111 ♡失踪中の夫は、松山市に居た!
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【あらまし】(国民健康保険課職員坂口大輔と母子家庭の母親松島奈美、二人の感情をスリルとエロティシズムに包みながらコミカルに描かれた恋愛エピソード)
●エピソード11より
市役所に社会科見学で来ていた小学生の松島海斗君が頭を打って意識が無くなってしまう。
海斗君の父親は行方不明で、母親の松島奈美は海斗の意識が戻らず不安でたまらない。
奈美「今日だけでいいから、ここ(私の部屋)に泊って行ってもらえません?」
奈美が大輔に頼んだ。
●エピソード11・18・19・20・30の続きです
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【主な登場人物】
坂口大輔 28歳男 美浦市役所国民健康保険課主事
小竹由夏 34歳女 美浦市役所国民健康保険課係長
松島奈美 34歳女 松島海斗の母、海斗のことが心配
松島博之 37歳男 松島海斗の父(失踪中)
松島海斗 9歳男 奈美と博之の子
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【01】 失踪中の夫は、松山市に居た!
妻の松島奈美と息子の松島海斗、その家族を捨て、夫博之は四国愛媛県の松山市に居た。
四国愛媛県の松山市。
博之は、住み込みでパチンコ店で働いていた。
【3年前】
博之が逃げる発端となった事件、それは3年前の税務研修から始まった。
埼玉県和光市、国税庁は関東信越地区の中堅職員を対象に2泊3日の研修を行った。博之は美浦市にある税務署家族寮からマイカーで研修所に向かい3日間の研修を無事終えた。
そして最終日、打ち上げが研修所のすぐ近くの居酒屋で行われた。
幹事「研修お疲れ様でした、乾杯!」
一同「乾杯!」
参加者が各々ばらばらに会話を始めた。
職員A「どうですか職場は? 忙しいですか?」
博之「ええ、無茶苦茶忙しいですね」
職員「やっぱりそうですか。どこも同じですね」
博之「ええ、とにかく残業が多いです」
職員A「そんなに?」
博之「月に100時間はしますね」
職員A「それは多いですね、うちもしますけれど50時間以下です」
博之「そうですよね。うちが異常なんです」
職員A「なんでなんですか?」
博之「上司が完璧主義なんです」
職員A「ああ、そう言う人居ますよね」
博之「部下のミスを許さないんです。部下のミスは自分への評価、出世に直結しますからね」
職員A「わかるわかる」
博之「税金の取り立ても徹底的にやりますね」
職員A「それは辛い」
博之「容赦なく取り立てます」
職員A「上司は事務所に居るからいいですけれど、現場は修羅場ですからね」
博之「そうなんです。自分でもやり過ぎじゃないかと思うことが多々あります」
職員A「それは、少し手綱を緩めた方がいいですよ。そうでないと、今度は自分がやられますよ」
博之「どんなふうに?」
職員A「自己嫌悪からうつ病になった同僚も居ます」
博之「その人はその後、病状が良くなったのですか?」
職員A「わかりません」
博之「えっ?」
職員A「病休の後、退職しましたから」
博之「そうなんですか」
職員A「ええ。だから、何事もほどほどが一番ですよ」
博之「自分でもそうしたいのですが、なかなか」
その日、博之は普段の職場を離れ、悩みや愚痴を聞いてくれる仲間が居たせいか少しだけ飲みすぎていた。
そして博之は完全に気が緩んでいた。
博之(乾杯のビール1杯だけのはずが、少し飲んじゃったな)
博之(でも、このぐらいなら運転に支障はない)
博之は、研修所から美浦市まで乗って来た車で帰ることにした。車の通りもほとんど無く灯りも少なかった。
車に乗り込み運転して5分もしない時だった。
車がゴツン! と、ぶつかり少し揺れた。
博之「あっ!」
30mほど進んで車を停めた。一瞬にして博之の酔いが醒めた。車のドアを開けて、20mほど歩いて戻った。10m先に、車線に倒れている人が見えてきた。
博之(うん? 人間? 男のようだ、)
博之の位置から、倒れている男の顔は見えなかった。
倒れている男はピクリとも動かなかった。博之の顔が青ざめた。
博之(まずい! でも誰も見てない、車も来ない)
そう思ったときは、もう車を運転し、研修所へと向かって戻って行った。5分ほどして、先ほどまで駐車していた場所に戻って来た。そして、車に積んであった宿泊用のバッグを手に持ち、車を置いたまま歩いて最寄り駅へと向かった。
博之(ギリギリで、まだ電車はあるだろう)
【02】 ひき逃げ犯、松島博之発見される!
