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女子ボートレーサーと市役所職員  作者: 池井 けい
第14章 五郎と志乃のシュークリーム  ~「ねぇ、私あと何日で死ぬの?」〜
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122 ★五郎と志乃のシュークリーム(その2) ~妻、志乃の診断結果~

【02】 課長、井手五郎の妻


 昨日、国民年金課長の井手五郎は、診察室に座っていた。その向かいに医師の塩山雄二(しおやま・ゆうじ・60歳)が座っていた。

医師「奥様の診断結果は、ガンです」

五郎「……はい」

 一瞬詰まってから返事をした。

医師「膵臓ガンです。このまま入院ということになりますが、よろしいでしょうか?」

五郎「はい」

 五郎の妻、志乃しのは検査のため3日前から入院していた。検査入院という名目だった。

 そして今日、検査結果が出た。

 五郎は、ガンという可能性があることは認識していたが、実際医師からその病名が告げられ、病名が確定してみるとなんとも言えない気持ちになった。

医師「奥様に告知しても大丈夫ですか?」

五郎「はい」

医師「では明日、定時の診断で奥様にお話しします」

五郎「よろしくお願いします」


 翌日、五郎の妻、志乃に医師から膵臓ガンであることが告げられた。

 志乃は、特に動揺した様子も見せずに医師の言葉を受け止めていた。


 病室にもどった志乃は、いろいろなことを考えていた。

 これからの病院生活のこと、なぜこんな病気になったのか、五郎のこと、家事のこと、順番に考えていた。

 考えざるを得なかった、志乃にとってすべての生活が一変するのだから。


 その日の夜、五郎が病室に来た。志乃は医師から告げられた病名を五郎に伝えた。

志乃「検査の結果、膵臓ガンですって」

五郎「そうか、で?」

志乃「『すぐにどうってことはないので、入院して治療に専念してください』って」

五郎「そうか、良かった。先生の言うとおりにして早く治そう」

 病室は6人部屋だった。五郎は志乃の耳元で、他の入院患者に聞こえないように、

五郎「こんなところ、早く出なきゃな」

 小声で言った。


 検査だけの入院のはずが、本格的な入院となってしまった。

五郎「少々窮屈な生活になるなぁ」

志乃「大丈夫よ、心配しないで」

五郎「そうか」

志乃「そうですよ、入院なんてホテルに行ったようなものよ、食事をベッドまで運んでくれるのよ」

五郎「なるほどな」

志乃「注射は蚊に刺されたようなものよ。でも蚊みたいにかゆくないから助かるわ」

五郎「ならいいが」

志乃「もし手術になったとしても、手術なんて爪を切ってもらうようなものよ、痛くもなんともないわ」

五郎「頼もしいよ」

志乃「だから心配しないで」

五郎「ああ」

志乃「あなたは、お仕事に専念してください」

五郎「うん、そっちも治療に専念して、早く退院してくれよ」

志乃「ええ」

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