121 ★五郎と志乃のシュークリーム(その1) ~台風5号が強い勢力でこっちへ~
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【あらすじ】(ここから読み始めることも出来ます。センチメンタルなエピソード)
~~~ 妻「ねぇ、私あと何日で死ぬの?」、その問いに夫は…… ~~~
市役所の年金課長・井手五郎。職場ではひょうきんでおちゃめな上司として振る舞い、休暇理由も「痔の治療」と冗談めかして話していたが、実は妻・志乃が末期の膵臓ガンで入院していた。
日に日に病状が悪化し、腎臓へ転移して透析が必要となる中、互いに相手を思いやるがゆえに明るく振る舞い続ける夫婦。志乃は夫の生活を心配し、独身の親友・京子に五郎の食事の世話を頼む。しかし、悲しみと看病の疲弊に苛まれる五郎と、彼を支えようとする京子との距離は徐々に縮まっていき……。
30年前の甘酸っぱい出会いの記憶と、残された命のカウントダウン。それぞれの優しさと嘘が交錯する中で迎える、夫婦の切なくも温かい愛の物語。
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【登場人物】
●主要登場人物
井手五郎(いで・ごろう・52歳): 美浦市役所・国民年金課長
井手志乃(いで・しの・49歳): 五郎の妻(旧姓:今泉)
氏家京子(うじいえ・きょうこ・49歳):独身で志乃の親友
●職場・家族関係の登場人物
金塚年昭(かねつか・としあき・42歳): 国民年金課主任。
烏丸千歳(からすま・ちとせ・44歳): 国民年金課係長。
今泉清司(いまいずみ・きよし・77歳): 志乃の父親。
今泉幸子(いまいずみ・さちこ・73歳): 志乃の母親。
塩山雄二(しおやま・ゆうじ・60歳): 志乃の主治医(美浦第一病院)。
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【前書き】
●この小説には多くの数字が出てきます。そこで読者の皆様が読み易いように横書きとなっております
●多人数での会話も多いことから、誰が話しているのか、すぐにわかるよう会話の頭に台本形式で、氏または名を付けて表現しました
●この物語はフィクションです。実在の個人・団体とは一切関係ありません。市役所職員をモデルに、フィクションとして制作されたものです
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【01】 井手五郎、昨日の休暇の理由は嘘
朝8時。美浦市役所・国民年金課の始業前。
課長は井手五郎(いで・ごろう・52歳)である。昨日休んでいた井手が出勤して来た。
金塚年昭(かねつか・としあき・42歳)主任が、
金塚「おはようございます!」
課長「おはようさん!」
金塚「体調はいかがですか?」
課長「うーん、齢のせいか、イマイチだね」
金塚「どんな状態なんですか?」
課長「年齢と共に腹は出る、髪の毛の地肌は出る、新聞読みゃ(字が小さくて)涙が出る、トイレに行けば痔が出る、痔を診てもらいに病院に行ったら金が出たよ」
金塚「そうですか、お気の毒に」
課長(あまりウケなかったなぁ~、金塚さんクソ真面目だからなぁ~)
課長「いつもながら早くから仕事してるんだね」
金塚「私、仕事が遅いもんですから」
課長「そんなことはないだろ」
そう言うと、井手五郎は席を外した。
それから20分後。係長の烏丸千歳(からすま・ちとせ・44歳)が出勤してきた。
金塚がパソコンで天気予報を見ながら呟いた。
金塚「(台風)5号が強い勢力でこっちへ向かってるらしい」
それを聞いていた係長の烏丸千歳が
千歳「えっ!!! 五郎が強い性欲でこっちへ向かってるらしい?」
そう言うと、千歳は周りをキョロキョロして井手五郎課長を探した。
金塚「違いますよ、台風5号が強い勢力でこっちへ向かってるらしいんです」
千歳「はっはっははは」
豪快なごまかし笑いを飛ばした。
千歳「そうよねぇ、五郎さん、もういい齢ですもんね」
金塚「そういう問題じゃないでしょ。大丈夫ですか係長?」
千歳「はははは」
千歳は再度笑い、ごまかした。そんな時、課長の井手五郎が戻って来た。
千歳は、まともに課長の顔を見ることが出来ず、課長の足元をチラッと見て、課長だと確認すると、また机上に視線を戻した。
課長は、そんな千歳の様子を見てか、
課長「貫禄充分、足の長さは不十分だろ。ははははは」
千歳「いえ、そんなつもりじゃ」
課長「なんか楽しそうだったね」
千歳「あっ、すみません」
課長「気にすることはないさ。たまには職場に笑い声も無いとな」
そう言うと、課長は座っている千歳の後ろを回って自席に着いた。
井手五郎が『痔を診てもらいに病院に行った』と言うのは嘘だった。




