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それは命の泉沸く  作者: 渡海
食料集積都市レットクラッカー
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従業員確保

イザベラを家に送った俺は町の治安の悪い場所に来ていた。

 いくら町に騎士団が駐屯していてもこういう所は無くならない、人が集まる場所にはどうしてもできる。

 俺は饐えた臭いの漂う路地裏を歩く。


俺がこの如何にもなスラムを歩いている訳は簡単、従業員を確保するためだ。

 信用できる人を集めるならやっぱり恩を売る方が簡単だから俺は恩を売りに来た。

 そんなことを考えながら俺は裏路地でキョロキョロと見回しながら歩く。


そうして歩いているとお目当ての物を見つけた。

 それは少し触っただけで倒れてしまいそうな掘っ立て小屋だった。

 木の板を集めて箱のようにしただけのその掘立小屋に近づいた俺は声をかける。


「こんばんは、誰かいますか?」


俺が声をかけると中からゴソゴソと動く音がした。

 だけどなかなか外に出てきてくれない、だが明らかに中から俺の様子を窺う視線を感じていた。

 

「もし今の状態に満足しているのなら俺は立ち去ります。

 でもこの肥溜めの様な場所から抜け出したいなら話を聞いてくれますか?」


俺は辛抱強く声を掛けていると後ろから声が掛けられた。


「なんだ先約がいるぞ?なんだおっさんここに住んでるガキになんか盗まれたのか?

 だが残念だなそいつに盗まれた物は俺たちの物だ、今更取り反そおったって遅いぜ」


掛けられた声のした方を向くとそこにはガラの悪い男が3人立っていた。

 いかにも暴力に慣れているように指をボキボキと鳴らしながら下卑た笑いを顔に張り付け睨みつけてくる。


「この小屋の主に盗みでもさせていたのか?ってことは盗品があった場合それはお前らが命令したことでいいんだな?」


俺が確認するために3人に話しかけるとその中の一人が指さしながら笑い始めた。

 

「そうだって言ってんだろ!馬鹿じゃねーの?わかったらさっさとどっか行きやがれ!それとも痛い目会わねーと分からねーのか?」


男は怒鳴りつけながら俺に近づいてくる。

 それを見た俺は大きなため息を付き、いつもの罠を発動させる。

 それに気づかなかった男は俺に掴み掛ろうと近づいて来たが途中で足を止めた。


いや足が止まってしまった。

 男の足は石畳に張り付いたように動かず、足を上げようとしても動かない。


「何だこりゃ!?足が動かねー、糞!テメーの仕業か!?動かせるようにしやがれ!」


男は必至で動こうと藻搔きながら怒鳴りつけてくる。

 でも俺はそれを無視して犯罪を自供した犯人を無視して掘っ立て小屋に向き直る。


「中にいる人、おとなしく盗んだ物を持って出てきてください。

 大丈夫、主犯の人たちは動けませんので。まあこの人たちも剣まで抜いていませんから殺しはしませんよ」


俺が掘っ立て小屋に声を掛けると中から何かが動く音が聞こえ、入口からボロボロの服を着た手入れのされず髪が伸びた子供が盗品だろう布袋を何個か抱えて出てきた。

 俺はその子供の目線を合わせるようにしゃがみ。


「それじゃあそれを持って衛兵詰め所まで来てください。今の生活で満足しているのでしたら盗んだ物をこちらに預けてその小屋に戻ってもらって構いません。

 これ以降きみに関わらないと誓うよ」


俺は優しく笑いかけながら話しかける。

 子供は頷いてくれたので俺はいまだに怒鳴っている男達(バカドモ)に向き直り男達の足元に新しい水溜りを作りそこから水の蔦を作り出し男達を縛り上げ、ついでにそのうるさい口の塞いでおく。

 呼吸まで止めてしまうと死んでしまうので塞ぐのは口だけにしておいた。


俺は水の蔦で男達を中吊りにして一番近い西の詰め所に向かい歩く。

 水の蔦は意志を持っているように俺の後をついて来ていた。

 子供も俺の後を付いて来ていたのを確認して、俺は安息の息を吐く。


一応いったことに従ってくれて助かった。

 あの子がもし盗品を持って逃げていたら俺がコイツラを捕まえている理由が薄れるからな~。

 別に絡まれたから捕まえたでもよかったけど、子供を道具の様に使う人間は犯罪を明るみにしてしっかり捕まえてもらわないと、もし牢から出てきて逆恨みで突っかかってこられたら俺も反撃しないといけなくなる。

 できるだけ不安の種は無くしておきたい。


俺は考え事をしている間に門の横に有る詰め所に到着した俺に衛兵が走り寄ってきた。


「どうされましたか?この男たちは?」


衛兵に質問されて俺は先ほど起きた事を説明して子供の盗んだ盗品を提出させる。

 それを受け取った衛兵は仲間を呼んで来たので俺は水の蔦を解除した。

 水の蔦から解放された男達は懲りもせず俺に殴りかかろうとしてきたが衛兵に取り押さえられた。


取り押さえられた男達はそれでも言い訳をしていたがそのまま詰め所の奥へ連れていかれた。

 その後俺が連れてきた子供からも事情を聴き始めた。


「それでこの子がアイツ等に言われてスリを働いていたんだろう?ならその子も同罪じゃないか?」


衛兵はそういいながら子供の手を取ろうとする。

 だが俺はその手をそっと抑え話しかけた。


「ですが本人はあの男達に言われてスリをしていた様ですので、ここは見逃していただけないでしょうか?

 これからはこの子を私が引き取り面倒を見ますので犯罪行為はさせませんから」


俺がそういうと衛兵はため息を付き。


「どんなに庇っても犯罪に慣れてしまった人間は必ずまたやるぞ?」


衛兵は俺を諭すように話しかけてくるだが俺は首を振り否定した。


「確かに犯罪者の大半は性根まで腐ってしまっている者もいるでしょう。

 ですが子供のころの犯罪は生きるためか純粋な欲望が元だと思います。

 後は大人の強要が主です。なら更生することもできると思います。

 それにこの子は逃げることもできたはずですが素直について来た。

 ならまだ更生できると私は信じます」


俺が話し終わると衛兵は笑顔で頷き。


「そこまで言うならこの子の処遇はあんたに任せるよ」


そういう衛兵は下がってくれたので俺は頷き子供の手を取って詰め所を後にした。




ご感想で鏡が何なのか分からないという指摘がございました。

確かに何なのか説明が抜けてしまっていたと思いますので追加で書き込みました。

酒の名前は商品名に引っ掛かりそうだったので少し捻って書いているのでわかりずらかったと思いますので説明を。

ウィスキー飛車=角

ウィスキー黒ニッカ=ブラックニッカ

焼酎鏡=鏡月

となります。

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