72 ♡デバガメ隊、不倫を目撃!編
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【あらまし】(単純に笑えるスシチュエーション・コメディ)
未使用の花火を処分するため、平日の夜、秋ヶ瀬公園へと車を走らせた市役所職員の男女4人。賑やかに始まるはずの「花火処分作戦」だったが、暗闇の駐車場で彼らが目撃したのは、なんと同じ職員たちの「不倫現場」だった!
思わぬスキャンダルに色めき立つ「デバガメ隊」の4人。正義感から暴走しかける税務課由利。4人が巻き起こすシチュエーション・コメディ。
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【主な登場人物】
丹沢純也 31歳男 美浦市役所住民課主事
由利源吾 31歳男 美浦市役所税務課主任
永野美咲 25歳女 美浦市役所住民課主事
北見優香 23歳女 美浦市役所税務課主事補
川辺直樹 40歳男 美浦市役所財政課係長
谷川ルミ 25歳女 美浦市役所庶務課主事
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【前書き】
●この小説には多くの数字が出てきます。そこで読者の皆様が読み易いように横書きとなっております
●多人数での会話も多いことから、誰が話しているのか、すぐにわかるよう会話の頭に台本形式で、氏または名を付けて表現しました
●この物語はフィクションです。実在の個人・団体、実際のレースとは一切関係ありません。ボートレーサーと市役所職員をモデルに、フィクションとして制作されたものです
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【01】 未使用花火の捨て方は?
平日の夜、男2人(住民課丹沢純也・税務課由利源吾)と女2人(住民課永野美咲・税務課北見優香)が由利の車に乗り込み、荒川べりにある秋ヶ瀬公園に花火をしに行った。
事の発端は、税務課北見優香が「家に置いてある古い花火を処分したい」と言うことからだった。
数時間前の税務課。
優香「由利さん、」
由利「はい」
優香「未使用の花火って、ゴミの捨て方、わかります?」
由利「燃えるゴミで捨てればいいんじゃないかな? 花火ならそれこそ良く燃えるだろう。ははははは」
優香「えっ! 危険物じゃなくて?」
由利「なるほど。そうか、収集車の中でロケット花火が『ヒュー、ドカン』と音がしたら、運転手がびっくりしちゃうか」
優香「電柱に、車ぶつけちゃうかも」
由利「しかも、誰も花火が見られないなんて、もったいないな」
優香「そういう問題じゃないでしょう」
由利「ははははは」
優香「他の人に聞いたら『収集車の係員さんに手渡しじゃないの?』って言うんです」
由利「えーっ、それはないだろう。収集車って何時に来るかわからないし、優香さんが仕事を休むことになったら私が困るよ。税務課にとって優香さんは、居ないと困る存在なんだから」
優香「本当ですかぁ~?」
由利「本当だとも。職場には、居ないと困る人と、居ると困る人が存在するんだよ」
優香「それ、すごーくわかります」
由利「だろう。優香さんが居ないと私の仕事が2倍、いや、それ以上になってしまうんだよ」
優香「そう言ってもらえるだけで光栄です」
由利「ところで、なんだったっけ?」
優香「『花火』です。もう忘れっぽいんだからぁ~」
由利「そうだ、そうだ。『花火』だった」
優香「で、どうしましょう?」
由利「わかった。じゃぁ、こうしよう」
優香「はい、」
由利「今晩、仕事が終わったら、私の車で北見さんの家に行くから。そうしたら、花火を持って荒川沿いの公園で、一気に火を点けて使っちゃおうよ。綺麗だぞ、きっと」
優香「いいんですか? 私ごときのために、車を出してもらっちゃって」
由利「もちろんさ。私と北見さんの仲じゃないか?」
