106 ▼2度目のラブホテル 編 ~『ちゃ』から始まる食事は?~
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【あらまし】(ボートレーサーの成長エピソード)
若き女性ボートレーサーの爽香、そして彼女を支える(?)男友達の丹沢と由利。ある日、ファミレスに集まった3人だったが、爽香から「またラブホテルのプールに連れて行って!」というとんでもないお願いが飛び出す。
実はそれ、他のレーサーに差をつけるための秘密の「転覆対策特訓」だった。 周囲にバレれば処分モノの極秘ミッション。爽香は特大の秘密兵器「オレンジフロート」を車に積み込み、いざ2度目となるラブホテルのプールへ!
過酷な悪戦苦闘の練習を終えた3人を待っていたのは、ラブホならではの贅沢なお風呂タイム。男女の垣根を越えた(?)フランクすぎる本音トークで絆を深める3人だったが、帰りの道中、爽香が放った「『ちゃ』の付く食べ物が食べたい」という一言から、3人の足並みは再び大混乱へと陥ることに……。
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【主な登場人物】
速水爽香
職業: プロのボートレーサー(競艇選手)。
特徴: 独身の若い女性。負けず嫌いで勝つために貪欲なアスリートですが、少しお茶目でマイペースな一面もあります。丹沢や由利からは「速水さん」と呼ばれることもあります。
丹沢純也
職業: 美浦市役所住民課主事
特徴: 爽香の頼みごとに付き合う男友達の一人。爽香とは冗談を言い合える、いわゆる「腐れ縁」のような気心の知れた関係です。少し現実的で、ツッコミを入れる役割が多いです。
由利源吾
職業: 美浦市役所住民課主任
特徴: 爽香の頼みごとに付き合う男友達の一人。車を出して運転を担当しています。爽香に対して好意(興味)をストレートに抱いており、彼女の言動に一喜一憂するピュアな一面があります。
茂木数魔
職業: 美浦市役所住民課主任
会話の中でのみ登場する人物
丹沢の口から語られる人物。以前、ラーメンのトッピング(メンマか味付け玉子か)を巡って丹沢とちょっとした言い合い(些細な揉め事)になったエピソードの中で名前が登場します。
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【前書き】
●この小説には多くの数字が出てきます。そこで読者の皆様が読み易いように横書きとなっております
●多人数での会話も多いことから、誰が話しているのか、すぐにわかるよう会話の頭に台本形式で、氏または名を付けて表現しました
●この物語はフィクションです。実在の個人・団体、実際のレースとは一切関係ありません。ボートレーサーと市役所職員をモデルに、フィクションとして制作されたものです
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【01】 2度目のプール練習
爽香に丹沢と由利が呼び出された。近くのファミリーレストランで落ち合った。
丹沢「元気だった?」
爽香「元気も元気! 由利さんは?」
由利「なんとかね。どうにか生きてるよ」
爽香「そうか、テンション低いんだね」
丹沢「この前、茂木さんとザーサイのことで揉めちゃったよ」
爽香「『ザーサイ?』、『メンマ』じゃなくて?」
丹沢「そうそう、それそれ」
爽香「えっ、なになに?」
丹沢「ラーメンのトッピングの話で、私が『メンマ』と言ったら、茂木さんが『味付け玉子でしょう!』って」
丹沢「ただそれだけの話さ」
爽香「え、えーっ? どこに『ザーサイ』が出てくるの?」
丹沢「えっ? そんなこと言ったっけ?」
爽香「言ったわよ、『ザーサイ』って」
丹沢「そうか、言ったね」
爽香「なんで茂木さんが『ザーサイ』じゃなくて『味付け玉子』って言うのよ!」
丹沢「『ザーサイ』は『ちょっとのこと』って意味さ。ちょっとのことで揉めただけさ」
由利「それ『ささい(些細)』だろ!!!」
由利が軽く丹沢の頭を叩いた。
爽香「ははははは。まったくコイツ、バカなんだから」
丹沢「あんたに言われたくないよ!」
由利「ははははは」
