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それは命の泉沸く  作者: 渡海
食料集積都市レットクラッカー
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交渉決裂

「いかがですか?」


俺はマルセルの様子を見ながら訪ねるとマルセルは目を反らし。


「確かに火酒より香りとコクがあり、それでいて飲みやすいな。だがワインほど深みのある味わいでは無いな」


マルセルは俺から目を反らしながら、言うので俺はため息を突いて「そうですか」と短く告げると出したウィスキーを仕舞おうとした。

 するとマルセルは慌てだし、俺に声を掛けて来る。


「ま、待ちたまへ、ワインには劣るがこの黄金の庭亭で出すのには十分な味わいだと思うから買ってやってもいいぞ?」


マルセルは高慢な態度を崩さず“買ってやる”と言って来た。

 それを聞いた俺は流石に我慢できなくなって出した物をポシェットにしまうと立ち上がり。


「申し訳ございません。私で用意した物が貴店に直ぐわない物だったようですので、お暇させていただきます。

 貴重な時間を取らせてしまい申し訳ございませんでした」


俺は丁寧に退席の言葉を述べると立ち上がった。

 さすがにね、ウィスキーを飲めば少しは意見を変えると思ったんだけどな~。

 ここまでワインに拘るなら流石に売れない、最初は釣れたら吹っ掛けてやろうかと思っていたんだけど。

 飲んでそれでも分からない人間に売るのは作り手に申し訳が立たない。

 これなら少し安くしてもあの宿であった行商人に売った方がましだ。


俺が立ち上がり応接室を出て行こうとするとマルセルは焦りながら呼び止めてくる。


「待てと言っているだろう!私の言う事が聞けないのか!?」


マルセルは慌てながら俺を追いかけてくる。

 だが俺はもう興味が失せていた。

 流石にワインも美味い物は本当に驚くほど美味いのは認めるけど、だからと言って他の酒を侮辱していいわけではない。

 酒はほっときゃ出来る訳じゃない、酒造が丹精込めて作った物だ。

 それが分からない、いや分かってても受け入れられない者に売るわけにはいかないよな。


俺が応接室の扉を少し開いた所でマルセルが開いている腕を掴んできた。


「解かった。その酒、家で買い取るから待ちたまへ!」


マルセルが焦りながら俺を呼び止めてきたので、俺は振り向き微笑む。


「いえ、貴店の品格に合わない物を態々買っていただくわけにはいきません。大変申し訳ございませんが出直してまいります」


俺の言葉に愕然としながらマルセルは一瞬呆けたが、顔を赤くして俺に怒鳴りつけてきた。

 

「一流店である“黄金の庭亭”で扱ってやると言っているのだ!行商風情が素直に売れば良いのだ!!」


おうぅ、本性が出てな。まあここに来てから横柄な態度だったから多分ダメだろうと思っていたが。

 こうなると、さすがに売る気は起きないよね、別に売らなかったからって俺以外の誰も困らないからな。

 これが会社のセールスマンとかだったら話は変って来るんだけど、別に商会を立ち上げたって訳じゃないし結婚もしてない。

 背負う肩書も養うべき相手もいないんだからここは強気で行かせてもらおう。


「いえ、今回はお売りするのは止しておきます。

 ワインに劣る物を売ったとあっては行商としての信頼にも響くと思われますので、それでは失礼します」


俺は深々と頭を下げ応接間を退室した。

 後ろから怒声が聞こえていたがあえて聞こえていないふりをした。

 

そのまま裏口から馬車置き場へ向かい、自分の荷車を引いて黄金の庭亭を後にしようとした俺の前に護衛が2人出口を塞ぐ形で立ちはだかった。

 

「抵抗するなよ酒を置いて行って貰う、衛兵に駆け込んでも無駄だ。

 衛兵には毎月金を掴ませてる、揉め事が有った時に有利になるようにな」


護衛はそう言うと剣を抜いて俺を脅してくる。

 だが俺はため息を一つして護衛に近付かれる前に護衛に話しかけた。


「衛兵はそちらの味方かもしれませんが騎士団はどうですか?隊長のルーデンス様はそう言ったことが御嫌いなのではないですか?

 それに揉め事を起こして店の評判を落としてよろしいのですか?」


俺はルーデンスの人となりから賄賂など貰ってないと考えた。

 もし賄賂などを貰うような人間ならもう少し部屋の装飾に気を遣うだろう。

 この考えはあながち間違って無いはずだ。

 間違っていれば、俺が酒を売った時もうちょっと渋ったり強請って来たり、何らかの駆け引きをしようとしてきただろうから。

 それが無い時点でルーデンスは実直な人柄何だろう。

 そんな人が駐屯している町で悪だくみはなかなか難しいはずだ。

 それでも衛兵は金を貰ってるってことは、目が届かない所も有るのだろう。


上の人間が高潔な性格でも組織は何処かに必ずそう言った部分が有るんだから、そこまで求めたら可哀想だな。

 俺の言葉は間違っていなかったらしく護衛は躊躇する素振りを見せた。

 

「もしこのまま通して貰えるのでしたら、私も何もしません。ですがもし襲うつもりでしたら全力で抵抗させていただきます」


護衛に声を掛け手の平を上に向け前に出しながら手の平の上に水球を作り出す。

 それを見た護衛は目を見開き「魔法使い!」と呟き後退る。

 

結局護衛達はそそくさと店の中に戻り手を出してくることは無かった。

読んでくださりありがとうございます。


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