優香「そういう仲ではありませんけれど」
由利「はっきり言うなぁ~。まぁ、そうなんだけれど」
優香「でも、助かります」
由利「そうよ。縁あって同じ役所、同じ課に配属されたんだから仲良く、困ったときは助け合わないと」
優香「ありがとうございます。でも、二人っきりは嫌ですよ。暗い夜に、何をされるかわからないから」
由利「ははははは。信用されてないんだな」
優香「今は信用してます。でも、暗くなって二人っきりになったら、……ほら、私のこの美貌、それが相手の理性を無くしてしまうんですよ」
由利「ははははは。この課に来て、私と話しているうちにおしゃべりが上手くなったなぁ」
優香「てへへへへ。わたしの白雪姫のような美しさが他人の罪を呼び起こしてしまうんです。私って本当に罪な女ですよね」
由利「そうそう、北見さんは罪作りな女性だよ」
優香「認めてくれます?」
由利「でも、誰も襲わないよ。二人だけが嫌と言うのなら、住民課の丹沢さんと、あと誰か女性ひとりを連れてくるよう頼むよ」
優香「はい。では、ぜひお願いします」
優香が頭を下げた。
由利(しかし、俺って、信頼されてないし、まったくモテないんだなぁ~。いやんなっちゃうね)
由利はそのまま住民課に行くと、今の話を丹沢に伝えた。
丹沢「わかった。誰か連れて行くよ。その代わり、誰になるかはわからないよ」
由利「うん。急だからな。悪いね」
丹沢「ウチのマンションの管理人のおばちゃんでもいいかな?」
由利「何歳なんだ?」
丹沢「70歳ぐらいかな?」
由利「勘弁してくれ。それだけは勘弁!」
丹沢「ははははは。随分理想の高い奴だ!」
由利「70歳は、理想以前の問題だろう?」
丹沢「それなら税務課の笹倉麗子(58歳)さんは?」
由利「無理!」
丹沢「どうして?」
由利「あの人とのお付き合いは、5時15分までが限界だ」
丹沢「そうか、まぁ誰か後期高齢者を探しておくよ」
由利「頼むよ、期待はしてないから」
丹沢「うん、わかった」
由利はすぐに自分の職場へと戻って行った。
丹沢は、周りを見渡し、永野美咲に声を掛けた。どう見ても、こんなことに付き合ってくれそうなのは、彼女しかいなかったからだ。
丹沢「と言うことなんだ。他に頼める人がいないんだ。頼みますよ」
美咲「いいわよ。その代わり、夕食奢ってね」
丹沢「ええ、そのぐらい当然です。4人でどこかコンビニのイートインで食べましょう」
美咲「うん、わかった。じゃぁ、帰りね」
その日、終業時間となり、住民課の窓口の仕事も一段落すると、丹沢と美咲の2人は市役所の近くある由利の借りている駐車場へと向かった。
由利と優香は、すでに由利の車の中で、2人が来るのを待っていた。
丹沢「お待たせ」
助手席には、すでに優香が座っていた。丹沢と美咲は、車の後部座席に乗り込んだ。
由利「さてと、じゃぁ、先に北見さんの家に寄って、花火を取って来て、その後、コンビニで食事をしようか?」
丹沢「うん」
優香「はい」
美咲「わかりました」
【02】 不倫を目撃
車が出発した。北見宅、コンビニ、そして車は秋ヶ瀬公園の駐車場に着いた。
由利「さてと。どこに停めようかな?」
由利は、駐車場内を徐行した。
優香「けっこう停まっているんですね」
由利「うん。びっくりだね」
優香「右も左も結構駐車してますね」
由利「うん」
優香「でも、車と車の間隔がかなり空いているんですね」
由利はそれには答えず、
由利「あっ、あそこがいいな」
3台分ぐらい空いているスペースを見つけ、その真ん中にバックで駐車し始めた。向かいの列には何台かが、等間隔で駐車していた。
由利は後ろ向きにハンドルを切っていた。
すると、
優香「あっ!」
優香が正面の車から見られないように、身をかがめた。
由利が駐車し終わると、
優香「由利さん、隠れて!」
由利が慌てて、優香と同じく身をかがめた。
2人がダッシュボードの下で会話をし始めた。
