123 ★五郎と志乃のシュークリーム(その3) ~妻のガンが転移~
【03】 ガンが腎臓にも転移
それから2カ月が経った。手術や投薬により、妻志乃の入院は長引いていた。
『美浦第一病院』の診察室で、五郎は医師の前に座り、静かに言葉を待っている。
医師「奥様の経過は良くないです」
五郎「と、言いますと」
医師「ガンが腎臓に転移しています」
五郎「……」
五郎は、言葉を失っていた。
医師「かなり難しい状況です。もともと糖尿病があり腎機能が衰えてました。そこにガンが転移しましたので、これからは人工透析を始めなければなりません」
五郎「はい。お願いします」
五郎には、なんとなくこれからの想像がついた。
医師「奥様には、明日私から話します」
五郎「よろしくお願いします」
自分から妻にガンが転移していることは言えなかった。
医師「ご主人様は、今日何も聞かなかったことにして、明日奥様から話を聞いてください」
五郎「はい」
医師「ご主人に伝えるよう話しておきますので」
五郎「先生が妻に、人工透析を始めることは伝えるとして、ガンが腎臓に転移していることも、伝えるのですか?」
医師「そのときの様子を見て決めます。まかせていただいてよろしいですか? それとも話した方がいいとか、話さない方がいいとか、ご希望がありますか?」
五郎「いえ特にありませんので、よろしくお願いいたします」
そう言うしかなかった。すでにもう五郎の頭の中は考えるだけの余裕がなくなっていた。