【現在に戻る】
博之は酒を飲んでひき逃げをし、職を捨て、家を捨て逃げ回っていた。
博之(本州を離れて四国なら誰も知っている者は居ないし、ここまでは警察も追って来ないだろう)
そう考えて、夜行バスに乗って松山市までやって来たのだった。
事故を起こしてから数年が経ち、
博之(これまで、特に怪しまれることも無く過ごしてきた。それは、これからも続くだろう)と考えていた。
最初の1年は不安だったものの、2年目からは、少しずつ落ち着きを取り戻していた。
パチンコ店の店主らから何か聞かれると、博之は、以前税務調査に行った喫茶店の店主になりきり、
博之「店の経営に失敗して、債権者達から逃げているんです」と答えるようにしていた。パチンコ店の店主も日を追うごとに、博之が真面目に働く様子を見て、好意的に接してくれるようになった。店の客も博之に対して、気軽に話しかけてくれる者が徐々に増えていった。
博之(同じ接客の仕事でも、税務署とパチンコ店では、こうも違うんだ)
痛感していた。
博之(人間、好かれてなんぼの世界だな)
博之(どうせ一生を送るなら恨まれて生きていくより、誰かに喜んでもらうよう過ごしていきたい。ここに来て良かった)
博之(仕事は良いけれど、ただ、気になるのは妻と子。ちゃんと食べていけてるのか?)
逃げ始めて3年が経ち、初めて家族と連絡を取ってみたいという気持ちが湧いてきていた。
博之(奈美と海斗、元気でいるかなぁ。生活が苦しくなって、まさか親子無理心中なんてことは……)
博之(そんな記事やニュースを見たことがないから大丈夫か。もし、生活が苦しいのなら親の所に戻るだろうし)
博之(自分のこれからは、どうなるんだろう? 過去を捨て一生ここにとどまるのか? それとも別の地へ逃げるのか? 誰か新しい女性と恋に落ちるのだろうか? 警察に捕まって刑務所暮らしになるのか?)
博之は、考えれば考えるほどこの先が見えなくなっていった。考えることをやめたいとも思ったが、時間が出来ると、そのことを考えずにはいられなかった。
◇
その日、博之は、珍しく無精ひげを伸ばしていた。パチンコ店が台の入れ替えのため2週間ほど休業することになったからだ。
博之は、部屋でスウェットスーツに身を包み、ゴロゴロしていた。ひとり暮らしで友達もなく、退屈していた。昼間から酒を飲み、寝たり起きたり。
夜遅くになって、博之は酒が切れそうなことに気づいた。
博之(スーパーマーケットに行って、酒を仕入れて来るか)
博之(酒を買いに行くだけで着替えることはないだろう。このままでいいか)
コンビニは近くにあったのだが、少しでも安く買おうと思い、遅くまで営業している遠くのスーパーマーケットまで歩いて行った。酒の酔いもあり、微妙にふらついていた。
時間は夜の10時を過ぎた頃だった。博之の後ろでパトカーが停まった。
中には警察官2人が乗っていた。博之の身なりと行動を見て、
警官A「ちょっと怪しいですね」
警官B「職質(職務質問)かけるか?」
警官A「ええ」
パトカーの警察官は、少し前から博之に注意を向けていた。スウェットスーツ、無精ひげ、ふらつき、歩いている時間帯、総合的に判断して職質対象に思えた。このようにして、何人もの不審者を取り締まって来たのだった。
警察官二人がパトカーから降りて小走りし、博之の前と後ろに立ちはだかった。
警官A「ちょっと、よろしいですか?」
博之は、ビクッと反応して、すぐ後方を振り返った。が、そこにも警察官が居た。
警察官二人(間違いない!)
警察官二人が、疑いから確信へと変わった。
警察官(こいつ、なにかあるぞ。クサ(大麻)か?)
博之(まずい!)
博之(職質に遇うとは!!!)