優香「前の車、乗っているのは、財政課の川辺さんと、庶務課の谷川さんですよ」
川辺直樹(かわべ・なおき・40歳)は財政課の係長、谷川ルミ(たにがわ・るみ・25歳)は庶務課の主事だった。
由利「えっ! 嘘だろう」
後部座席にいた丹沢と美咲にもその会話が聞こえた。
美咲が前の座席を盾に使いながら、前方に駐車された車内を注視した。
美咲「そうです。川辺さんと谷川さんで間違いないです」
由利「そういう仲だったのか?」
優香「そう言えば、谷川さんは前、財政課でした」
由利「じゃぁ、そこで?」
優香「そうかも知れませんね」
由利「今、二人は何をしてる?」
美咲「少しだけリクライニングシートを倒して、お互い見つめ合いながら会話しているわ」
由利「二人とも結婚しているんだっけ?」
美咲「谷川さんは独身だけれど、川辺さんは結婚しています」
由利「と言うことは、不倫?」
美咲「ですかね?」
優香「でも、会話だけで済むのなら、……どうなんでしょう?」
由利「しかし、ここまで来て仕事の打ち合わせはしないだろう。課も違うし、しかも、時間が時間だよ」
優香「ですよね。じゃぁ、やっぱり不倫?」
美咲「問題は、これからの二人の仕草ですよね」
優香「気になりますよね」
丹沢「えっ、ずっと見る気?」
美咲「だって、はっきりさせたいじゃない?」
由利「うん、賛成だな」
美咲が真剣に前の車を見ている。
丹沢「これじゃぁ、我々完全なデバガメ隊だな」
優香「『デバガメ』って?」
由利「昔『出っ歯の亀太郎』という男が居て、のぞきの常習犯だったことから『覗いている男や覗き見のこと』を言うようになったんだ」
丹沢「由利さんは教養あるなぁ~。いつから?」
由利「今日よう(教養)」
丹沢「ははははは」
優香「ふふふ」
美咲「ふっ」
優香「じゃぁ、由利さんはその『出っ歯の亀太郎』ですね。明日から由利さんのことを『亀太郎』って呼んでもいいですか?」
由利「やめてくれよ!」
丹沢「ははははは」
優香「ふふふふふ」
美咲「ふふふふふ」
声を押し殺し、身を沈めて笑った。
由利「その亀太郎なんだけれど、本名は池田亀太郎って言うんだ。その後、ある強姦殺人事件の犯人として警察に捕まるんだ」
優香「実は怖い人だったんだ?」
由利「いや、以前からよく女湯を覗いていたという理由だけで捕まったんだ」
優香「じゃぁ、気が弱いんじゃないの?」
由利「でも、裁判の結果、13年間も服役したんだよ」
美咲「13年も!」
優香「その間、刑務所でも男湯を覗いていたのかしら?」
由利「男が男を見てどうするんだよ」
優香「そっちに趣味を変えたとか?」
由利「そんなバカな」
丹沢「いいコンビだな」
由利「それでね、殺人現場に残された足跡と亀太郎の足跡は、実際には違っていたんだよ。このことから冤罪だという説もあるんだ」
美咲「そうよ。覗き見する人に悪い人は居ないと思うわ」
由利「それ、今の自分をかばっているんじゃない?」
美咲「へへへへへ。 あっ!」
由利「どうした?」
美咲「谷川さんが川辺さんの上に覆いかぶさった!」
由利「えっ!」
4人が、顔を上げ、前方の車を見始めた。
丹沢「谷川さんもやるねぇー」
由利「谷川さんに憧れていたんだけれどなぁ」
優香「そうだったんですか?」
美咲「でも仕方ないわね。私が谷川さんの立場だったら、やっぱり由利さんより川辺さんを選ぶわ」
由利「やっぱり私はモテないのかぁ」
美咲「あ、あっ!」
由利「えっ!」
優香「うわっ!」
谷川ルミと川辺係長がキスをし始めた。
由利「うわーっ、見たくねぇー」
美咲「不倫決定!!!」
由利「やめてくれー。悪夢だ」
川辺係長が自分のシートをもっと倒し、水平近くにした。
由利の車からは、中の様子が見にくくなった。かすかにルミの背中だけが見えていた。
由利「ちくしょう! もう行こう」
運転手の由利が言った。
美咲「行くの?」
由利「これ以上見ていてもしょうがないだろ、嫌な気分が増すだけだ」