爽香「ねえ、ねえ、ねえ、またラブホテルのプールに連れて行ってよ!」
丹沢「えっ?」
由利「しーっ! 周りに聞こえるよ」
爽香「あっ、そうか。へへへへへ」
丹沢「変な笑い方するなぁ」
爽香「へへへへへ」
丹沢「それだよ、その笑い方、変だろ」
爽香「へへへへへ。頼み事だから照れちゃうのよ」
丹沢「らしくもない」
爽香「へへへへへ」
丹沢「それだよ、それ」
爽香「ねぇ、連れてってよ。だって、ああいう所って、ひとりじゃ入れないんでしょう?」
丹沢「多分」
爽香「それに車もないし。二人に頼るしかないんだもん」
丹沢「それはいいけれど、どうしてまた急に?」
由利「てっきりもう懲りたのかと思っていたよ。だって、あのとき、相当怒ってたじゃん。裸を」
爽香「しっ! 声が大きいわよ」
由利「ゴメン! 見られたからって。見てないけれど」
爽香「もう一度初心に帰ってやり直したいのよ。転覆練習は基本だし、あのときは途中で気を失ったみたいだし。今度はもうちょっといい形で終わらせたいのよ」
由利「なるほど」
爽香「でも誰にも内緒よ。こんなことがばれたらモーターボート競走会から処分されそうだし」
由利「そうだろうな。礼儀や風紀には厳しいからね」
爽香「車を出してもらって、ついでにお金まで出してくれたら最高なんだけれどな。へへへへへ」
丹沢「いやらしい笑いだ」
爽香「いいじゃないの。だって、私の水着姿が見られるのよ。奢ってくれてもいいじゃない」
丹沢「今度は水着よりウインドブレーカーの上下を着てやった方がいいんじゃないのかい?」
由利「そうだ、その方が実戦に近いね」
爽香「そうか、そうする! じゃぁ決まりね。連れて行ってくれるのね」
丹沢「うん、いいよ」
由利「うん」
爽香「じゃぁ、早速、行きましょ!」
丹沢「気が早いんだなぁ」
爽香「そうよ。1秒たりとも無駄にできないわよ」
丹沢「レースがないときは、朝から晩まで寝ているくせに」
爽香「体を休めることも選手にとっては重要なのよ。24時間練習していたら体こわすでしょう?」
丹沢「まぁな」
由利「じゃぁ、行きますか?」
爽香「ええ」
由利の車で、3人の家を回り、水着や着替えを持ってラブホテルに行くことになった。爽香の家に着いた時、爽香は大きな荷物を持ってきた。オレンジフロートである。オレンジフロートとは、船舶が桟橋に停泊する際、船体を傷つけないようにするブイである。直径56cm、長さ90cm、発泡スチロールでできた円柱状の浮き球である。そのオレンジフロートには、白いロープで網掛けされていた。
丹沢「えっ! これを持って行くのか?」
爽香「そうよ」
丹沢「なんのために?」
爽香「これに乗って、バランスを取る練習や、このロープを掴んだままひっくり返る練習ね」
由利「ふーん、そこまでやるんだ」
爽香「勝つためには、なんでもやるわよ」
由利「他のレーサーに差をつけるためには、他のレーサーがやってないことをするしかないか」
爽香「うん」
丹沢「金のためか?」
爽香「そう言うやらしい言い方をしないで」
丹沢「『やらしい』と言えば、前回は速水さんのヌードを見るチャンスがあったのに、みずから放棄しちゃったな」
爽香「その話する?」
丹沢「本当に私達二人は見てないんだよ」
爽香「わかった、わかったわ。信用する」
丹沢「良かった、変に誤解されても困るからな」
由利「うん」
爽香「二人ともそんなに私の裸を見たいの?」
丹沢「いや」
由利「ううん」
爽香「わかったわ。それなら10万円で見せてあげようか?」
由利「安い!」
丹沢「高い!」
二人が同時に反対のことを言った。
爽香「えっ? どういうこと?」
由利「だって、独身の若い女性が、個人的に裸を見せてくれるんだったら安いでしょう」
爽香「うん、うん」
丹沢「そうかなぁー。10万円出すんだったら、2800円で芸能人の写真集を買った方がいいなぁー」
爽香「どうせそうでしょうよ。私になんか興味ないんでしょう?」
丹沢「うーん、難しい質問だなぁ。興味があるような無いような。『興味』というより『腐れ縁』だな」
由利「私は、爽香さんに興味があるからね」
爽香「ありがとう。由利さんの方が素直で素敵!」
由利「そうだろう」
由利が満面の笑みを浮かべた。
3人が乗った車がラブホテルに着いた。部屋に入ると男二人は水着に、爽香は上下スポーツウエアに着替えた。
