パンツが見えそうじゃないか)
山門が運転席に座って『コーポサンクス』の方へ視線をずらした。
山門(うん? 変だな?)
少し頭をかしげた。
そしてすぐに、クイッと首を国広の方へ回した。
山門(頬が赤い、熱か?)
山門「熱があるのか?」
国広は起きなかった。
山門「ちょっとおでこに触るよ」
それでも国広は起きなかった。
山門が国広のおでこにそっと手をやった。そして反対の手で自分のおでこの熱と比べた。
山門(熱い。熱がある。…やっぱり変だ。熱で寝ているのか)
山門はゆっくりと発車させた。
それから15分後、国広を乗せた車は、国広の自宅へと到着した。一軒家で、国広は家族と住んでいる。
「ピンポーン」
山門がインターホンを押した。しばらくして母親が出てきた。
母親「はい」
山門「こんにちは」
母親「こんにちは」
山門「突然すみません」
母親「はい」
山門「美浦市役所の山門と申します」
母親「まぁ! いつも娘がお世話になっています」
山門「こちらこそ」
母親「なにかありましたか?」
山門「実はですね」
母親「はい」
山門「今、国広さんと二人で、調査で市内を回っていたのですが」
母親「はい」
山門「急に国広さんの様子がおかしくなって」
母親「えっ!」
山門「ひょっとしたら、高熱が出たんじゃないかと思いまして」
母親「えっ!!!」
母親が近くを見回した。
山門「そこに公用車を停めたんですが、その中で国広さんがぐっすりと眠っているんです」
山門が車を止めた方を指さした。母親がその指さした方へと歩き出した。
山門「熱で寝ているような気がするんです」
母親が車の窓越しに娘を見た。
母親「あらっ」
今、車を玄関前に着けますから、その間に布団の用意をしてもらっても構いませんか?」
母親「はい」
母親は家に入り、山門は車を玄関の前に着けた。
それから二人がかりで、国広を家の中へと運んだ。国広もぼんやりとしながら立ち上がることが出来た。
母親が国広を寝かしつけ、山門は玄関で待っていた。
母親が玄関に戻ってきた。
母親「すみませんでした」
山門は「いいえ。では、私はここで失礼します。国広さんが起きたら、『休暇で処理しておくから』と、お伝えください」
母親「わかりました」
山門は、国広の家を出て、車を走らせた。
その日の夜。
山門は、花屋に居た。
山門「う~ん、なんにしようかな?」
花屋の主人らしき男性が近づいて来た。主人は大柄で体格も良く、花屋というよりもプロレスラーという感じだった。
花屋「なんにお使いですか?」
山門「お見舞いです」
花屋「何歳ぐらいの方?」
山門「25、6歳だったかな?」
花屋「そうですね、花束でなく、フラワーアレンジメントにされたらどうですか?」
山門「フラワーアレンジメント?」
花屋「ええ、花を器や籠に盛るんです。洋風の生け花ですね。花の持ちもいいですよ」
山門「では、それで」
花屋「金額は?」
山門「いくらぐらいからですか?」
花屋「3千円でもできますが、ちょっと寂しいかな。5千円なら充分ですね」
山門「では、それでお願いします」
花屋が手際よくフラワーアレンジメントを作り上げた」
山門「わーっ、いいですね」
花屋「ええ。もらってすぐそのまま見える所に置けますから、起き上がって生け変えなくて済みます」
山門「それはいい! さすがですね!」
花屋「商売ですからね」
山門は花屋でフラワーアレンジメントを受け取り、そのまま国広の家へと向かった。
「ピンポーン」
しばらくして国広の母親が出てきた。
母親「あらっ、まぁ」
山門「これ、ほんのお見舞いです」
フラワーアレンジメントを手渡した。
母親「すみません」
山門「熱、何度ぐらいでした?」
母親「9度5分ありました」
山門「9度5分!」
母親「ええ。送っていただき助かりました」
山門「今は?」
母親「ぐっすり寝ています」
山門「そうですか。明日、無理しないようお伝えください。もちろん休んで大丈夫ですから」
母親「ありがとうございます。そう、伝えておきます」
休んで「では、失礼いたします」
山門が帰って行った。
フラワーアレンジメントの花の間にメッセージカードが封筒に入って挟まっていた。母親が、それを開けて中を見た。
『信じてください』
母親「なんだろう? どういう意味?」
母親は封筒を元に戻し、フラワーアレンジメントを杏奈の見える所に置いた。杏奈はまだ眠ったままだった。
翌日。住民課。
山門「実態調査の結果ですが、二人が一緒に生活しているのか、していないのか、まだ分かりません。しばらく調査を続けます」
戸部「そうか、悪いね」
山門「いいえ、仕事ですから」
戸部「そうか」
山門は自席へ戻って行った。
稔江「やっぱり、判らないわよね」
若石「うん、本当の結婚なのか、偽装結婚なのか?」
稔江「調べる方法がないものね」
同じ島に座っている4人が頭を悩ませた。
戸部「ちょっと税務課に行ってくる」
早苗「はい」
戸部が税務課に向かった。