美咲「そうね」
優香「任せます」
結局、その日は花火をすることもなく、市役所に戻った。
由利「では、今日は解散しましょう」
優香「花火はどうしましょう?」
由利「車に積んだままでいいよ。近いうちにやりましょう」
優香「はい、お願いします」
4人は解散した。由利はひとり自宅へと車を走らせラジオをつけた。
『♪終わりにしたほうがいいって、頭でわかっても、心が言うことをきかなくて~』
JUJUの『Distance』が聞こえてきた。
【03】 2度目の偵察
翌日。
4人は誰から言い出すということもなく、なぜか自然と、今日も仕事終わりにみんなで昨日の公園に行くことに決まった。
由利「花火、預かっているしなぁ」
優香「車に積んでおいても良くないですよね」
美咲「あの不倫の二人、まさか今日もなんてことはないと思うけれど、気になるわね」
丹沢「みんなが行くのなら付き合いますよ」
と言う感じで結局、また昨日と同じように、メンバー4人はコンビニ経由で秋ヶ瀬公園へ行くことになった。
由利が借りている市役所近くの駐車場。4人が由利の車に乗った。
美咲「やっぱり、私たちデバガメ隊なのかしら?」
優香「亀太郎さんは、どう思います?」
由利「誰が『亀太郎』じゃ!」
丹沢「ははははは」
その途中、コンビニのイートイン。4人は食べながら、
由利「そんな連日で居るわけがないですよ」
美咲「そうよねぇ、しかもあんな所で。どうせなら、もっと良い所に行くんじゃないの?」
優香「でもラブホテルだと帰りが遅くなっちゃうし、人通りのある所だと、すぐ誰かに見つかっちゃいますよ。市役所の職員って千人近く居るんでしょう?」
美咲「そうよねぇー。二人だけで会うのも難しいものね。誰にも見られず、手っ取り早く二人きりになるには、やはりあそこなのね」
丹沢は、それを聞きながら肉まんと味付ゆで卵を黙々と食べていた。
コンビニを出てその後、車の中でなんだかんだ言っている内に、車は昨日の公園駐車場に着いた。
由利「あっ居るぞ!」
最初に気づいたのは、運転手の由利だった。
美咲「えっ!」
丹沢「ほんとだ」
みんなが驚いた。
由利は、あらかじめポケットに用意したマスクをし、昨日と同じように通路を挟んで相手の車の前方に車を停めた。
優香は、またもダッシュボードの下に隠れた。
4人は一斉に車の窓ガラスを通して相手の車の中の様子を覗き始めた。
由利「二日連続のデバガメ隊だよ」
美咲「人間って、ゴシップが好きなのかしら?」
優香「だから、週刊誌って売れるんですよね」
前方の車では、ルミが何かぼそぼそとつぶやいている。川辺は、たまにそれに頷いていた。
ルミは、手にパンフレットのようなものを持っていた。川辺もプリントのような書類を持っていたが、すぐにダッシュボードの上に置いた。
また、ルミが何か言い始めた。何を言っているのか、4人には全くわからなかった。
由利「なんの書類持っているのかなぁ?」
優香「パンフレットじゃない」
美咲「旅行のパンフレットかも?」
由利「二人でどこかへ行くとか?」
美咲「そうかも?」
由利「川辺さんって、子供さんがいるのかなぁ?」
美咲「おそらく」
由利「妻も子もいるのに、不倫旅行ってこと?」
美咲「ありえるわよ」
由利「許せない、俺、あいつのこと許せない!」
丹沢「そう熱くなるなって」
すると今度は、川辺とルミの間でなにか言い合いになった。そして、突然ルミが涙を流し始めた。
優香「もめ始めたわよ」
由利「不倫のあげく、彼女を泣かせるなんて!」
丹沢「昨日までは、キスして仲良かったのになぁ~。わからないもんだ」
美咲「彼女に旅行をせまられて、川辺さんまずくなったんじゃないの」
【04】 ケンカの止め方
由利「あいつめ! 俺、殴ってくる」
由利の顔が、今まで3人が見たことのないほど恐ろしい形相になっていた。
丹沢(まずい、このままではケンカになる!)
