ギルドからの買い付け
次の日、宿に迎えに来たイザベラと一緒に倉庫へ向かった。
改めてみる倉庫の中は左半分に樽が積まれ、右半分はイザベラや俺が作業するスペースになっていた。
だがそれでもまだまだ余裕が有り、広いスペースが余っている。
「今日はどうするんだすか?」
イザベラが今日の予定を聞いて来たので、俺は早速糸を作る実験をすることにした。
だがその前に自分の能力を教えなければいけない、俺はイザベラに向き直り説明をする。
「イザベラこれから話すことは他言無用でお願います。それが出来ない様でしたらここで作業せずに家で作業していただきますがどうしますか?」
俺は真剣に目を見てイザベラに質問する。するとイザベラは微笑み話し始めた。
「分かりました。センさんの秘密は絶対に漏らしません」
イザベラは決意に満ちた目で誓いを立てる様に話し、俺はイザベラに頷き話し始めた。
「イザベラの気持ちは嬉しいけど、どうせいつかはバレる事ですから話して回らないだけでもいいですよ。
ただ余り目立ちたくないだけですから、バレたからと言って俺は商人です。欲しければ金払ってくださいねって言えば済む話です。
ただイザベラさんに作ってもらう布や糸はどれも高額になりそうなので、もし話が広がると悪党に目を付けられそうで・・・。
できれば余り製法が漏れないようにしないといけないかなと・・・」
俺が考えながら説明するとイザベラは真剣な目で見つめながら俺に質問してきた。
「センさん私は何で裁縫をするんですか?」
イザベラの質問に俺は悩みながら答える。
「あ~それなんですけど何種類かありまして、幾つか糸を作って見ますのでそれで裁縫をしていただければいいです」
俺はそう言うと糸車に芯をセットして髪の毛一本の細さ、50デニールぐらいになるようにイメージしながら溶けた金を液体生成をする。
デニールは糸の細さの単位だ。よく聞くのはストッキングの薄さにも使われている。
その瞬間赤く熱せられた金が目の前に浮かび上がりそこから細い金が芯に巻き付く。
芯に一周巻き付いた事を確認した俺は糸車を回し芯に金糸を巻き付けて行った。
イザベラはその様子を目を見開き口に手を当てて驚きながら見ていた。
俺は糸車を回している間に芯に糸がどんどん集まっていった。
だが創造した金が熱を失うと同時に糸がピンと張られ個体になった金は地面に落ちた。
あ~冷える前に糸に仕切らないといけないのか、でもこれでどのぐらいの量生成すれば糸に出来るか分かった。
後は糸が芯に巻き終わる前に新しい金を生成して繋いで芯に巻けるか試してみないとな。
俺が金糸生成の結果を観察して思考しているとイザベラが声を掛けてきた。
「センさんそれは金ですか?センさんは錬金術師様ですか?」
イザベラは驚きながら金糸を観察していた。
そんなイザベラに俺は説明する。
「実は俺のスキルで出すことができるんだ。俺もよくは分かってないんだけど溶けていれば金属を出すことができるみたいで酒もこのスキルで出してるんだ」
俺は説明をしながら糸車の芯を交換して新しく溶けた金を出し糸にしていく。
その作業をしながらできた糸をイザベラに渡しさらに説明する。
「それでイザベラにはこの糸で裁縫をしてもらおうと思って雇ったんだ。
もし使ってみたい糸があったら言ってくれ、今のところ金属糸が終わったら絹か蜘蛛の糸でも作ろうかと思ってるんだけど」
俺が金属糸の後に作る糸を言うとイザベラが食い気味に質問してきた。
「絹まで作れるんですか?絹はセイラン帝国で作られ製法を秘匿されています。それを知ってるなんてセンさんは・・・」
イザベラが俺の素性に疑問を抱き始めたような顔をしたので、俺は直ぐに否定する。
「いや俺はセイラン帝国って国とは無関係だよ、でも秘匿されてるんならあまり大っぴらに売り出すと狙われるかもしれないな。
それなら余り作らない方がいいか?主力は金属糸の製品だけにしよう」
俺はイザベラの言葉に絹の製作は一月に一反ぐらいに抑えることにした。
いやだって帝国って大国なんだろ?そんな所に命狙われるとか洒落にならないから、できるだけ目を付けられないようにしないとな。
後、糸にできそうな素材っていえばあれだよな。現代人の服の大半があの素材でできているみんなのお財布の味方、ポリエステルさんです。
ポリエステルも作れるといいけど、まあそれは商売が軌道に乗って従業員も増えたら考えよう。