3人は早速、プールに入り爽香がオレンジフロートに乗る練習をした。
しかし結果は、乗っては落ち、乗っては落ちの連続だった。
爽香「やっぱり無理か」ため息をついた。
オレンジフロートにまたがりバランスを取ることは至難の業だった。
爽香「ねえ、私、落ちたらロープに掴まっているから、二人で元に戻すようにオレンジフロートを一回転してくれない?」
由利「いいけど。なんの練習?」
爽香「別になんの練習でもないけれど強いて言えば、ボートの転覆って半回転とは限らないでしょ。一回転して上向きで止まることもあるじゃない。ただ、そのときは『首をやられる』って先輩から聞いたことがあるわ」
由利「確かに。すごい力が首にかかるだろうな」
爽香「ねっ。だからやって」
由利「わかった」
爽香はオレンジフロートの中央にまたがり、爽香が沈没すると、由利と丹沢が前後に立ち、ロープを持ってオレンジフロートを起こそうとした。
丹沢「よいしょ! っと」
由利「こりゃたいへんだ」
男二人でも起こすのはたいへんだった。
丹沢「これは、無理だ」
由利「うん」
爽香「でも、続けて。できるところまででも」
由利「わかった」
3人は悪戦苦闘を続けた。
しばらくして、
丹沢「ちょっと休憩しよう」
由利「うん。疲れた」
爽香「えーっ」
丹沢「もう無理だよ」
由利「うん。無理無理」
爽香「しょうがないわね。わかったわ、休憩しましょう」
【02】 ラブホのお風呂は最高!
3人が部屋に戻ると、
丹沢「風呂にしよう!」
由利「うん」
爽香「そうね」
丹沢が風呂にお湯を入れ始めた。
丹沢「出がいいな」
由利「そうだね」
丹沢「3人で入って温まろう!」
由利「うん!」
爽香「うん!」
丹沢「3人、湯船に浸かった方が、早く水位が上がるからね」
爽香「気持ちいい。私、上を脱ぐわ」
爽香はその場で立ち上がり、上下のスポーツウエアを脱いだ。そして湯船の外に置いた。そこには、ビキニ姿の爽香がいた。
爽香が、かがみ込みお湯に浸かった。
爽香「ふわぁ~、いい気持ち。最高」
爽香が天井に向かって両手を伸ばした。
由利がその様子をじっと見ていた。
丹沢「由利さん?」
由利「なに?」
丹沢「立ってるよ」
由利「えっ?」
丹沢「そこ」
丹沢がお湯の中で指さした。
由利「うっ、」
由利が両手でそこを隠し、顔を真っ赤にした。
丹沢「いいね、元気で」
由利「仕方ないだろう」
丹沢「それだけ速水さんが、魅力的だ、ってことだ」
爽香「もう! そんな会話する?」
丹沢「いいじゃないか。なんでも隠さず言える仲って、なかなかないぞ」
由利「うん。このメンバーはいいな」
爽香「そうね。なんでこうなったのか? やっぱり丹沢さんの言う通り『腐れ縁』ね」
丹沢「それにしても、速水さんは、スタイルがいいし筋肉質なんだな」
爽香「一応アスリートだからね。へへへへへ」
由利「それを言うなって。おさまりがつかなくなる」
丹沢「若いね」
由利「『若い』んじゃなくて、慣れてないんだよ。こういう場面に」
爽香「そうよ。由利さんをいじめちゃだめよ。それに、丹沢さんはソープ通いしているから、このぐらいの場面じゃ立たないんでしょ」
丹沢「ははははは。その通り!」
爽香「いやぁね」
由利「ははははは」
丹沢「ははははは」
爽香「ふふふふふ」
3人はしばらくの間、ラブホテルの風呂を堪能した。3人で入る温泉もどきに心が弾んだ。
爽香「いいわね。こういうのって。周りを気にすることなく混浴が出来るなんて最高よ」
丹沢「うん、混浴なんてしたことないよ」
爽香「ソープランドを除いてわね」
丹沢「うん」
爽香「正直なのね。ふふふふふ」
丹沢「ははははは」
由利「こんな経験できないもんなぁ~。ああ、幸せ!」
爽香「もう一回練習したら、帰りに美味しい物を食べて帰りましょうよ」
丹沢「いいね。腹ペコだし」
由利「美味しい物って?」
爽香「頭に『ちゃ』の付く食べ物よ! 今は、それが食べたいな」
丹沢「そうか。『ちゃ』か。それはいいな、賛成!」
由利「わかった。それがいい! おいしい店を知っているんだ。帰りに寄るから、楽しみにしていて」
爽香「うん、良かった」
丹沢「うん、良かった、良かった」
【03】 『ちゃ』の付く食べ物とは?