丹沢(なんとか止めないと)
丹沢は咄嗟にそう思った。
丹沢「まぁ待てよ」
丹沢は由利を後ろから羽交い絞めにして、必死に押さえた。
しかし、由利の力はすごかった。丹沢は、このままずうっと由利を押さえるのが難しいと思った。
美咲も優香もあせった。
美咲「ダメよ、ケンカは」
優香「そうですよ。相手は上司ですよ」
由利「いや、人間として許せん!」
そのときだった。丹沢が最後の力を腹に込めた瞬間、
丹沢が「ブーーーッ!!!」
すごい音でおならした。
由利「嘘だろ、こんなときに」
優香「すごい音ですね、これ、相手に聞こえたんじゃないですか?」
美咲「そんなわけないでしょ、お互い車の中だし。おならで相手にばれるなんて絶対ないわよ」
優香「うっ、苦しい。苦しいわ。すごいにおい!」
優香が苦しみ始めた。
由利「このにおい、耐えられないな」
美咲「このくらい耐えられるでしょ」
由利「いや、無理かも。半端なにおいじゃないよ、これは」
優香「ダメ! 私ダメ! もどしそう」
美咲「私も、気持ち悪くなってきた」
由利「限界だ!」
最初に由利がドアを開け、開いたドアの下に身を隠し倒れ込んだ。
同様に優香、美咲が続き、自分の横のドアを開け、由利と同じように開けたドアの後ろで外気を吸い始めた。
車の中には、おならした張本人である丹沢だけが取り残された。
優香「はぁ、はぁ、はぁ」
美咲「はぁ、はぁ、はぁ」
由利「ふーーーっ」
由利は大きく深呼吸して、
由利「少し楽になったかな」
優香の顔は、青くなっていた。
優香「吐きそう……」
後ろのドアに隠れていた美咲が前に回り、
美咲「大丈夫?」
美咲が優香の背中をさすった。
取り残された丹沢も、自分のおならのくささに耐えられなくなったのか、やっとドアを開けて出てきた。
丹沢「今日のは、くさいわ~」
由利が丹沢に向かって、
由利「なんで、こんなときにおならなんだよ?」
丹沢「過敏性腸症候群なんだから、仕方ないよ」
由利「なんだ、それ?」
丹沢「神経が過敏に反応しちゃったんだろうな」
由利「車にサリンをまかれたのかと思ったよ」
丹沢「ゆで卵が効いたのかな?」
二人が前方の車に聞かれないようぼそぼそ喋った。
前方、川辺の車内で。
川辺「前の車、ドアが開いた」
ルミ「本当ね」
川辺「うん? なんだ? 前の車ドアが開いたけれど、人が出てこない?」
ルミ「怖い人かな?」
川辺「おかしいな。時間が経っても出てこないぞ」
ルミ「不気味ね」
川辺「変な連中かもしれない。」
ルミ「すぐ出ましょう。」
川辺「うん、場所を変えよう」
川辺はエンジンをかけた。
由利「おっ! エンジンをかけた。ばれたのかな?」
川辺の車のライトが点いた。
あわてて4人は、車のドアの後ろに、完璧に身を隠した。
川辺とルミの乗った車が、急いで動き出した。そして、あっという間に消えていった。
優香を除いて3人は立ち上がった。そして、車の座席のクッションや自分の着ている服を使い、車の中のにおいを追い出し始めた。
においが残らないように、念入りに車内の空気を扇ぎ続けた。
由利「OKだ。もう乗れるよ」
優香「はぁ、はぁ、はぁ。やっと落ち着いたわ」
美咲「良かった!」
4人が車に乗り込んだ。車に乗ると、
由利「うん、大丈夫だな」
由利がみんなを安心させた。
由利「丹沢さんはおならのにおい、なんともないんだ」
丹沢「免疫があるからね」
由利「そうか」
優香「私、これで免疫ができるかな?」
美咲「1回じゃ無理かも。それより、おならの音で、ばれたのかなぁ?」
由利「いや、音じゃないな。ドアが開いてびっくりしたんだよ」
美咲「そうか、それにドア、開けっ放しだったものね」
由利「うん。こういう所で、ドアの開けっ放しは厳禁でしょ」
美咲「でも、良かったわ」