いくら糸を作っても布を作ってくれる人が増えないと布が作れないもんな。
そんなことを考えながら糸を作り続ける。
イザベラは最初に渡した金糸で何かを作っているようだった。
俺は糸車を回し続けて昼に近づいた所で一度切り上げて食事にした。
食事を終わらした俺たちは倉庫に戻ると倉庫の前に馬車が何台も止まっていた。
あ、そうか今日は鏡を渡す予定だった。
俺達が倉庫に近づくとウォルトが俺達の前に出てきた。
「お待ちしてました。あなたがいないのでは果実酒を売ってもらえませんからね。
お客様が待っていますので、できれば早めに運ばせていただきたい」
ウォルトの言葉を聞き俺は直ぐに倉庫の扉を開き端から鏡を詰めていく。
こっそり樽に酒を詰めるのにもだいぶ慣れた。中が見えない状態でも樽に酒を詰めれるようにもなったしな。
酒を詰め終わった樽をウォルトが連れてきた運び手がどんどんと馬車に乗せて運び出していく。
契約では鏡を二種類10樽づつ、黒ニッカが1樽だったよな。
それだけでもかなりの金額になる。これなら護衛と機織りの人数を増やしても良さそうだ。
そんなことを考えながら運び手が樽を運び出すのを見ているとウォルトが話しかけてきた。
「それでは代金をお渡ししたいのですが、よろしいですか?」
ウォルトの言葉を聞いて俺は倉庫内に置いていた休憩用の机についた。
そこで俺は水差しを取り出しコップと一緒にウォルトに差し出す。
「これは、ありがとうございます」
ウォルトは礼を言い一口飲むそして目を見開きコップの中を覗き込んだ。
フフフ、旨いかね?この世界にはまだないだろうスポーツドリンクの味はいかがかな?
俺はウォルトの表情を見ながら自分もスポーツドリンクを飲む。
いや~久しぶりに飲むとうまいね。
「これは、旨いですね。果汁のように甘すぎず、紅茶のように香りはないが苦みもなく飲みやすい。
それに体に沁み込むように感じます」
ウォルトがスポーツドリンクの感想を呟いていた。
それを聞いて俺は満足げにほほ笑む。
まあさすがにスポーツドリンクを売り出すつもりはない、液体単体で売り出すのは今のところ酒で十分だからね~。
後は冒険者にポーションでも売るぐらいかな。
でもこれは俺が生成するポーションがどのくらい性能があるか調べてから、そのためには早めに倉庫の護衛を見つけないと。
俺が考え事をしているとウォルトが机に袋を置く、その中からは金属が擦れる音が聞こえてきた。
「酒の料金です確認してください」
ウォルトの言葉を聞き俺は中を確認する。
中には確かに代金分の金貨が入っていた。
中身を確認して頷くとウォルトも頷き机から立ち上がった。
「それでは私はこれで、仕入れた酒を商人に売らないと待っている商人たちもいますので」
ウォルトはそういうと一礼して立ち去って行った。
俺はその後姿を見送り俺は考え込む。
儘ならないな~転売されたくなかったからできれば消費してくれるところに売りたかったけど、結局ギルドに売ることになってしまっている。
あの黄金の庭亭で売らないで帰ったのが結局ギルドへの負い目になってるもんな。
最初から自分の足で売り先探せばよかった。
俺は後悔をしながら扉を閉め糸作りを再開する。
そうして一日を過ごし夕方になった所で今日の仕事は終わりにした。
「センさん今日作った物はどうしますか?」
イザベラはそう言いながら手に持った金属糸で作った花を俺に差し出した。
イザベラが作ったその花はかなり精巧なバラの形をしていた。
おお!さすが裁縫持ち、金糸でできたバラなんて見ただけでかなり出来がいい、まるで本物のようなバラだ。
まるで輝く黄バラのようだった。
う~んこれ一つ幾らで売ればいいんだろう?重さ的には中金貨ぐらいはある。
中金貨と同じ値段なら一つ500万?いやいや高すぎないか?ドレスの飾りにすればその位してもごまかせるか?
でもドレスはその人の体型に合わせて作らないと意味ないから難しいよな~。
やっぱ先に布を作ってもらおう、布の方が売り易そうだからガンガン糸を作らないと・・・。
「うん、素晴らしい出来栄えだね。明日からはどんどん糸を作るから機織り機で織れるだけ糸ができたら金属糸で布を作ってくれないか?それまでは一緒に糸車を回してください」
俺がそういうとイザベラは頷いて笑ってくれた。
それから俺たちは掃除をして帰宅した。




