113 ♡警察署の保護室で一泊
【05】 警察署の保護室で一泊
博之は、その日、警察署の保護室で一泊し、翌日の昼近くになって、署員から説明を受けた。
【署員の説明】
松山市の警察署と和光市の警察署との間で、色々情報のやり取りをした。
数年前の事故当時、車の破片と周辺の防犯カメラから事故車を割り出した。事故後4台の車が通過し、5台目の車から交通事故の通報を受けた。
数日後に最初にはねた大型トラックの運転手が『自動車運転過失致死傷罪と道路交通法違反逮捕』された。
2台目、3台目、4台目については、死体を轢いた可能性が高いが、前方不注意、道路交通法違反、救護義務違反、報告義務違反について処罰されるかどうかは非常に判断が難しく、処罰されない場合も多いのではないか。
もし事故後、警察官が松島さんの家に伺ったとしたら、参考人としての事情聴取ではないか。
以上が、警察署が松島博之に説明した内容だった。
警察官「さて、交通事故の件は以上ですが、松島さん、奥様から出されている『行方不明者届』については、どうしますか?
博之「『行方不明者届』が出されていると、私は強制的に戻されるんですか?」
警官「いえ、そう言うわけではありません。未成年の場合は、原則、家に戻されますが、成人の場合は、拒否できます。色々ご事情もありますでしょうから」
博之「そうですか」
警官「戻るんですか?」
博之「今、勤めている所にも恩義がありますので、すぐには戻れないですね」
警官「そうですか。でも、奥さんは、かなり心配しているんじゃないですか? それに、お子さんもいるんでしょう?」
博之「はぁ。警察から何か妻に連絡するんですか?」
警官「出来れば『見つかりました』とだけは、連絡を入れたいんですが」
博之「そうですか。わかりました。では、それを伝えていただいて、詳しいことは、私が『今晩8時に電話する』とだけ伝えてもらってもいいですか?」
警官「今すぐではなくですか?」
博之「ちょっと、色々と考えたいんです。気持ちの整理もありますしね」
警官「なるほど、そうですよね。何年もの月日が流れているんですからね。今すぐ気持ちの整理はつかないですよね」
博之「ええ、てっきり私が轢いて、私が殺してしまったと、ずうっと思っていましたからね」
警官「まぁ、後々、地元の警察から事情聴取されるかもしれませんが、収監されるということは、ないと思いますよ」
博之「そうですか。そう聞くとほっとします」
警官「まぁ、とにかく奥様とお子様にも、ほっとさせてあげてください」
博之「そうですね」
警官「では、これでお帰りいただいて結構です」
博之「はい、ありがとうございました」
博之が深々と頭を下げた。