由利「なにが?」
美咲「ケンカにならなくてよ」
優香「そう、そう。由利さんすごい形相だったから。一瞬どうなるかと思いました」
美咲「丹沢さん、ナイスプレーよ」
丹沢「ははははは。そんなに、ほめられると照れるな」
優香「おならして褒められたなんて初めてじゃないんですか?」
由利「そこまで言う」
丹沢「ははははは」
由利「しかし、そんなに怖い顔をしていたかなぁー?」
優香「してましたよ。異常なほど」
由利「そうか。それは、それはゴメン」
優香「もういいですけれどね」
由利「谷川さん、初めて市役所で見た時、可愛かったんだよなぁ。それがねぇ~、あんなことをするなんてショックだぁ」
丹沢「そう言えば、当時『好みだ』って言ってたよな」
優香「今は、どうなんです?」
由利「今も悪くないと思っていたし、チャンスと言うか、きっかけがあればと思っていたけれど、あれを目の前で見ちゃったらなぁ~。もう無理だね」
優香「意外です。由利さん過去にこだわるんだー」
美咲「ふーん」
美咲が軽く頷いた。
由利「そのケースにもよるけれど、谷川さんの相手が知っている人で、なおかつ上司じゃな」
優香「丹沢さんは、過去にこだわるタイプですか?」
丹沢「まったくこだわらない。『3秒経ったら遠い過去、10秒経ったらすべて忘れた!』だね。すぐに忘れちゃうよ。ははははは」
それから数ヶ月後。
谷川は突如、市役所を辞めた。どうやらこの4人とは別の職員に不倫の現場を見られたらしい。そして、川辺係長はその男性職員に胸ぐらを掴まれたらしい。
見られた場所はスナックで、谷川ルミが泣き始め、その隣で川辺が謝りながらルミの手を握り、もう片方の手で肩を抱えていた。ちょうどそこに男性職員がスナックに入って来て、
職員「なんですか、これは?」
川辺「……」
川辺が黙秘を続けていると、
ルミ「これは芝居のオーデションの練習で不倫じゃない」と言い張ったらしい。
その件があってまもなくして、ルミは「役者になります」と言って、人事課に辞表を提出した。
「役者になります」と言うのが本当かどうかは誰にもわからない。ただ、ルミが役者をやっているという情報は、その後、誰の耳にも入って来なかった。
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【後書き】
最後までお読みいただきありがとうございました! 未使用花火を処分するはずが、まさかの「不倫現場の張り込み」になってしまった住民課&税務課コンビ。
それにしても、丹沢さんの「おなら」のタイミング……(笑)。修羅場を止めるための究極の防衛本能だったのでしょうか。車内であの至近距離は、ある種の花火より破壊力があったかもしれませんね。
結局、不倫疑惑の谷川さんは「役者になる」と言い残して去っていきましたが、あの時の涙も「オーディションの練習」だったのか、それとも……。
皆様も、夜の公園での「開けっ放しのドア」と「ゆで卵の食べすぎ」にはくれぐれもご注意ください!
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【作者よりお願い】
最後までお読みいただきありがとうございます! 花火を処分しに来たはずが、まさかの不倫現場の目撃、そして丹沢さんの「ナイスプレー(?)」……。
振り回される由利さんや優香さんたちの掛け合いを楽しんでいただけたでしょうか? 「この4人の空気感が好き!」「おならでの解決は笑った」と思っていただけましたら、下の**【☆☆☆☆☆】評価とポイント**で応援いただけますと、執筆の励みになります!
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