表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子ボートレーサーと市役所職員  作者: 池井 けい
第13章 奈美の夫、発見される!
PR
112/140

112 ♡警察官「なにか隠してます?」

【03】 警察官「なにか隠してます?」


 完全に油断していた。3年の歳月が、博之の注意力を低下させていた。


警官A「なにか身分を証明するものありますか?」

博之「いえ、ありません」

警官「これからどちらへ?」

博之「スーパーマーケットへ酒を買いに」

警官「お名前は?」


博之、一瞬詰まった。

警官「……」

警官(何を隠しているんだ?)

博之「松島です」

警官「下のお名前は?」


博之「ひろいちです」

警官「松島ひろいちさんね」

博之「……」

警官「家はこの近く?」


博之「歩いて5、6分」

警官「家まで行けば、身分を証明するものありますよね」

博之「まぁ」

警官「じゃぁ、家まで行きますから、身分証明を見せていただけます?」

博之「いえ、急いでますから」

警察「お酒、買うのに急いでいるの?」


博之「まぁ」

警察「お酒は、いつでも買えるでしょう? 何だったら運転免許証か何か見せていただいたら、スーパーマーケットまでお送りしますよ」

博之「運転免許証は持ってないんです」

警察「では、社員証は?」


博之「無いです」

警察「無職ですか?」

博之「いえ、働いてはいますが」

警察「どちらで?」


博之「パチンコ店です」

警察「どこの?」

博之「モナコホール」

警察「ああ。近いじゃないですか」

博之「……」


警察「家に保険証はありますよね」

博之「あると思うけど、どこに置いたか。全然使ってないですからねぇ」

警察「では、預金通帳かキャッシュカード」

博之「ええ、ありますよ。じゃぁ、あしたパチンコ店に来てください。そこでお見せしますよ」


 博之は明日までに逃げようと考えた。


警察「いやいやいや。それでは職務質問にならないのですよ」

博之「……」

警察「わかりました。じゃぁ先に一緒にお酒を買いに行きましょう。その後で、パトカーでご自宅までお送りしますから、そこでちょっとキャッシュカードを拝見させてください」

博之「いえ、そこまでしていただかなくとも。とにかく明日お見せしますから」


 二人のやり取りを見て、もうひとりの警察官が無線で応援を要請した。数分後にはもう1台のパトカーが来て停止した。


博之(もうダメか)

警察「何かやましいことでもあるんですか?」

博之「……」

警察「なにか隠してます?」

博之「……」


 博之が黙秘に入った。

博之(まずいなぁ。絶体絶命か)

 さらに、もう1台パトカーが来た。これでパトカーが合計3台となった。近所から人が出て来て集まった。


警察「だんなさん、申し訳ないんだけれど、本人確認が出来ないんで、署までご同行願えますか。そこでお話ししましょう」

博之「……」

警察「何も話してくれないんですねぇ」

博之「……」


警察「何も悪いことをしてないのなら、署に来てもすぐ帰れますから。ねっ」

 警察官二人が博之の両脇を抱え、パトカーに乗せた。

 博之はもうどうすることも出来なかった。


【04】 留置場で取り調べ


 翌日、警察署。


警官「もうしばらく、居てもらうことになるな」

博之「はい」

 博之は、あれから夜遅くになって、自分が以前税務署に勤めていたことを話し始めた。結局、時間とともに博之は観念して、すべてを話したのだった。


 取調室。

博之「本名は、松島博之です」

警官「生年月日は?」

 博之が素直に生年月日を言った。

警官A「照会、頼む」


 もうひとりの警察官Bに、犯歴照会を頼んだ。すぐにもうひとりの警官Bは部屋を出て行った。

 しばらくしてから、出て行った警察官Bが照会結果を持って戻って来た。


警官B「犯歴はありませんが、『行方不明者届』が出てますね」

警官A「埼玉県の美浦市に住んでいたんだ。どうやってここまで来たんだい」

博之「夜行バスで」

警官「そうか。東京駅から松山駅までのがあるからな」

博之「そうです、それで?」

警官「奥さんも子供さんも居るんじゃないか。なんで、家出したんだ?」


博之「照会された回答でわかっているんじゃないですか?」

警官「いやっ、何も」

博之「えっ?」

警官「何かあるのか?」

博之「ひき逃げを」

警官「どこで?」

博之「和光市で」


 もうひとりの警官が、

警官B「問い合わせてきます」

 部屋を出て行った。

 そして、1時間ほどが経過した。


 警官が戻って来た。

警官B「そのひき逃げ事件は数年前のものらしいです」

警官A「そうか?」

博之「はい」

警官B「78歳の男性が車に轢かれて亡くなっています」

博之「やっぱり」

 肩を落とした。


警官B「でも、轢いた犯人は捕まってますよ」

博之「えっ!!! どういうこと?」

警官B「松島さんがその男性を轢いたのは、2台目、ひょっとしたら3台目以降かも知れないな。詳しいことは、明日にならないとわからないが」

博之「えっ!!!」


 博之の顔が驚きの表情に変わった。

博之「それは、本当ですか?」

警官B「今、深夜だから、詳しいことは明日にならないと」

博之「新聞の小さな記事で死亡とだけ書いてあったのは見ましたが、詳細はまったく知りませんでした」

警官「交通事故は、なかなか新聞に載らないからな」

博之「では、私が指名手配になっている訳では?」

警官「なってない」


博之「……」

警官「そう思って、逃げていたのか?」

博之「はい」

 博之がうなだれた。


警官「明日になればわかるが、轢かれた男性は、1台目ですでに死亡していかも知れないしな?」

博之「もし、そうだとしたら私の罪は?」

警官「ほとんど無いと言ってもいいんじゃないかな」

博之「そうですか……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