練習が終わり、爽香が先に風呂に入り、その後丹沢と由利が一緒に風呂に入った。体と髪を洗い、3人ともスッキリとした。
由利「さて、行きますか?」
丹沢「うん」
爽香「ええ」
3人は由利の車に乗り、帰り道を走った。そして、由利が車を止めた。
由利「着いたよ」
爽香「えっ? ここ?」
丹沢「うん?」
そこには「ちゃんこ鍋」の看板があった。
爽香「ここなの?」
由利「ここだよ。どこか他にも『ちゃんこ鍋屋』さんてあるの? 私は知らないなぁ」
爽香「そうじゃなくて」
丹沢「うん」
由利「えっ! どういうこと?」
爽香「『ちゃ』と言えば、『茶漬け』に『茶碗蒸し』、そして『茶そば』でしょ!」
由利「えっ!」
丹沢「いや、それは違うな。『ちゃ』と言えば、『チャーハン』か『チャーシュー麵』だな」
由利「なにそれ? ってことは、3人とも違うものをイメージしてたってこと?」
爽香「なんでこうも意見が合わないんでしょう」
由利「ボートレーサーと言えば勝負師。勝負師と言えば力士。だから『ちゃんこ鍋』でしょう」
爽香「私が『茶』と言ったんだから、『茶』という漢字のイメージから、普通は『茶漬け』、『茶碗蒸し』、『茶そば』を思い浮かべるんじゃないの?」
丹沢「そうかなぁ? だいたい私は、ひらがなの『ちゃ』や、漢字の『茶』じゃなく、カタカナの『チャ』を思い浮かべていたからなぁ。そこから違うね」
由利「『鍋料理』と『和食』と『中華』じゃ全然違うからなぁ。どうしよう?」
爽香「簡単よ! コンビニにしましょ!」
丹沢「頭がいいな」
由利「うん。そうしよう!」
3人を乗せた車は、すぐ近くのコンビニへと向かった。
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【後書き】
本話もお読みいただき、ありがとうございました! 2度目のプール練習、いかがでしたでしょうか?
今回は爽香のレーサーとしての本気度(と、相変わらずの無茶ぶり)が光るエピソードとなりました。 わざわざ大きな「オレンジフロート」を持ち込んでの猛特訓でしたが、男二人はすっかり巻き込まれて形形お疲れのようです(笑)。
そして、練習の後はまさかの……ラブホならではの混浴(?)タイム! 由利のピュアすぎる反応と、丹沢の熟練(?)の余裕、そして全く動じない爽香のアスリートっぷり(+えげつない10万円提案)。この3人の気兼ねのない「腐れ縁」な空気感が、書いていてとても楽しい一幕でした。由利、がんばれ……!
ラストは「ちゃ」のつく食べ物大喜利になってしまいましたが、結局コンビニに落ち着くあたりがこの3人らしくてどこか微笑ましいですね。皆様は「ちゃ」といえば何を思い浮かべましたか?
次回の展開もどうぞお楽しみに!
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【作者よりお願い】
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
爽香の無茶振りに付き合う丹沢と由利の「腐れ縁」トリオ、今回も息がぴったり(?)でしたね。まさか「ちゃ」の付く食べ物でここまで綺麗に三者三様の勘違いが起きるとは……(笑)。結局コンビニに落ち着くあたりが、この3人らしくて微笑ましいです。
「この3人の掛け合いが面白い!」「続きが気になる!」と思ってくださった方は、ぜひ下にある**【☆☆☆☆☆】の評価(★)や【ブックマーク】**で応援していただけると励みになります!
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