ギルドでの治療
それにしても怪我人の数が多い、一人ひとりポーションを飲ませていたら切りが無い。
幸いなことに怪我人が新たに増えることは無いから治していけば必ず終わりが来ると思うが・・・。
俺が怪我人を治療しながら考えているとサイラスが厨房から戻って来て大声を上げた。
「注目!動ける奴は直ぐこの樽を西門以外に持って行って中身を線になるように撒いてこい!
ただし中身には触れるなよ!触れると取れなくなるからな!」
サイラスはそう言いながら自分の親指と人差し指を開いたり閉じたりして見せる。
その度にトリモチ君が元気よく伸びた。
それを見ていた冒険者たちは唖然とした後笑い始めた。
その笑いは緊急事態の中で一時みんなの心を和ませた。
「了解!西以外の門に撒いてくるぜ!ヤロー共!体につけてサイラスのおやっさんの二の前になるなよ!」
1人の冒険者の号令を聞きみんな動き出し樽を持ち上げて走って行く。
それにしても冒険者ってのは力持ちだ、俺なら樽に満タンに液体が入った状態だと持ち上げることなんてできないが、冒険者たちは一人で樽を抱えて運んで行く。
次々と樽を持った冒険者がギルドを出ていく、それを見送った後俺は怪我人の治療に戻ろうとするとサイラスに声を掛けられた。
「おいセン!これどうしたら取れるんだ?水で洗ってみたけど取れねーぞ?」
サイラスがくっ付いた指を見せながら聞いてくる。
俺はそれを見て笑いながらトリモチ君の取り方を思い出していた。
えっとトリモチ君の取り方って確か油を付けて馴染ませてから小麦粉などの粉を付けて玉にして取るんだったと思う。
サイラスはまだ肌に付いただけだから簡単に取れるだろうけど、髪や毛に付いたトリモチ君は本当に取りにくい。
昔ネズミ捕りに掛かってしまった野良猫からトリモチ君を取ろうとしたけど、中々取れなくて獣医さんに相談したらきな粉で洗ってあげれば取れると言われたけど。
それでもべったり付いてしまったトリモチ君は一回じゃ取れなかったからな~。
俺は昔のことを思い出しながらサイラスに説明した。
「トリモチ君は油に馴染ませてから小麦粉の粉で洗えば玉になって取れるはずです。
まだ肌に付いただけでよかったですけど、髪や毛に付くと本当に取れないから気を付けてください。
下手したら付いた毛を剃らなきゃいけなくなりますからね」
俺が注意のために説明したらサイラスとその周りにいた冒険者たちも咄嗟に頭に手を当てて頬を引きつらせていた。
それからも俺はポーションで怪我人の傷を癒し、怪我人の数が数えるほどになったころ血相を変えたジェフがギルドに走り込んできた。
「旦那!センの旦那は居るか!」
ジェフはギルドに飛び込んでくるなり俺を探しながら叫んだ。
その声を聞いた俺はジェフの方を向くとジェフも俺に気付いたようでこちらに近づいて来た。
「ジェフどうした?それに他のみんなは?」
俺が慌てふためくジェフに質問するとジェフは一度深呼吸をしてから話し始めた。
「俺達は一番苦戦している西門に向かったんだがそこでかなりの怪我人が出ていてポーションを配って回っていたんだが。
渡された分のポーションがもう無くなりそうになって、補充のために倉庫に向かったんだがすでに旦那がいなかったからここにいるだろうと思って急いで呼びに来たんだ!頼む!一緒に来てくれ」
ジェフはそう言うと俺の腕を掴んで引っ張り始めた。
俺は引きずられるように足を少し進めてからジェフに声を掛ける。
「ジェフ焦らないでくれ!ちゃんと着いて行くから手を放してくれないか?走りずらくて転びそうだ」
俺を声にジェフはビクリと体を硬直させてから「すいません・・・」と謝り手を放してくれた。
ジェフの様子を見て俺は改めて彼に声を掛けた。
「じゃあ、案内してくれ」
俺が声を掛けるとジェフは俺を先導するように走り始める。
俺はそれについて走り出した。
西門に向かい走り出した俺達は武装した兵士しかいない町中を走る。
いつもは買い物客は家族連れなどもいる大通りは殺気立った兵士たちしかいなかった。
急ぎ西門へ向かうと門前は怪我人で溢れ返っていた。
門はすでに閉じられ壁の上では下に群がるメニーラビットへ弓や魔法で攻撃を行い少しでも数を減らそうと奮闘している。
門前は支持を出す声と怪我人の呻き声で溢れていた。
「最初は門の外で戦闘してたんだが、物量に押されて門を閉めざる負えなくなっちまった。
俺達の持ってきたポーションもすぐに無くなって、俺が旦那を探しに行ったんだ。
旦那何とかなんねーか?」
ジェフはこうなるまでの状況を話し終えると打開策を聞いてくる。
だが俺にできそうなことは今の所トリモチ君を樽に移して持って行って貰うことと・・・仕方ない一々ポーション瓶に移し替えている余裕はない。
直接怪我人に掛けて回るしかなさそうだ。
戦闘の後で色々聞かれそうだけどこんな状況で移し替えなんてやっていられない。
そもそもポーション瓶自体が足りない。
俺は自分に言い聞かせて怪我人へと走り寄るのだった。
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